月: 2018年11月
F1963での展覧会(韓国釜山) 2018年11月17日〜12月23日
釜山文化財団が新しく関わることになった、現在の韓国でもっともビビットな「F1963」で開催されたグループ展に参加してきた。ここは2年前、釜山ビエンナーレの第二会場として使用されたワイヤー会社の工場跡。そのときは主にファサードだけが新しくつくられ、中は雨も降るし、巨大な機械があちこちに残っているし、まるで廃墟の中での展覧会のようで、非常にアナーキな空間だった。今回は見事にリノベーションされ、古い工場と新しくつくられた白い壁面や天井、鋼鉄製の工場ラインをそのまま残したカフェのカウンターなどがうまく反応し、見違える空間に変身を遂げていた。総面積は4,500㎡で、アート部門はおさえていて全体の1/3程度。ビールやまっこりの醸造所、バンケットルーム、図書館、ブックショップ、カジュアルなカフェ、中庭のイベント広場などのが、連続した空間の中に次々と現れ、生活空間の楽しみや豊かさを強調した会場になっている。また社員寮だった場所も、シンプルなホテルタイプの宿泊施設(80部屋)に改装され、心地よい空間を提供していた。
我々BankARTの展示空間は約350平米。丸山純子さんの花と髙橋啓祐さんの映像のコラボレーション。BankART Life Vの再現に近い作品だが、部屋の大きさも、コンディションも異なるので、あたらしいインスタレーションとして、自然で新鮮な感じでこの新しい「工場空間に」にヒットしていた。会期2018年11月17日〜12月23日。釜山の駅から車で30〜40分の場所に位置する会場だ。
展覧会詳細はこちら
http://www.f1963.org/en/?c=art&s=1&syear=2018&gp=1&gbn=viewok&ix=139
ヨコハマ創造界隈アーティストトーク 柳澤 潤(コンテンポラリーズ/建築家) 2018年11月17日
柳澤氏は、現在、関内駅北口の駅舎と広場の設計、横浜市立上菅田小学校の建て替えの設計受託候補者に選ばれ、まさしく公共建築を中心に横浜のまちづくりに関わっている。代表作を例にお話いただく中で、特に開かれた建築とは、公共についての考えについて聞くことができた。
今年5月オープンした『日野こもれび納骨堂』は、緑豊かな公園墓地と傾斜地に建つ住宅地のちょうど中間に位置している。異なる傾斜の屋根が集合してできた建築群のような建築は、新しいランドスケープを生み出している。各棟の壁を閉じず、屋根を点で支える軽快なプロポーション、広がりを持つ空間になっている。
伊東豊雄氏とTポイント・ジャパンによる東日本大震災被災地支援「みんなの遊び場プロジェクト」のひとつとして設計した『みんなの遊び場/南相馬/2016年5月』の外観は、サーカス小屋のような可愛らしいかたちをしたインドアの砂場の遊び場。小学校と幼稚園の間に位置することで、今でも子供や保護者の憩いの場になっている。
3.11を直面し、建築の屋根のあり方について深く考えるようになったそうだ。屋根が強いと壁の量を減らしても強度を保つことができるし、また屋根は公共空間としての一体感を生み出し、ランドマークとしての発信力を持つ。開かれた建築を考える上で重要であると強調。
「建築はある意味、秩序をつくるのだけれども、使う市民、運営する行政、設計する建築家、施工する人がイーブンで自由な発言と発想が許される。使う人地域によりそう。それが人々の活動の自由度を妨げないようにしたい。」と氏が述べるように、誰もがハード、ソフトについて考えることこそが公共建築にとって重要なことであるかもしれない。横浜の現市庁舎について、「市民にとって、村野藤吾が作ったとかは重要ではないかもしれないけど、ただ壊すだけでなく、どう使うかを一市民も考える風な街になってほしい。」と最後に言及された。
R16 ~国道16号線スタジオOPEN STUDIO 2018.11.16
「R16~国道16号線スタジオ」の初めてのオープンスタジオが、開催された。
高架下の各部屋のコンディションは、内というよりも「半分以上外」といった具合の空間だ。雨風、虫、車の騒音、根岸線の電車の通過する音、そんな悪条件の中でも皆さん、結構淡々と作業をオープンの当日迄続けてこられた。ここを使用することに手をあげた人たちなので、当然といえば当然だが、実際に台風等の大変さを一度経験すると萎縮してしまいそう空間だ。まあとにかく、みんなこの空間と戦った。なぜこんなところで、無理してこんなことするの?ここを見た人はそう思うかもしれない。
でもアーティストって、新しい空間が生成することをとびきり興味をもつ人たちなので、都市の中で忘れられ、眠っていた場所が、開き、共有されることに何よりも喜びを感じるのだ。
地域の人、行政マン、一般人、アーティスト、関係者など、レセプションには約250名、3日間で800人に近い人たちがこの場所を訪れてくれた。
これからどうなっていくかは????????
ヨコハマ創造都市を巡る リレーレクチャー 岡部友彦+河本一満 2018年11月9日
「日本三大ドヤ街」の一つと知られる寿町で活動するお二人を招いてのトーク。
コトラボ合同代表の岡部友彦氏は、利用者の高齢化により空室率の高まったドヤ(簡易宿泊所)を資源と捉え、バックパッカーなどのゲストハウス「ヨコハマホステルビレッジ」や大学と連携し学生達がキャンパス外活動を行える場など、環境づくり・運営を行なっている。生活保護受給者の増加や空き部屋の増加、高齢化といった現実に直面している寿の現状を福祉で立ち向かうのではなく、外部の人も入りやすいまちづくりをアクションすることで、地域住民達も感化され、若い人たちとの交流を楽しむ人も増えてきているとのこと。
横浜市文化観光局の職員でもある河本一満氏は、寿の現状をアートで打開できないかということで、2008年に寿オルタナティブ・ネットワークを有志で結成。アーティストが滞在して作品制作を行う「寿合宿」をはじめ、住民との交流を大切にしながら、アートプロジェクトを企画・運営している。作家達は、熱心に活動を続け、コミュニケーションが積み上がって行くことで、作家自身の意識も変わったケースが多く、滞在制作後も寿を訪れて活動してくれる作家が多いとのこと。
生活保護者たちは、通常の街では受け入れてもらうことが難しく、結果、寿に集まっているのであり、この現状は日本全体の問題であり、誰もが自身の問題として考えなければいけない。寿は、そういう人たちを受け入れる、また支える人たちが集まるあったかい街だということを知ってほしいと河本氏は強調した。