11月17日から11月23日の一週間、BankART KAIKOにて東京造形大学の写真研究所展が開催されている。三年生と四年生の二学年が合同で展覧会を行うのは、今回が初だという。今までよりも大きな規模となったこの展覧会に作品を出展したのは、二十二名の学生だ。
東京造形大学では、大学という場所を教育機関であると同時に研究機関でもあるということを重要視し、生徒それぞれが研究テーマを持っている。本展は三年生と四年生の合同授業「写真演習A(表現研究)」にて得た研究成果の評価展だ。授業では美術の中で独特の発展を遂げた「写真」というものを、他の分野の芸術にも踏み込みながら研究し、学んでいくという。
「写真」という大枠の中に、個々人が自身の中にもう一つのテーマを持ち、研究・制作が行われた本展では、全てが同じ「写真」という括りでも、どれもまるで別世界のように違う雰囲気を私たちに見せてくれる。この展示のために写真を撮影した人もいれば、過去に撮影した写真を用いている人もいるが、実験的な試みから、鑑賞者に関わってもらうことで完成する作品が多い。
鈴木那月「ここにあるということ 記憶を辿る」という作品は、天井から吊り下げられた天蓋を模した薄いベールに幼少の頃の作品が飾られている。靴を脱いで実際に中に入って見ることのできる作品。武重百華「vita」という作品もまた、「記憶」をテーマにしているが、対照的にこちらでは思い出せるものではなく、薄れゆく記憶が作品全体で表されている。記録として記されたものではなく、まるで我々の脳内にある、時間とともに劣化してしまう古い記憶のようなそんな作品だ。
本展覧会に際し、いくつかのイベントが行われた。シンポジウムや展示鑑賞ツアー、公開講評会など。現代、中高生の学びの場において美術教育が進んでいないことを問題視し、特にシンポジウム「中高生から見た美術」などは学生をターゲットにしているという。本展覧会を通じ、芸術と触れる機会を得て欲しいという思いが込められているとのことだ。