横濱ゲートタワー「スタートギャラリー」展示作品公募に多くのご関心をお寄せいただき、誠にありがとうございました。今回で3回目となる本公募に、国内外から66組のご応募をいただきました。審査員3名が応募者全員の資料を精査した上で、厳正に審査を行いました。
審査の結果、越智麗川(おち れいせん)さんに決定いたしました。
作家の詳細および各審査員による審査所感は以下の通りです。
引き続き、横濱ゲートタワー スタートギャラリーでの展示を楽しみにお待ちいただければと思います。
横濱ゲートタワー管理組合 + BankART1929
■ 選出作家について
越智麗川(おち れいせん)
横浜国立大学教育学部美術科書道専攻卒業以降、高等学校で書道の非常勤講師として約30年勤務しました。学校に勤める傍ら書道塾の講師を50年近く続けており、ご高齢の方を主体とし「書を楽しむ」をモットーに、現在7か所の教室で生涯教育に従事しています。また、作家活動として、これまで東京都美術館・国立新美術館を拠点とする書道団体に所属していましたが、本年3月にピリオドを打ち、抽象を主体とする展覧会への参加など現代的な作風への移行を計っています。これまでモナコやパリの海外展に出品し、昨年末には桜木町にて初めての個展を開催し盛況を得ました。今後は自分の表現をアピールする活動がしたいと模索中です。

■ 展覧会について
展示期間:2026年9月4日[金]~2027年1月31日[金]
展示場所:横濱ゲートタワー スタートギャラリー2+4(横浜市西区高島1-2-5)
主催:横濱ゲートタワー管理組合 + BankART1929
● 各審査員による審査所感
松下幸司(株式会社アバンアソシエイツ 計画本部部長)
横濱ゲートタワー「スタートギャラリー」での展示作品公募は今回で3回目を数え、アート界での認知度が上がってきたためか、回を重ねるごとに応募作品数が増えてきています。今回、応募してくださったアーティストの皆様、本展主催関係者に改めて御礼申し上げます。
私の作品評価基準をあえて言葉として整理すると、都市の風景として成立しているか、横浜らしさが表現できているか(土地柄のコンテキストを読んでいるか)、新規性・独自性があるか、公共空間における存在としてふさわしいか、ということだろうと思います。今回最優秀となった越智麗川氏の作品は「般若心経」を書いた書作品で、その力強く独特な書体によって、現代社会が抱える様々な問題と希望を表現しています。
当作品はこれまでギャラリーに展示してきたコンテンポラリーアートとは一線を画しており、私の作品評価基準を軽々と逸脱しているのではないかと思いました。私の評価基準の中に「都市の風景」という言葉がありますが、それはアートに対して都市を彩る点景として捉える意識が言下に見えがくれしています。しかし、当作品は「都市の風景」云々ではない、自分とアートとの対峙という緊張感のある両者の関係性を想起させ、点景としての存在を超越しています。
当作品が展示されるギャラリー「ART START」は都市の中のストリート、普段は人が通過する場に面しています。しかし、当作品がお目見えする今年9月以降、通りすがりの皆さんにはしばし作品の前に立ち止まっていただき、自らと対峙することによって、心の対話の時間を持っていただければ幸いです。
野老朝雄(美術家)
[ 書 ] が選ばれた。このような枠組みでは稀な事だと思う。
私自身、文字の作品制作にもがいている事もあり、素直にこの作品にみなぎる力に感動した。
[ 書く→読む ] と [ 描く→観る ] の意味をまた問われる。
他の多数の素晴らしい案と対峙する中、良い意味で番狂わせとも言える選考だったのかもしれない。まだまだ大番を狂わせる可能性がBankARTや横浜にあることに嬉しく思う。
トークイベントでお話しするのが楽しみです。ありがとうございました。
細淵太麻紀(BankART1929代表)
このスタートギャラリーは、みなとみらいの中でもまだ開発が完了していない地区へと続く「とちのき通り」に面したウィンドウギャラリーです。設置方法にも制限が多く、展示作業には技術と工夫が求められる、一筋縄ではいかない場所です。にもかかわらず、多くの方々にご注目いただき、たくさんの展示プランをお寄せいただいたことを、心から嬉しく思います。
ここで展示をすることは、都会の真ん中で孤高の叫びをあげるような行為とも言えます。そこに果敢に挑んでくださった皆さんのプランには実現させたいものが数多くあり、ひとつに絞ることは大変困難な作業でした。最終選考に残りながら惜しくも選外となったプランの多くは、この場所よりもさらに適した場所があるだろうという、作品そのものへの積極的な評価ゆえの選外でした。決して皆さんの作品の方向性が評価されなかったわけではないことを、ここにお伝えしておきたいと思います。
今回選出された越智麗川さんの作品には、「書」という確立されたカテゴリーを超えようとする意志と気迫を感じました。あるいは言葉の持つ修辞的な意味さえも超えた、現代社会へのメッセージとも読み取れるその作品が都市に対峙した時、整然としたビルの設えや硬質なガラスに映り込む周囲の景色に決して負けない凛とした姿が、多くの人々の心に触れ、見慣れた都市の見え方を変え、さまざまな既成の枠組みや構造を揺り動かす兆しとなってくれることを期待しています。
2026年6月10日