5月14日に行われたアーティストmeetsビジネスパーソン「みなとみらいクリエイティブツアー」の第1回目は、株式会社村田製作所に伺いました。
株式会社村田製作所は、みなとみらい21地区に研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」を2020年12月にオープン。このイノベーションセンターでは、基盤事業の通信・自動車市場に加え、エネルギー・ヘルスケア・IoTなど新規市場向け製品の基礎研究、企画、デザイン、設計力の強化や、技術交流など外部との連携強化を図り、オープンイノベーションを促進し、外部パートナーとの協業、産学連携を通じてイノベーションを創出する目的で立地されました。また、地域に開かれた施設として、子供向け科学体験施設「Mulabo!」を併設、「エンジニアの卵が生まれるきっかけの場」の役割も担っています。
今回のツアーでは、5階にある「Murata Interactive Communication Space」で、様々な素材を活用した素材技術の応用の最先端を見せていただきました。実験的モデルの説明と体験させていただいた後、この技術や素材を、何か作品に活用できないかなど対話を行いました。
技術・事業開発本部新規事業推進部の新田さん、素材の研究を進めている滋賀のマテリアル技術センターからも駆けつけて下った西田正弥課長、兵井さんが、設置されている実験モデルを説明しながら、体験を進めてくださいました。
熱を感知して光で変化を表現するシート、ねじる力を目に見える形(光や音)に変換させる装置、手のひらで温度、汗、心音など感知してストレスややる気度を計測する器具、コウモリのエコロケーションシステムから着想を得て、素材に音波を当てて発生する音で質や堅さを計測する装置、ゴムに鉄粉を混入させ磁気を通じてさせ、瞬時に堅さを変化させたり、微細な動きを生じさせる素材などなど…
アーテイストたちも、興味津々であれこれといじったり質問したり、大変賑やかに体験していました。思いもかけない動きや反応に、アーテイストの好奇心は刺激され、互いの会話も弾みました。
体験に名残を残しつつも、後半はツアーコンダクターのdesign MeME・小島さん進行の下、見せていただいた素材等の活用アイデアを、アーテイスト自身の作品や活動にどう活かせるか感想を話しました。
村田製作所に限らず企業として社会との関わり(ビジネスの成立)を念頭に、他企業とやりとりしているので、今回アーテイストの方との意見交換は初めてで期待しているとのこと。そして、対話が始まります。
・動く作品を創っているが、稼働音が気になる場面もあり、静音機器(マイクロブロア)は使えそう。
・熱を光に変換するフィルム(フィルムアクター)は作品に接触して光らせるのにいいかも。
具体的なアイデアが飛び出す中、こんな発言もありました。
・技術力の高さが素晴らしい。その技術をいかに活用して人に寄り添っていけるのか、今後はオーガニックな技術も求められてくる。
・素晴らしい技術で、何に使えるかも気になるが、どうしてそういう素材や技術を創ろうと思ったのか知りたい。
・発想を共有できると、ではこういうことができないかなどアーテイストサイドからもつながりやすくアプローチしやすくなる。
・その発想に至ったプロセス(出来たものだけでなく、こう思いついたのでこうしたらこうなりました、みたいなプロセス)が知りたい。
・役に立つことを念頭にするのでなく、その先に意識を向けたい。100年先に残るアート(または技術)はなに?みたいな。
それに応えて、村田製作所からは、現状を振り返るコメントが返されました。
・技術開発した素材や装置は、それが量産できるかどうかなど、どうしても経済的な発想に至ってしまい、出来ない判断されるとそれで終わってしまう傾向にある。
・研究者は最初好奇心から入るが、企業の中にいると、そこからどんどん遠ざかってしまっている。
・素材技術者として、役に立つものを創り出して社会貢献することのために素材をどのように活用していくのかを考えて研究しているが、枠をはめずにどうなるか判らないが「おもしろそう」「どうなるだろう」の好奇心を大事にしていくことを呼び起こしてもらった。
・企業は短期で成果を求められるのが必定なので、感想を伺って自分の堅い殻が少し割れてきたような心持ちがする。
実は、説明を受けた「Murata Interactive Communication Space」は、取引先やビジネスチャンスに結びつきそうな企業との商談の場として使う場所で、誰にでもオープンにしているわけでなく、単なる視察ではお断りをしているとのことです。アーテイストとの対話も初の試みで、緊張しながらも期待を込めて対応していただいている雰囲気の中、互いに刺激し合う大変貴重な時間と空間を共有できました。
『独自の製品を供給して文化の発展に貢献する』をミッションとする村田製作所。
その真摯で好奇心に溢れた姿勢が、次の世界を見出していくことに期待を込めて、アーティストmeetsビジネスパーソンがきっかけになるかもしれない、何か変わる兆しに関わるかもしれないと感じつつ、退出しました。
建物内での撮影は一切禁止です。外観を背景に集合写真を撮って解散しました。 村田製作所の皆さま、ありがとうございました!
株式会社村田製作所みなとみらいイノベーションセンター前で記念撮影
文章・写真 BankART1929スタッフ 大蔭直子