「Bゼミは美術大学というものからは育たない現代の芸術家たちを育てる役割を持っていました。」(引用P83「多木浩二」)
Bゼミは、当時の大学教育のアンチテーゼとして、小林昭夫氏のもと1967年に横浜で始まった日本初の現代美術の学習システムである。2004年に幕を閉じるまで数多くのアーティストを輩出してきた。本著は、小林昭夫氏の息子・小林晴夫氏が編集し、当時の美術大学の枠にとらわれない実験的で先駆的な現代美術教育の現場の歴史を知ることができる貴重な一冊である。
著書は、Bゼミに縁のある作家のインタビュー、Bゼミ歴史、そしてコラムの三部構成だ。インタビューやコラムには、斎藤義重氏や高松二郎氏、多木浩二氏など日本の戦後美術を牽引してきた作家や評論家たち総勢50名以上が文章を寄せている。Bゼミ歴史の章では、小林昭夫氏の生い立ちからBゼミができた背景、展覧会や演習ゼミの様子などが掲載されている。例えば、原口典之氏はゼミ「コンクリートを使って共同制作」を開講したり、田中信太郎氏はゼミ「線状の材料を使って何かをつくる」などを開催していた。また、時には電車の中や、Bゼミの教室の屋根の上でもゼミが行われていたそうだ。当時の美術大学にはなかった現代アートを学べる実践的なゼミが行われていたことが記録から分かる。
芸術の道を志す者ならぜひ読んでもらいたい一冊である。
©キク
Bゼミ -新しい表現の学習の歴史 (2005年10月発行)
B5判変形 256ページ
2,286円+税
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