BankART出版紹介 vol.19 日本縦断-ミーティングキャラバン

誰かに本著を勧めるとしたら、私はこう言うだろう。

「もし日本全国に点在するオルタナティブスペースで何が起きているか知りたい方はこの本をどうぞ。」と。本著は三部構成になっている。第一部は武藤勇氏をはじめとするアーティストグループ「N-mark」のメンバーが行なった「ミーティングキャラバン」の記録集。そして、第二部はカフェライン、第三部はN-markのメンバーが名古屋でスペースを運営していた4年間の活動記録が掲載されている。

さて、「ミーティングキャラバン」について。これは、N-markがオープンミーティング(誰でもどこでもアートの話ができる仕組み)と称し、日本全国を縦断しながら各地でミーティングを開催した。第一部にはその旅で出会った”場所”、”人”、”こと”が記録されている。北は北海道から南は沖縄まで全国各地で開催されたミーティングだが、どの場所もアンダーグラウンドで活動し、小さい拠点ならではの密度の濃い会話が行われていると本からでも伝わってくる。

普段なかなか全国各地で活動するオルタナティブスペースの存在を網羅的に把握することは難しいが、本著ではそんなスペースで活動する人たちの本音を垣間見ることができるだろう。

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ミーティングキャラバン-日本縦断、アートミーティングの旅 (2005年10月発行)

A5判変形 160ページ
1,714円+税ご購入希望の方は、ホームページをご覧ください。
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BankART出版紹介 vol.18 「Bゼミ–新しい表現の歴史—」

「Bゼミは美術大学というものからは育たない現代の芸術家たちを育てる役割を持っていました。」(引用P83「多木浩二」)

Bゼミは、当時の大学教育のアンチテーゼとして、小林昭夫氏のもと1967年に横浜で始まった日本初の現代美術の学習システムである。2004年に幕を閉じるまで数多くのアーティストを輩出してきた。本著は、小林昭夫氏の息子・小林晴夫氏が編集し、当時の美術大学の枠にとらわれない実験的で先駆的な現代美術教育の現場の歴史を知ることができる貴重な一冊である。

著書は、Bゼミに縁のある作家のインタビュー、Bゼミ歴史、そしてコラムの三部構成だ。インタビューやコラムには、斎藤義重氏や高松二郎氏、多木浩二氏など日本の戦後美術を牽引してきた作家や評論家たち総勢50名以上が文章を寄せている。Bゼミ歴史の章では、小林昭夫氏の生い立ちからBゼミができた背景、展覧会や演習ゼミの様子などが掲載されている。例えば、原口典之氏はゼミ「コンクリートを使って共同制作」を開講したり、田中信太郎氏はゼミ「線状の材料を使って何かをつくる」などを開催していた。また、時には電車の中や、Bゼミの教室の屋根の上でもゼミが行われていたそうだ。当時の美術大学にはなかった現代アートを学べる実践的なゼミが行われていたことが記録から分かる。

芸術の道を志す者ならぜひ読んでもらいたい一冊である。

©キク

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Bゼミ -新しい表現の学習の歴史 (2005年10月発行)
B5判変形 256ページ
2,286円+税
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BankART出版紹介 vol.17 村田 真《絵画芸術》

美術ジャーナリストでありBankARTスクール校長の村田 真が30年来の絵画に挑戦する。美大生時代に一度は諦めた絵筆を再度取り直し芸術のオリジナリティーへ問いかける作品を紡ぎ出す。

本図録に収録されている《豆腐絵画》では日本の西洋絵画の第一人者である高橋由一の《豆腐》を彼なりに解釈した斬新な作品が載っている。本作は高橋氏の《豆腐》に描かれた事象を描きなおすに当たって豆腐の形状やキャンバスの質感に注目した。その結果豆腐1丁、焼き豆腐2丁、油揚げ2枚が一見オブジェのように並べられていながら絵画の必要条件であるキャンバスの上に描くという事柄は満たしているというなんともキテレツなものが誕生した。

高橋氏が当時《鮭》やら《豆腐》やら絵画のテーマにわざわざするひつようのないものを描いたのは、西洋の進んだ技術である油絵がいかに素晴らしく写実的であるかを、誰の家にもある身近な物で表現するためであった。村田氏の《豆腐絵画》は高橋氏が追及したリアリティーをより顕著にしたもの、ある意味高橋氏が成し遂げたかった最終形態を形にできたのではないかと思う。

このような「絵画」「美術」「芸術」の固定観念を見つめ直し、新たな価値基準を与えてくれる作品が収録されている。皆さんも本書を手に取って本当の絵画を探す旅に出てみてはいかがだろうか。

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村田 真《絵画芸術》(2011年8月発行 )
A5判 20ページ
¥300円
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BankART出版紹介 vol.16 渡辺 篤 『アイムヒア』

本書は2020年2月11日に刊行された現代美術家渡辺篤の作品記録集である。
氏はひきこもり当事者としてのベースを持ち、社会的弱者の声を当事者の側から掘り起こし、鑑賞者を自己批判的に逆照射する作風で知られる。

本書の構成は渡辺篤のプロジェクトの概要と成果を、章ごとに分けて構成している。また、章の途中には美術評論家福住廉による渡辺篤の作家性と作品性をソーシャリー・エンゲージド・アートの観点から論じている。
渡辺篤の作品には、多くの社会的弱者としてのバックグラウンドを持つ当事者たちが、プロセスに参加しているため、本書を読むときに、読者である自分もまた、誰かを攻撃していたり、攻撃されたりしている当事者性が惹起される。

この本そのものの表装がひび割れたデザインになっているのは、その作家性を代表する「ひび割れ」ではなく、読後感を暗にほのめかしているのかもしれない。

金継ぎによって、一度壊れていたものが再生する過程のように、現代社会に生ける私たちの荒んだ心を癒している。そう思いもした。
福住廉は本書で渡辺篤の作品についてこう書いている。
「テーマとメディウムが見事に調和している」と。

ひきこもりという社会的課題が、物体を持って我々に問いかけるような氏の作風は確かに、アート的であり、社会的でもある。

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「アイムヒア」渡辺 篤(2020年2月発行)
B5判 80ページ
¥1,000+税
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BankART出版紹介 vol.15 朝倉 摂『アバンギャルド少女』

本書は2010年にBankART Studio NYKで行われた朝倉摂氏の大規模な個展に際して出版されたもので、朝倉氏による絵本原画や挿絵、舞台のイメージ・コンセプトドローイングのほか、福原義春氏との対談の内容も収められている読みごたえのある一冊だ。

朝倉氏は本書が出版された当時、88歳を超えても現役で国内外を駆け巡り、舞台美術家として活躍してきた方だ。舞台美術家として関わるジャンルも現代劇、歌舞伎、商業演劇、オペラ、ミュージカル、バレエ、日本舞踊、コンサートと実に幅広く、また日本画出身というだけあって、本書に収められているドローイングや挿絵など平面上での表現力の高さにも驚かされる。

様々な舞台写真が収められている中で特に印象的だったのが、2007年の『動物園物語』の舞台装置である。柔らかい光が差し込む樹々の下でベンチに座り本を読む男性。目を凝らしてみると、木の幹には縦に線の入った梱包用のダンボール資材が、そして葉の部分には網状に切れ目の入った梱包用紙が用いられているようだ。ランダムに光が漏れる様、そして風にそよいでいるような軽やかな気配は、まるでふと公園に迷い込んだかのような自然な印象を受ける。

絵画という二次元の表現に飽き足らず、三次元、四次元の拡がりをもつ舞台芸術の世界へと羽を広げていった朝倉氏。ノンフィクション作家の吉岡忍氏による語りの中で、「変わっていく感じ方のなかで、いま作っている舞台をもう一度見直してみるっていうことはしょっちゅうあります。だから、一回作ったものを壊すことは、私にとっては当たり前なんですよ。」という朝倉氏の言葉には、生きる姿勢そのものが現れているようだ。

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朝倉 摂「アバンギャルド少女」(2010年9月発行)
A4変型判 224ページ
¥2,000円+税
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BankART出版紹介 vol.14『幸田千依 Chie KODA』

これまでに数多くの個展やプロジェクトを行ってきた、日本の画家、幸田千依。BankART UNDER35に際して、2013年に発行されたこのカタログには、幸田が2010年から2013年までに柏、別府、台北など様々な場所で作り上げた、どれも水・プール・人の群れをテーマにした作品が数多く掲載されている。

本カタログには幸田の作品掲載の他にも、複数見所がある。
まず一つ目に、カタログ前半部分の、幸田による製作の際を振り返ったテキストである。作品が生まれるまでの時間をどう過ごし、どのような過程で最終的にその形の作品が出来上がったのかが記載されているこのページは、作品を楽しむ上で必要不可欠な要素をふんだんに含んでいる。

二つ目は、芹沢高志と幸田千依による対談、『「見る」ことと「描く」こと』である。幸田の作品の大きなテーマである、水、プール、それから人間社会。幸田がどのようにしてそれらのテーマに出会い、絵に描くまでに至ったのかが事細かく言葉にされている。ただ一つの作品やその説明書きをみるだけではわからない、幸田の全ての作品に込められた想いが込められたこの対話は、幸田のこれまでの作品、そしてこれから生み出されるであろう作品を楽しむ上で、とても重要になるだろう。

幸田千依の作品に込められた想い、それから幸田らアーティストの手からどのようにして作品が生まれるのかに興味がある方には、ぜひ手に取ってほしい一冊である。

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幸田千依 Chie KODA(2013年3月発行)
A4判 20ページ
¥200円(税込)
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BankART出版紹介 vol.13『井原宏蕗 Koro IHARA』

BankART Under 35 2021 に際して同年4月に発行された井原宏蕗のカタログは、作品を創る者や常日頃から芸術作品に触れている人以外の人にも、ぜひ一度手に取って欲しい一冊である。

当カタログは、角川武蔵野ミュージアムキュレーター、高橋洋介による「人新世と崇高のスカトロジー:井原宏蕗にみる芸術的な排泄物の系譜」から始まる。日英両文で記載されているこの文章は、ぜひ、本を開き作品を見始める前に、一度目を通し、じっくりと読み考えて欲しい内容となっている。糞・尿を多く用い創られる井原の作品に関することだけでなく、現代の作品や、我々が生きる地球、かつてこの場で生活していた人々についてまで書き記されているこの二ページは、もとより我々の心の内にあった先入観を一度クリアな状態に戻してくれる。

さて、その次のページからは、一見は綺麗に見える糞尿の作品の細部までがありありと映されている写真が広がっている。それぞれには、作品と、井原という一人の芸術家自身を理解する上で最も重要となる、作品の生まれたわけ、生成時に込められた思い、それから作品の原材料などの詳細が記載されている。作品をより楽しむため、ぜひそれらをじっくりと読んだ上で思考を巡らせて欲しい。

一度全ての作品をじっくりと眺めた最後には、ぜひ最初の二ページに再度目を通して欲しい。初めに感じたのとは違う新しい、きっとこの先芸術作品と向き合っていく上で非常に重要となる思いが生まれるだろう。

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井原宏蕗 Koro IHARA(2021年4月発行)
A4判 20ページ
¥200円(税込)
ご購入希望の方は、ホームページをご覧ください。
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BankART出版紹介 vol.12 宮本隆司『首くくり栲象』

艶やかな漆黒の表紙に惹かれて思わず手に取った一冊。
そこには『首くくり栲象(たくぞう)』と鮮やかな赤い文字でタイトルが刻まれている。

本書は、20年以上にわたって自宅の庭である『庭劇場』で首を吊るパフォーマンスを行い、2018年に逝去した首くくり栲象を追った写真家 宮本隆司氏による写真集だ。冒頭の宮本氏の文章からはじまり、首くくりが行われる『庭劇場』へ誘われるように進んでいく写真、首をくくる栲象氏の写真のあとには、家屋で過ごす日常を捉えた写真も収められている。
そしてそれらの栲象氏の姿にはどれも、彫刻作品のように静寂の中に存在する生の美しさがある。

新鮮な驚きだったのは、首をくくるという同じ行為においても、栲象氏はその時ごとに違う表情を見せているということだ。
人間としては当たり前のことなのだろうが、栲象氏がどれだけ生身の精神で首くくりに向かっているのかが伝わってくる。

宮本氏によると、『首くくり栲象は自分の行為にまつわる神秘的な想いを嫌っていた。「毎日、庭で首をくくっています」とごく普通のことをやっているように言っていた』そうだ。また、宮本氏は家が近かったこともあり、約十年間栲象氏の姿を写真に収めてきたという。近い距離での関わりであったからか、写真集には首くくり以外の人間味のある栲象氏の姿も映し出されている。その中でも大量の書物の壁によりかかり、うたた寝をする栲象氏の写真があるのだが、なんともその『うたた寝の姿』の方が『首くくり』よりもまるで死に近いような様子である。そうして首くくりの写真に戻って見てみると、その姿はどれほど生きている姿なのだろうと思うのだった。

最後には演劇評論家である長井和博氏による克明に描かれた首くくりの文章と栲象氏の略歴も見ることができる。
この本を通して残された『首くくり栲象』という一人の人間の生きた痕跡を、私たちはどのように受け止められるだろうか。

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宮本隆司:首くくり栲象(2018年12月発行)
B5版 108ページ ハードカバー
¥2,200+税
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BankART出版紹介 vol.11 『田中信太郎 Shintaro TANAKA 1946-2014』

『時代をすーっと走り続けた田中信太郎の、大らかなそして繊細な地殻変動を感じとっていただければ幸いです。』

本誌はBankART NYKにて2014年に開催された「田中信太郎 岡崎乾次郎 中原浩大〜かたちの発語展」に伴い刊行された田中氏の個人カタログ。
冒頭の言葉の通り、本カタログでは1959年から2014年までの田中信太郎氏の作品の変遷を、残された膨大な写真とともに振り返ることができる。それだけでなく、田中信太郎氏と美術評論家・光田ゆり氏との対談も掲載されており、同作家の生い立ちや生き方、哲学など総合的に田中信太郎という人物に触れることが出来るだろう。

カタログには、なかなか見ることが出来ないネオダダ・オルガナイザー時代の若き日の写真や代表作《ハート・モービル》、1970年「人間と物質」展で出展した作品《無題》、ヴェネチア・ビエンナーレでの展覧会の様子、そして1985年、病を経験した後で制作された《風景は垂直にやってくる》など。他にも国内外問わず様々な場所で制作されたコミッションワークの数々がある。

物質をぎりぎりまで追い込んで削ぎ落とされたミニマルな表現形式の作品達は、たしかに同時代に活躍した「もの派」の作品を彷彿させるが、田中氏はそうカテゴライズされることを拒否する。そして、月日が経ちその後制作された作品《無題》や《風景は垂直にやってくる》などを辿ると、人生や時代の変化に合わせて作品を柔軟に変化させ、挑戦し続けている姿を感じ取ることが出来るだろう。しかし、そうした変化の中にも一貫した何かがあると思わずにはいられない。

田中氏は光田氏との対談の中で「終始一貫性」に関して以下のように言及している。
「..僕は一貫性というのは、その作家が若いときから死ぬまでの長い時間の中で、(省略)時代の変化もあるし、自分自身の変化もあって、いろんなことをトライすると思うのですね。そのトライした結果の匂いといいますか、(省略)、この人では無ければというものが、そこの部分が一貫性の一番重要なところで、表面的な変化ではないという言い逃れをしています。」

変化を自然なものとして迎え入れ、挑戦を積み重ね醸し出される唯一無二な”匂い”とは。私はそれを感じ取りにもう一度田中信太郎氏の作品を見たいと思った。

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田中信太郎 Shintaro TANAKA 1946-2014(2014年4月発行)
A4判 192ページ
¥2,000+税
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BankART出版紹介 vol.10 『いかに戦争は描かれたか』

本書は、2015年1月から3月にかけて行われたBankARTスクールの計8回の講座「戦争と美術」をまとめ、2017年にBankART1912によって出版されたものである。全222頁のうち大部分が講義を文字に起こしたもので、講座の記録資料としての役割を持つ。

全体としては、4人の講師がそれぞれの専門分野を通して、戦争と美術の関係性を見つめ直す内容となっている。
1人目の講師である東京国立近代美術館美術課長の大谷省吾氏は、“戦争画”の定義から講義を始める。戦争が直接的に描かれていない戦争画や、GHQが戦争画を“美術”か“プロパガンダ”か “戦利品”か、扱いに困っていた話などが紹介される。それらを起点に、戦争画の位置付けを、社会全体の動き、そして画家としての藤田の評価の変遷と比較しながら探っていく。

2人目の講師である大原美術館特別研究員、京都造形芸術大学教員の林洋子氏は、藤田嗣治研究のスペシャリストである。二つの世界大戦と日中戦争を経験した藤田は、各々の戦争に対して異なる態度を示す。彼の内面の変化とそれが彼の“戦争を描く作品”にどう影響したかが明らかにされる。

3人目の講師の河田明久氏は、千葉工業大学教授で戦争美術を専門とする。河田氏の授業は、日本で戦争が多かった明治期と昭和期に分かれる。前者では戦争を国民に伝えた浮世絵の役割、後者では日中戦争と太平洋戦争の描かれ方の違いにスポットを当て、戦時下で画家とその作品に要求される“役割”を探る。

4人目の講師の木下直之氏は、東京大学教授で、静岡県立美術館館長である。前編の講義では、戦争に関する“モニュメント”の変遷を時代に沿って辿る。言葉や人物を刻んだ彫像から、凱旋門、原爆ドームまで幅広く戦争の記念碑を扱う。後編では、戦争を伝える“スペクタクル”という観点で神田際の行列、大名行列から軍隊の行列、パノラマ館や映画へと講義が繋がっていく。

本書は、戦争画をその時代に照らし合わせて、当時の人々にとって戦争とは何だったかを浮き彫りにする。戦争とは何か、その中に存在する美術とは何かを再考させられる一冊である。

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いかに戦争は描かれたか(2017年4月発行)
A5判 224ページ
¥1,200+税
ご購入希望の方は、ホームページをご覧ください。
http://www.bankart1929.com/bank2020/book/index.html