岸に置いてある水に瞬く眺めをしげしげと

新橋ー横浜間に、この国で初めての鉄道が開通したとき、列車に指示や合図を送るために腕木の傾きで信号を伝達する「腕木信号機」が導入された。この信号機のもとを辿ると18-19世紀にフランスを中心として用いられていた「腕木通信」という電信以前の通信網に行きつく。巨大な腕木を回転により変形させ、その形を望遠鏡で確認することで情報を伝達させる仕組みは、この国の近代化の頃には廃れた技術となっており、導入されることはなかった。この「腕木」をもとにして、情報伝達にまつわる機器の模型(それは思い込みや連想や惰性を含む不純な装置だ)を試みる。

🅕 みなとみらい線みなとみらい駅改札外コンコース「みらいチューブ」
横浜市西区みなとみらい3

みなとみらい21地区

小林 椋

こばやし・むく

1992年生まれ。ある事柄や歴史的な出来事に対して、物理的な装置やオブジェを介入させることで生まれる飛躍、不和や違和感を観察しながら、別様な姿を思弁するための作品を制作する。近年の個展に「スゥと数えるように湿っぽい佇まいは、スゥと巻かれる音として砕ける前に、スゥと囲いまで敷きつめているようで」(ギャラリー16/京都/2023)、「亀はニェフスのイゥユのように前足を石にのばすと」(トーキョーアーツアンドスペース本郷/東京/2022)、「BankART Under35 2022」(BankART KAIKO/横浜/2022)など。