【アートラーニング・インタビュー #9】BankART Life7 参加アーティスト・中谷ミチコ by BankART実験広報部

こんにちは、BankART実験広報部のJUNGです!

今回はBankART Life7期間中、ぷかりさん橋を舞台に展示している作家さんにインタビューさせていただきました!

コロナ禍の中で石川県珠洲市の住民達と協力し合ってつくられた、中谷ミチコさんの作品「すくう、すくう、すくう」を、リアリティを自分の元に手繰り寄せようとした話などを一緒に紹介していきたいと思います!

Q. 簡単な自己紹介からお願いします。

中谷: こんにちは、中谷ミチコです。彫刻家として活動しています。

Q. 普段どのような作品をつくっていますか?

中谷: 彫刻をつくっています。立体作品なんですが、2次元と3次元の間を行き来するような彫刻がつくりたいと思って制作しています。

Q. 今回の作品のコンセプトは何ですか?

中谷:この展示は、2021年に石川県珠洲市で開催された奥能登国際芸術祭で発表した作品の再構成です。当時はコロナ禍の真っ只中で、どのうようにすればリアリティを自分の元に手繰り寄せることができるか、考えながら制作した作品です。今回は6点の彫刻作品から構成されていますが、元は20点の彫刻で成り立っていました。展示場所になった飯田町の住民の方に協力していただいて、手の写真を送っていただきました。地域間の移動の自粛を求められていた時期だったので、現地に行ってリサーチするよりも、その方が自然に感じられたのです。水をすくう手のポーズをしてもらって、それを写真に撮っていただき、三重県の自宅の方に送っていただいたデータを元に粘土で形を作り、石膏で型取りして、その雌型に透明樹脂を流し込んであります。見る人は透明樹脂の内側から手の表側を見る形になっています。なかなか説明するのが難しいのですが、遠方に確実にいる誰かの手っていうものを、粘土で形作ることで自分の元に手繰り寄せて、それを反転させて彫刻作品にしました。

Q. 「水をすくう」手の形にした特別な理由はありますか

中谷: このタイトルが「すくう、すくう、すくう」というひらがなの三つの「すくう」が並んだタイトルになっています。一つ目のすくうが、水を「掬う」から来ています。二つ目のすくうが、何かを助ける救済の意味での「救う」で、三つ目が鳥の巣に食べるの「巣食う」。­コロナ禍で自分が感じていた色んな意味が反転するような、一つの音であるのに意味が変化し続ける、反転の意味が込められているタイトルです。コロナ禍によく手を洗ったんですね。手を洗う時、一番最初の水を掬う仕草、多分古代からおこなわれていた普遍的な仕草を現地の人達にそれぞれにしてもらうと、手の組み方はそれぞれ全然違っている。その違いの隅々を全部読み取りたかったんです。丁寧に遠方の他者の気配に接することができるような、沢山の意味が含まれている仕草をつくりたかった。

Q. 今回の作品を通じて観客に伝えたいメッセージがありますか?

中谷: 彫刻の変わらない形の中に綴じ込められていて、見方によってそれがまったく反転してしまうとか、そういうものを読み取ってもらいたいです。それからここはすごくぼんやりできる場所なので、遠くの方に思いを馳せるような機会になったらいいなと思っています。また、2024年のお正月に奥能登の震災が起きました。過去の作品であるけど、震災を乗り越えてこの時期に展示することで何か、意味が生まれるのではないかと思っています。

Q. ­ぷかりさん橋にこの作品を展示しようとした理由がありますか?

中谷: ここでやってと言われたからという理由もありますけど(笑)ここって、海の上に浮いていて、常に揺れていますよね。意識を変えてみた時に、ふっとこの揺れが自分の身体の揺れか、この建物の揺れか分からなくなりました。そういうところがすごく面白いなと思っていました。彫刻をつくる上で強固な地面みたいなものが自分の中で大前提とされ過ぎていたんだなと驚くと同時に、そういう条件みたいなものを覆されて面白いような難しような感じがしています。

Q. 立ち入り禁止の線をビーズにした理由がありますか?

中谷: ここは基本的に無人で監視の人もいないし無料で入れます。安全性も加味してインスタレーションの中は立ち入りできない形で展示をすることになりました。そのため柵を設置しなくてはいけなくなったのですが、観客に対して拒否、拒絶ではない、できる限り和らげた形の境界線を作りたいと思って、子供と一緒にビーズを通したんです。立ち入りできない。だけど強く跳ね返さないような柔らかさ。後は、海と反響するような光になったらいいなと思ってビーズで制作しました。

Q. 作品をつくる時の自分なりのこだわりがありますか?

中谷: 丁寧につくること。物を丁寧につくれているのかを作品を完成させる最後まで自問自答し続けることがこだわりかもしれないですね。

Q. 作品の色味が薄い感じがしますが、その理由はありますか?

中谷: 彫刻のマテリアルの温度から人間の温度になるようにちょっとだけの朱色、オレンジがかかった赤みたいな色を着彩しています。

Q. 次の展覧会の情報や今後の計画があったら教えてください。

中谷: 今はちょっとまだふわっとしています。来年ぐらいにまた新しい作品を発表できるように頑張っています。

今回の作品は購入ができ、収益は能登半島地震義援金として珠洲市に寄付・返還する予定であるそうです。「すくう、すくう、すくう 2024」(「掬う、救う、巣食う」プロジェクトの詳細はこちらから確認できます!

https://www.michikonakatani.com/複製-drawings

テキスト・写真・動画:JUNG

【多様な地図で巡るツアー】ヨコハマポートサイドで街とパブリックアートを巡るツアー#1

アート&デザインの街「ヨコハマポーサイド地区」は、街びらきから30年を迎えました。横浜駅至近に都心型住宅をメインとして約6500人が居住するこの街は、地区のあちこちにパブリックアートが設置され行き交う人々の目を楽しませ、街を貫く栄本町線は上部がスカイウェイ(ペデストリアンデッキ)でつながれ、安全と利便性を考慮したつくりになっています。古くからある公園に加え、再開に伴って新しく水際や地区内に設けられた公園も個性あふれるユニークなものです。そして、地区内の建物の独特な外観は「アート&デザインの街」を印象づけています。

「ヨコハマポートサイド地区開発イメージ図」横浜市都市整備局WEBから転載

2023年秋、アートイベント(主催:ヨコハマポートサイド地区街づくり協議会、運営協力:BankART1929)『食とアートと人と街』では、地区内と周辺店舗へご協力いただき、「食」をテーマとする作品を展示しました。
今回のトリエンナーレの連動企画として『BankART Life7』展を実施するにあたり、ご相談したところご快諾いただき再展示に至りました。同じ作品を継続して展示していただいた店舗では、すっかり馴染んだ感もあります。展示作品を一新したお店では、新しい驚きを訪れる方に与えてくれています。
5月11日に行われた「ヨコハマポートサイドで街とパブリックアートを巡るツアー」では、ツアーコンダクターのBankART1929細淵代表、秋元副代表と共に、ポートサイドの街を探訪しながらアート作品を巡りました。

地区のほぼ中央にあるエットーレ・ソットサス「The Family」の前で集合。簡単に近寄れるところに作品が置かれていることに驚かれた方もおられたようでした。

ここは、商住混在の市街地や倉庫・工場街の開発から取り残された地区であったこと。みなとみらい21地区と結ばれる都市計画道路「栄本町線」が整備されるのを契機として、新しい街づくりが始まったことなど、秋元副代表が地区の成り立ちを参加者に説明し、ツアーが始まりました。

さて「ポートサイド」の意味は「港の横、脇」ですが、これは実は船に由来した言葉でもあります。船舶の世界では、船の左側を「ポートサイド(port side)」、右側を「スターボードサイド(starboard side)」と呼びます。みなとみらい21地区を出港する船に見立て、その左側にあることを準えて「ヨコハマポートサイド地区」と銘々したとか。
昨年40周年を迎えたみなとみらい地区は、商業・業務が中心の街として計画されており、ポートサイド地区は住宅中心の街として、補完関係も成り立ちます。それをイメージして名付けされたということかもしれません。

作品の説明は、細淵代表が行います。
休業日のため店舗内を見ることは叶いませんでしたが、最初の作品は、

牛島達治「旋回石」@1960Restaurant

レストランの有名メニューのハンバーグそっくりの「旋回石」が、各テーブルに置かれています。調味料と並んで置かれている作品に触れてみてください。ゆっくりと旋回させながら、店主の自慢の肉料理をお待ちください。

ギャラリーロードを歩きながら、帷子川に面する水際のポーサイド公園に向かいます。ポートサイド公園は設計コンペで選ばれたデザインにより整備された公園です(1等作品 オンサイト計画設計事務所 長谷川浩己)。波をイメージさせる盛り上がる造作や水の浄化を意図してヨシ原の再現を試みるなど、2001年グッドデザイン賞を受賞しました。

ポートサイド公園からは、川越しに貨物線路が見えます。頻繁な運行ではありませんが、もちろん現役です。コンテナやタンクなどが連なって物流を支えているふ頭に運ばれる姿に出逢えた方はラッキーです。

こちらも休業日のため、店内展示は見られませんでしたが、

白井美穂「フラワーチャイルド-コスミコミックス」 「Book of Silence」@横浜ディスプレイミュージアム

横浜ディプレイミュージアムは、ポートサイド地区が街びらきした当初から店舗を開いています。お店向けのディスプレイ用品だけでなく、一般の方向けにも販売していて、フラワーアレンジメント講座などが人気です。今回の作品は店舗からの要請もあり、その豊富な品揃いの中から作家が選び出し作品としたものです。
外側のエントランスウインドでは休日や時間外も観覧できます。こちらは5月22日までの期間限定での観覧です。

ポートサイド地区では、住宅棟の下層部分にお店を配置することが約束されています。それぞれの建物では、デザイナーや建築家が外観に趣向を凝らしており、特徴的な造りとなています。説明者に促されて参加者も、建物を仰ぎ見ながら見比べていました。

ヤング荘「スナックフェンス」@ヨコハマサクラビル

こちらでは、作品「スナックフェンス」やパブリックアートにちなんだガチャが置かれています。建物の中にあるので、判らなかったという参加者もおられました。早速トライ!

建物の前のパブリックアートはハチの巣に見えませんか?

このビルのオーナーは蜂蜜を製造しているとある会社です。アートを単に設置するのではなく、作品選定時に話し合わせて決めています。「アート&デザインの街」の意味が伝わってくるパブリックアートです。

前面のギャラリーロードに、形も様々な大きな石が並べられています。これらの石がどこから運ばれてきたのかと首を傾げる参加者に、みなとみらいのランドマークタワーの足元にあるドックヤードガーデンを造った時、大きさを少し小さくした影響で、ドックの石が余ってしまったこと、その石を角を落とすなど手を加えて車止めに転用した由来を説明しました。みなとみらいとポートサイドの記憶を繋ぐ作品です。

ヤング荘「スナックフェンス」@宝町踏切付近屋外

作品の置かれているこの辺りは、道路が拡張される予定地です。まだある建物もいずれ撤去される予定です。作品設置によって、この場所の長年の不法占拠のイメージを払しょくする仕掛けとして期待されていることが説明された後、作品を出入りして誰でもマスターになってみました。そして夜には「スナックフェンス」の看板が灯ります。

ポートサイド地区から中央卸売市場方面に向かいます。昨年のアートイベントと同様に、ポートサイド地区だけでなくその周辺地区でも作品展示を展開しています。市場に関係する卸売りを営む店舗や関係者の飲食提供を行ってきたお店などに協力いただきました。

貨物線の踏切を超えて進みます。

蔵真墨「Photogram Works in Tsutakin Store」@蔦金商店

創業は明治27年(1894年)、120年の歴史ある海苔問屋での作品は、前回からの継続です。「海苔」を使った作品は店主も大変気に入ってくれているのですが、あまりに馴染んで目立たないのが残念と苦笑。

作家が使い慣れた韓国海苔と異なり、隙間がなく感光の効果が出にくい日本海苔での制作は大変苦労されたそうです。美しく風になびく羽衣のような陰影を見せる作品をじっくり見ながら、海苔の香ばしい香りも堪能してください。

村田真「上の空」@ガトーよこはま

島袋道浩「宇宙人とは接触しないほうがいい」@ガトーよこはま

前回に引き続き参加された店舗ですが展示作品は一新されました。また、店内作品だけでなく、屋外にも展示をしてほしいと店主からのご要望をいただき、今回の作品が制作されました。お店の中と外で二つの作品を鑑賞できますので、ゆっくり楽しんでください。

ガトーよこはまを出て左手を向くと、道路の向かい側の建物の壁一面に、作品が見えてきました。

光岡幸一「あっちかも」@つま正

この作品は前回から継続して展示しているので、ご存知の方も多いようでした。SNSや「ナニコレ珍百景」にも登場しています。建物の前面道路は、10月に行われている横浜マラソンのコースでもあり、選手の背景にこの作品が映って話題になりました。
作家は高所作業車でテープを貼りながら作品を描いたとのこと。足元や手元の不安定さに苦心した様が伝わってきませんか?

最奥となる展示場所に向かいます。綿花橋を渡って神奈川台場のすぐ傍にあるパン屋さんが会場です。神奈川台場は、横浜港防衛のために造られた施設で、開港の翌年から一年で完成しています。実戦に使用されることはなく、約40年にわたり、外国船舶を迎える際の外交儀礼上の祝砲や礼砲を発射するのに利用された平和的な台場でした。埋め立てにより全貌を見ることは叶いませんが、ほぼそのままの形で地中に現存していることが判ったそうです。
横浜の歴史を垣間見る貴重な場所も併せて、訪ねてみてください。

谷本真理@Ainomi Bakery

香ばしい焼き立てのパンの香りが漂うお店の一角に、作品は置かれています。こじんまりとしたお店に流れるゆったりとした時間を感じながら、少人数での鑑賞をお薦めします。

市場通りに戻って来ました。次に訪れるのは、創業110年超の老舗さんです。市場関係のには明治期創業のお店が多く営業を営んでいます。こちらは包装資材や食器などを扱う卸店舗です。

片岡純也+岩竹理恵「器と事象」@オリマツ

お店が扱う品物が、店舗のあちこちで動きを見せています。廻る縞模様の紙コップに見入って目が回りそうになったと笑う方やなにか懐かしい感じがする作品だと印象を持った参加者もおられました。これらの作品も、前回からの再展示です。すっかりお店の雰囲気に馴染んでいるようです。

牛島達治「旋回石」@1960coffee

ツアー当日お店は閉まっていました。不定休なのです。作品はレストランと同様です。壁際のカウンター席に置かれている作品は、ちょっと見つけづらいかもしれません。こちらのお店は店主からの要望をいただき、再展示が決まりました。

ポートサイド地区に戻って来ました。
現在、下水道工事のため半分が工事仮囲いで囲われている神奈川公園に向かいます。

キム・ガウン@神奈川公園

神奈川公園は、昭和5(1930)年に関東大震災の復興事業のひとつとして整備されました。
下水道工事が約8年間と長期間になること、その間殺風景な仮囲いはやめて欲しいとの地元からの要望を受けて、壁画制作を予定しています。
長い歴史があり、桜の名所としても有名な地域の方に愛されている公園での壁画であることを踏まえて、親しみをもって見ていただけるような作品の制作準備を進めています。

ヤング荘「スナックフェンス」@ヨコハマポートサイドビル

こちらにも、作品「スナックフェンス」やパブリックアートにちなんだガチャが置かれています。ポートサイド地区のロゴが印刷されたエントランスの足ふきマットにもご注目下さい。このロゴは地区内のマンホールや側溝の蓋にも使われていますので、探してみてください。

ツアーの最終地点は、ポートサイド地区のセンターに位置する象徴的なアトリウムがある横浜クリエーションスクエアです。

高橋士郎「自由の気膜」@横浜クリエーションスクエア・アトリウム

下寺孝典(TAIYA)「Land boat」@横浜クリエーションスクエア・アトリウム

ワークステーション+武蔵野美術大学建築学科高橋スタジオ「エンダイ」@横浜クリエーションスクエア・アトリウム

昨年秋は、壁面の改修工事と重なり大規模な展示が出来ませんでした。今回は、アトリウム全体で作品展開しています。
「自由の気膜」は、作品の動きに併せて、かくれんぼをしたり追いかけっこをしてみたりと、子どもたちにも人気です。「Land boat」と「エンダイ」は、パブリックアートテーブの作品です。アトリウムは平日にカフェが開かれますので、アートテーブルでお茶をどうぞ。

ツアーでは訪れませんでしたが、ほかに設置されている作品をご紹介し、三々五々解散となりました。

蓮輪友子@GRIN HOUSE Daily dining

前回から引き続きの参加です。作家は同じですが、お店の改修で壁が広くなり、展示場所も移動しました。作品もさらに見応えがあります。

淺井裕介「野生の水脈-抜け道の道しるべ」@横浜ベイクォーター
横浜梅やCHICKEN EVERYDAY
Gooday Fresh Cafe
tables cook & LIVING HOUSE
niko and … (展示風景モニター設置のみ)

前回から継続して展示されている作品がご覧になれます。秋の展示からそのまま展示されているので、すっかりお店に馴染んだ様子です。

金曜日は、すべてのお店が営業していますので、ぜひまたポートサイド地区を訪れて、街とアートを楽しんでください。お店で飲食やお買い物をするとパスポートにスタンプを押してもらえます。スタンプを集めてBankARTのオリジナルグッブを入手してください。

※店舗の開店時間、休日など確認してお出かけ下さい。

 写真 BankART1929 メディエーター グリフィス・キオ                        文章・写真(横浜クリエーションスクエア・アトリウムのみ)BankART1929スタッフ 大蔭直子

【多様な地図で巡るツアー】アーティストmeetsビジネスパーソン「 みなとみらいクリエイティブツアー」 #1[村田製作所]

5月14日に行われたアーティストmeetsビジネスパーソン「みなとみらいクリエイティブツアー」の第1回目は、株式会社村田製作所に伺いました。

株式会社村田製作所は、みなとみらい21地区に研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」を2020年12月にオープン。このイノベーションセンターでは、基盤事業の通信・自動車市場に加え、エネルギー・ヘルスケア・IoTなど新規市場向け製品の基礎研究、企画、デザイン、設計力の強化や、技術交流など外部との連携強化を図り、オープンイノベーションを促進し、外部パートナーとの協業、産学連携を通じてイノベーションを創出する目的で立地されました。また、地域に開かれた施設として、子供向け科学体験施設「Mulabo!」を併設、「エンジニアの卵が生まれるきっかけの場」の役割も担っています。

今回のツアーでは、5階にある「Murata Interactive Communication Space」で、様々な素材を活用した素材技術の応用の最先端を見せていただきました。実験的モデルの説明と体験させていただいた後、この技術や素材を、何か作品に活用できないかなど対話を行いました。

技術・事業開発本部新規事業推進部の新田さん、素材の研究を進めている滋賀のマテリアル技術センターからも駆けつけて下った西田正弥課長、兵井さんが、設置されている実験モデルを説明しながら、体験を進めてくださいました。

熱を感知して光で変化を表現するシート、ねじる力を目に見える形(光や音)に変換させる装置、手のひらで温度、汗、心音など感知してストレスややる気度を計測する器具、コウモリのエコロケーションシステムから着想を得て、素材に音波を当てて発生する音で質や堅さを計測する装置、ゴムに鉄粉を混入させ磁気を通じてさせ、瞬時に堅さを変化させたり、微細な動きを生じさせる素材などなど…

アーテイストたちも、興味津々であれこれといじったり質問したり、大変賑やかに体験していました。思いもかけない動きや反応に、アーテイストの好奇心は刺激され、互いの会話も弾みました。

体験に名残を残しつつも、後半はツアーコンダクターのdesign MeME・小島さん進行の下、見せていただいた素材等の活用アイデアを、アーテイスト自身の作品や活動にどう活かせるか感想を話しました。

村田製作所に限らず企業として社会との関わり(ビジネスの成立)を念頭に、他企業とやりとりしているので、今回アーテイストの方との意見交換は初めてで期待しているとのこと。そして、対話が始まります。

・動く作品を創っているが、稼働音が気になる場面もあり、静音機器(マイクロブロア)は使えそう。
熱を光に変換するフィルム(フィルムアクター)は作品に接触して光らせるのにいいかも。

具体的なアイデアが飛び出す中、こんな発言もありました。

技術力の高さが素晴らしい。その技術をいかに活用して人に寄り添っていけるのか、今後はオーガニックな技術も求められてくる。
・素晴らしい技術で、何に使えるかも気になるが、どうしてそういう素材や技術を創ろうと思ったのか知りたい。
・発想を共有できると、ではこういうことができないかなどアーテイストサイドからもつながりやすくアプローチしやすくなる。
・その発想に至ったプロセス(出来たものだけでなく、こう思いついたのでこうしたらこうなりました、みたいなプロセス)が知りたい。
・役に立つことを念頭にするのでなく、その先に意識を向けたい。100年先に残るアート(または技術)はなに?みたいな。

それに応えて、村田製作所からは、現状を振り返るコメントが返されました。

技術開発した素材や装置は、それが量産できるかどうかなど、どうしても経済的な発想に至ってしまい、出来ない判断されるとそれで終わってしまう傾向にある。
・研究者は最初好奇心から入るが、企業の中にいると、そこからどんどん遠ざかってしまっている。
・素材技術者として、役に立つものを創り出して社会貢献することのために素材をどのように活用していくのかを考えて研究しているが、枠をはめずにどうなるか判らないが「おもしろそう」「どうなるだろう」の好奇心を大事にしていくことを呼び起こしてもらった。
・企業は短期で成果を求められるのが必定なので、感想を伺って自分の堅い殻が少し割れてきたような心持ちがする。

実は、説明を受けた「Murata Interactive Communication Space」は、取引先やビジネスチャンスに結びつきそうな企業との商談の場として使う場所で、誰にでもオープンにしているわけでなく、単なる視察ではお断りをしているとのことです。アーテイストとの対話も初の試みで、緊張しながらも期待を込めて対応していただいている雰囲気の中、互いに刺激し合う大変貴重な時間と空間を共有できました。

『独自の製品を供給して文化の発展に貢献する』をミッションとする村田製作所。
その真摯で好奇心に溢れた姿勢が、次の世界を見出していくことに期待を込めて、アーティストmeetsビジネスパーソンがきっかけになるかもしれない、何か変わる兆しに関わるかもしれないと感じつつ、退出しました。

建物内での撮影は一切禁止です。外観を背景に集合写真を撮って解散しました。 村田製作所の皆さま、ありがとうございました!

株式会社村田製作所みなとみらいイノベーションセンター前で記念撮影

文章・写真 BankART1929スタッフ 大蔭直子

【横浜クリエイティブCOOP】商品のご紹介-黄金町エリアマネジメントセンターアーティスト編

BankART実験広報部の今井です
この頃、蒸し暑い日が続くようになってきました😥
熱中症に気をつけつつ、梅雨入りする前にお出かけに行きたいものですね

さて、今回は黄金町エリアマネジメントセンターにゆかりのある作家・アーティストさんのグッズをご紹介していきます👏
まず最初にご紹介するのは 水辺荘 さん💧
横浜の「水辺」に着目したまちづくりをおこなっている水辺荘さんから、横浜の水辺の歴史が見えてくる水辺マップクリアファイルを販売!
また、水辺荘さんが運営する水上アクティビティ「SUP」はこれからの時期にぴったりです🏄

続いては RED Profile さんをご紹介
デザインから裁縫までをお一人でされているファッションレーベルさんです
今回販売しているネックレスとブレスレットは和紙糸のリボンを使っていて、金属アレルギーの方も安心して身につけられます☺️手編みのチョーカーもとても可愛いです!

次は Fuji Anna さんのグッズ紹介です
横浜を拠点に活動されている日系フランス人アーティストのAnnaさん
シルクスクリーン印刷が施された素敵なアップサイクルTシャツを販売中です👕

独特の世界観に心惹かれるシールたちは 金子未弥 さんのアイテム
インスタレーション作品のポストカードと、小惑星や不思議な文言が書かれたシールを販売中です
人々の記憶を元に「実在しない都市」を表現している金子さんの作品は、どれも皆さんの記憶を呼び起こすように語りかけてきます🚦

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: IMG_5065-768x1024.jpg

最後にご紹介するのは 秋山直子 さんです
横浜を拠点に写真を使った作品を制作しているほか、近年は視覚と味覚の関わり方に着目しているのだとか☕️
今回は黄金町で出会った猫ちゃんたちのポストカードと缶バッジのセットや、トートバッグなどをお取り扱いしています🐈

梅雨に入る前のこの時期に、アートと一緒にディープな横浜を散策すれば新たな発見があるかもしれません🔍
その際はぜひクリエイティブCOOPにもお越しくださいね!

テキスト・写真:今井
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創造都市20周年記念「横浜クリエイティブCOOP」
会期:2024年3月15日(金)~ 6月9日(日) 10:00~18:00
定休日:毎週木曜(4月4日、5月2日、6月6日を除く)
会場:BankART KAIKO ショップエリア
横浜市中区北仲通5-57-2 北仲ブリック&ホワイト 1階

https://bankart1929.com/…/artists/yokohama-creative-coop

【横浜クリエイティブCOOP】商品のご紹介-象の鼻テラスアーティスト編vol.2

BankART実験広報部の今井です

今回は前回に引き続き、 象の鼻テラス にゆかりのある作家・アーティストさんのアイテムをご紹介します!

最初のご紹介は、KOSUGE1-16 & KOSUGE1-16’s kids さん!
車田智志乃さんと土屋享さんのアーティストユニットと、そのお子さんたちがクリエイティブCOOPに出店してくださいました~😆
子供のためのお店「駄菓子屋たばZ」のオリジナルブローチにキーホルダー、昔懐かしいコマと、過去に行ったインスタレーション作品のDVDを販売しております

青いビニールシートが目を引くのは Aokid さんのグッズ
過去の展覧会や演劇フェスを記録した書籍と、同じく過去イベントで出品されたタオル、そしてパフォーマンスで使用したブルーシートを再利用したzineを販売中
ダンサーでありアーティストのAokidさんの熱量溢れるパフォーマンスはYouTubeでご覧いただけます~!📹

続いてのご紹介は 小泉アトリエ 小泉雅生 さん
象の鼻テラスや黄金町のスタジオなど、横浜内外で様々な建築に携わっていらっしゃる方です🏠
店頭にて小泉さんの著書を2種お取り扱いしております

次にご紹介するのは、アーティストユニットの 原倫太郎+原游 さん
インスタレーション作家の原倫太郎さんと、画家の原游さんの書籍やzineを販売中📚
昔話を自動”逆”翻訳しちゃった絵本「逃亡者おむすびころりん」は抱腹絶倒間違いなし!!大変オススメの一冊です

続いては たなかまさき さんです
色紙と絵の具を使って作品を構成し描いていくスタイルが特徴的なアーティストさん
クリエイティブCOOPにてパズルのようなアートブックと、ゲームソフトのケースに入ったzineを販売しています

フードデザイナーでアーティストの 中山晴奈 さん🍚
食をテーマにした企画や、食のデザインに取り組むアーティストさんです👀 時には自身の足で調査することも…
今回は中山さんの携わった書籍と、中山さんがプロデュースしたタイ産のコーヒー豆を店頭で販売しております

続いては WA!moto.STUDIO さんのアイテムをご紹介
WA!moto.さんこと、彫刻家の渡辺元佳さんのスタジオさんより、彫刻作品の端切れを使用したエコバッグやクッション、ストラップチャームや風呂敷といった小物類をお取り扱いしています
作品の一部を身につけてお出かけしてみませんか?

横浜を代表する写真家の 森日出夫 さん
森さんの写真集を5冊お取り扱いしています📷
美しい横浜の風景を集めた一冊、お出かけの思い出にいかがですか?

大きな忍者が店内で目を引くのは ししょーと弟子ギャル さん!
「ししょー」であるイラストレーターの高橋信雅さんと、「弟子ギャル」ことグラフィックデザイナーの大越あすかさんのアイテムです
忍者と建造物のグラフィティポスターをはじめ、キラキラのTシャツ、大小様々な忍者のシールやガチャガチャなど…ししょーと弟子ギャルワールド炸裂です

最後にご紹介するのは 大洲大作 さん
光と影から人々と、その営みをとらえるアーティストさんです🎞
陰影と風景のバランスがとても素敵なハガキサイズのフォトアクリルを店頭で販売しております

横浜トリエンナーレも残り2週間ちょっととなりましたが、閉幕まで引き続きイベントも多数開催されますのでお見逃しなく!
クリエイティブCOOPへの来場も心よりお待ちしております

テキスト・写真:今井
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創造都市20周年記念「横浜クリエイティブCOOP」
会期:2024年3月15日(金)~ 6月9日(日) 10:00~18:00
定休日:毎週木曜(4月4日、5月2日、6月6日を除く)
会場:BankART KAIKO ショップエリア
横浜市中区北仲通5-57-2 北仲ブリック&ホワイト 1階

https://bankart1929.com/…/artists/yokohama-creative-coop

【横浜クリエイティブCOOP】商品のご紹介-象の鼻テラスアーティスト編vol.1

BankART実験広報部の今井です

今回は、海のすぐそば🌊 で横浜らしい景色を眺めつつアートを楽しめる 象の鼻テラスにゆかりのあるアーティストさんをご紹介していきます👏

初めにご紹介するのは 荒牧悠 さん
物の仕組みや認知に注目した作品を制作しているアーティストさんです💡
クリエイティブCOOPではユニークなシールと、自由に貼るのが楽しくなっちゃうシールブックを販売中!大人も楽しめるシールブックになっています🙋

続いてのご紹介は 信耕ミミ さんです
現在、活動名が「ハテサテオ」さんになったそうで、コマ撮りアニメーションの制作以外にも活動していくとのこと✨
信耕さん改め、ハテサテオさんのグッズは、開くと飛び出す物語カードとカードが作れるキットのセット📝 計3種類お取り扱いしております!

次にご紹介するのは 曽谷朝絵 さん🌈
色鮮やかなのに柔らかく優しい油彩画を描かれるアーティストさんです
様々なポストカードと過去展示の冊子、A2サイズのポスターなど魅力的なグッズたちを販売していますが、イチオシは透明なアクリルキューブです🧊✨

続いては 山口典子 さんのグッズをご紹介😆
京都を拠点に活動されていて、幅広く様々な表現方法が特徴のアーティスさんです
今回は1点1点を手作業でペイントしたというカラフルな紙袋を販売🛍️ プレゼントの包装などにおひとついかがでしょうか?

「人や物事のかかわり」をテーマに、作品制作やイベント企画をおこなっている 𠮷田結美 さん👫
優しく素朴な絵本冊子やドローイングのほか、日本神話に登場する神様「スクナビコナ」モチーフのキャラクターの焼き物が皆さんをお待ちしています☺️

横浜グッズの制作・販売をおこなっている株式会社エクスポートさん🛟
「赤い靴」を模したチョコレートのほか、中川憲造さんデザインの「ブルーダル」のグッズであるチョコレートやサイダー、可愛らしいブルーダルの人形を販売中🐶 横浜土産にぜひ!

続いては、アーティストと料理人の両方の顔を持つ 内藤正雄 さんのグッズ
横浜市中区で飲食店などを運営しつつ料理のケータリングを、時にはアーティストとしてインスタレーションなどおこなっていらっしゃいます🧑‍🍳
今回は内藤さんの写真集zineを2点お取り扱いしていますよ📷 内藤さんの料理が食べたくなること間違いナシです

続いてご紹介するのは 井上尚子 さん
井上さんは「匂いと記憶」から表現のアプローチを試みるアーティスト👃 匂いに関係するワークショップを多数企画されています
今回は過去に開催された展示とワークショップがデザインされたオリジナルエコバッグを販売!作家さんが1つ1つミシン縫いしたものになります🪡

次のご紹介は orangcosong さん🧳
アーティストでダンサーの住吉山実里さんと、同じくアーティストや批評家などで活動されている藤原ちからさんの2人組のアーティストグループです
過去の活動や日記を記録した書籍と、実際に街中を冒険できる冊子、今すぐ旅に出たくなるカバン2種類を販売しております!今すぐ旅に出かけよう♫

最後に SLOW LABEL さんのグッズをご紹介
国内外で活躍するアーティストや企業、福祉施設をつなげることで、新たな「モノづくり」「コトづくり」を目指すNPO法人です
今回はタイポグラフィと点字が共存する封筒2種を販売✉️ マイノリティの壁を逆手に取った素敵なデザインのアイテムです✨

現在、象の鼻テラスでは5月10日より「7 SEEDS -COMMUNICATION UNDER TREES-」が開催中!横浜クリエイティブCOOPからも歩いていけますので、お散歩がてらこちらにもぜひ✨

次回も象の鼻テラスゆかりのアーティストさんをご紹介しますのでお楽しみに👀
皆さまの来場、心よりお待ちしております

テキスト・写真:今井
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創造都市20周年記念「横浜クリエイティブCOOP」
会期:2024年3月15日(金)~ 6月9日(日) 10:00~18:00
定休日:毎週木曜(4月4日、5月2日、6月6日を除く)
会場:BankART KAIKO ショップエリア
横浜市中区北仲通5-57-2 北仲ブリック&ホワイト 1階

https://bankart1929.com/…/artists/yokohama-creative-coop

【多様な地図で巡るツアー】クリエイターが集まる街、関内外を訪ねるツアー : 関内外OPEN!16幹事 小林璃代子さん、原﨑寛明さん(CHA)

「関内外」とはどこでしょうか?
1859年(安政6)年に横浜は開港し、諸外国との商取引などが始まりました。伊勢佐木町から馬車道に向かうあたりには関所が設けられ、この関所の内側、現在のJR関内駅の線路より海寄りを「関内」と呼称します。この「関内」と線路より外側の大岡川と中村川に囲まれた首都高速神奈川3号線の花ノ木あたりまでの場所(吉田新田)やその周辺を合わせて「関内外」(関内・関外地区)です。

「関内・関外地区位置図」横浜市都市整備局WEBから転載

このエリアには、街の記憶を物語る銀行建築など歴史的建造物が存在し、戦後復興の中で建てられた防火帯建築が現役で使われるなど、高層建築が林立するみなとみらいとは、様相が異なる街並みとなっています。そして、防火帯建築では、アーテイストやクリエイターがリノベーションしスタジオやオフィスを構えて、互いの持ち味を活かした協働作業に結び付く場が形成され、創造的な活動が繰り広げられているのです。なぜ、「関内外」にクリエイターが集まり、何を起きているのか。今回のツアーでは、関内外に集まったクリエイターの活動を知ってもらうため、2009年に始まった「関内外 OPEN!」を背景に、実際に何カ所かのオフィスやスタジオをお訪ねし、「クリエイターが集まる街」の魅力を体感しました。

集合は泰生ビルの一階。防火帯建築でクリエイターが集まるきっかけとなったビルです。関内外OPEN!16幹事小林璃代子さんのツアー趣旨を皮切りに、創造都市やBankART Life7について、BankART1929秋元副代表が説明し、次に芸術文化振興財団 アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)の小原光洋さんが「関内外OPEN!」について、経緯と現状をスライドで説明しました。

「関内外OPEN!」では、普段見ることが出来ない仕事場を見学できる「オープンスタジオ」や公共空間を活用した「道路のパークフェス」など、クリエイターと交流できる機会を創出してきました。

いつも会場となるこの場所も、あちらこちらに手が加えられたリノベーション物件です。

リノベーションを手掛けたオンデザイン岩穴口さんに案内されオフィスに伺いました。外から見えづらいクリエイターの様子を、通りを歩く人たちにも感じ取ってもらえるよう、まるでカフェのような雰囲気を醸し出す一階。空間に植物を繁茂させたり、意外な隙間から上下動が可能な場所があったりと、無機質で画一的なオフィスとは異なる有機的な匂いすら感じさせる設えの二階。

同じ二階のさくらWORKSはシェアスタジオです。運営者(横浜コミュニテイ・ラボ)の姜美宇さんから、開設から10年を経て、コロナ過での低迷期を切り抜けた様子、イス一つでもOKな入居方法など、単なる場所貸しだけでなく、人と人とのつながりから生まれるプロジェクトを発展させる場を創設するなど、ユニークな活動の様子を伺いました。整然とデスクが並ぶオフィスではなく、まるで迷路のような部屋の有様が、意外に落ち着ける空間となっているのです。そして屋上では、菜園の実験を続けている現場も見せていただき、活動の奥行を感じました。

この泰生ビルが面する通りは「さくら通り」ですが、通りに面する泰生ポーチや古民家・さくらHOUSEなど、この一角を中心として、多数のクリエイターによる多彩な活動が展開されています。そして、今年の「関内外OPEN!16」では、さくら通りがメイン会場になる予定とのこと。期待が膨らみます。

次に、同じく防火帯建築の常盤ビルへ移動し、オフィスを構える入居者の原崎寛明さん(CHA)岡部さん(voids)から、入居のきっかけやリノベーションについて伺いました。

元々の部屋は住宅仕様でした。CHA(3階201-202)では二戸一に壁を抜いて、オフィス内で行き来が出来る一体の空間を創り出しています。元は泰生ポーチにオフィスがあったのですが、手狭になったことから移転先を探してたところ、こちらは、一部屋では狭いものの、隣り合わせで構造的に壁を抜くことが出来る部屋を選んで借りられたこと、家主がリノベーションに理解を示してくれたことが、オフィスを構える動機付けでもあり大きな要因だったとのことです。

続いて、voids EDIT(3階205)とvoids DESIGN(3階210)の二つのオフィスにお邪魔しました。こちらのリノベはCHAが手掛けられたのですが、CHAのオフィスでは床から上がってくる冷気に難儀した経験を踏まえて、voids EDITでは床に断熱材を仕込んだり、水回りの工夫を施し天井にパイプを這わせて、緑を吊り下げられる仕掛けを造ったり、快適さを向上させていました。voids DESIGNでは、作業と打合せスペースを分けるため室内を区切る必要がある中、かっちり仕切る壁をあえて作らず、その代わりに金網状のカーテンを施し、それを開閉することで互いの視線は合わないが、閉塞感がない空間が創出されていました。このカーテンの素材はファッション界で活用されているもので、この後伺う予定のニブロールさんに相談して、カーテンとして作られたものだとのこと。

部屋を活用するサイドのニーズを丹念に聞き取り、思い切った手法と確かな技術で反映させたリノベーションは、入居者の満足度を高め、場所に対する思い入れを醸成することにつながります。リノベだからこそできたことのワクワクするような感覚が共有できるのではないでしょうか。

常盤ビルには、建築家やデザイナー、アーテイストが多く入居していています。実はこれは関内地区の特徴でもあります。このような環境の中で、リノベーションの際に相談し合あったり、雑談の機会を持つため、オフィスに自由に出入りできる雰囲気があるなど、通常の仕事だけでは生まれない多面的な関係性を、入居者同士で築き上げて来た様子が伺われました。

入居者自身が企画して屋上で交流会を開くこともあるそうですが、更に住民同士の行き来を深めるため設けられた、4階(311)住民共有スペースで休憩しながら話を聞きました。このスペースは、家主さんと交渉して、居住賃貸をせず、入居者の交流を目的とした入居者による作品展示会やトークショーなどを企画しているそうです。今年の「関内外OPEN!」では、外向けの展開も検討中とのことです。

参加者の皆さんは、泰生ビルや常盤ビルに訪れたのは初めてという方も多く、狭い廊下や階段の様子や、あまり見る機会のないクリエイターの仕事場やリノベーションの工夫に声を上げたりと、興味津々でした。

「関内外」には、建築系のオフィスが多い傾向にあること、すなわちリノベーションが仕掛けやすい環境だということ(大家さんの理解は当然ですが)。規模的にも顔が見える関係を創りやすい、「村」っぽいところが良い。など、実態を語る言葉に参加者も納得されている雰囲気でした。

常盤ビルから関内駅方面に向かいインキュベーション施設のYOXO BOXに辿り着きます。残念ながらYOXO BOXは土日はお休みです。目の前の旧横浜市役所再開発現場と併せて秋元副代表から説明。重ねて小原さんからも、起業家支援を行うYOXO BOXや、G Innovation Hub YOKOHAMA、AGORA KGU KANNAI、そしてさくらWORKS<関内>と、シェアオフィスが集積していて、オフィスや新しい繋がりを求める起業家・スタートアップ企業も数多く集まっていること。だからこそ、「関内外OPEN!」は起業家・企業がデザイナーやアーティストと出会い交流を生み出す場を設けるなど、『クリエイターが集まる関内外』という街の特性を活かした取り組みにつなげることができると説明がありました。

ここから横浜スタジアムを左手にして線路の向こう側の「関外」に向かいます。ツアーの最終地点は守谷ビルに入居するスタジオニブロールです。代表の矢内原充志さんから、スタジオを構えた経緯や現在の活動の様子など伺いました。

スタジオは、グラフィック・プロダクト・建築・ランドスケープ・インテリアなど幅広いクリエイターが創作活動をするコワーキングスペースとなっていることが特徴です。ファッションという領域を超え、矢内原さん自身、過日手掛けられたパブリックアートテーブルのように、街づくりにも関連する動きやブランデイングを手掛けていることなど話していただきました。

元々のスタジオは、現在の新港ふ頭客船ターミナルハンマーヘッドの場所に、2008年トリエンナーレ会場としてあった新港ピアを前身とする「ハンマーヘッドスタジオ 新・港区」(シェアスタジオ)からスタートして山下町を経て、この場所に移転したとのこと。

観光客や企業会社員に溢れた関内地区を目前として、スタジオが隣接するエリアは、横浜港の発展とともにあった日雇い労働者が多く生活を営んだ寿町です。この寿町を舞台として2017年に開催された「KOTOBUKI INSIDE project」の話を伺いました。これは、超高齢化や複雑な境遇にある住民たちと対話し好みや昔の話を聞きながらその多様性に着目し、それぞれの人にマッチした洋服を着てもらいポートレイト写真とした写真展です。スタジオ移転をきっかけに、この街にアプローチすることの必要性を感じたことが、この企画に取り組んだ動機だったそうです。「関内」から「関外」へ、様子を違えた場所に移転し、双方を見通す立ち位置を強く意識されているのが印象的でした。

2時間少々の行程で参加者からは、「自分が住んでいるまちでこんなに面白い場所があることは知らなかった」「クリエイターがまちや居住者同士で馴染んでいるのが興味深い、このような関係があるから新しいものが生み出されることに納得した」「オフィスを開放してくれるのはすごいこと」といった声が聞かれました。
コンダクターの小林さんやACYの小原さんからは、今年の関内外の予告もたっぷりしていただきました。都市に棲むクリエイターやアーテイストの活動に触れる絶好の機会である「関内外OPEN!」での再訪につながることを期待しています。

皆さん、11月3日「関内外OPEN! 16」で、またお会いしましょう!

関内外OPEN!16幹事小林璃代子さん撮影
関内外OPEN!16幹事小林璃代子さん撮影

文章・写真(撮影者記載以外) BankART1929スタッフ 大蔭直子

【多様な地図で巡るツアー】blanClass+神村恵「身ひとつで生きる」Live Art ツアー神村恵「裏と表を合わせてみる」♯2

2024年5月18日[土]

こんにちは、BankART実験広報部の室井です!
今日はblanClass+神村恵のツアー型のLive Art、神村恵さんの「裏と表を合わせてみる」に参加させていただきました!

今回、足裏と世界という関係性について考えながら裸足で街を歩くというワークショップということでツアー参加者の皆さんと一緒に横浜の街をぐるっと歩かせていただきました。ただ歩くだけではなく、皆さんで足の裏を使ってタイルの向きを感じてゆっくり動いてみたり、植物を触ってみたり、歩く向きを変えてみたりと足裏の感覚を使ったワークが行われました。また神村さんの方から参加者同士で気軽にコミュニケーションが取りやすいようなワークやアナウンスがあったので皆さんで和気藹々とした雰囲気でワークショップを進めることができました。

日常では感じることのない足裏の感覚、横浜の街にあるタイルやアスファルト、土、芝生、コンクリート、素材の違いや、冷たさ、暖かさ…など様々なテクスチャや感覚を足で感じることが出来ました!靴を履くということが当たり前の時代に生まれてきた私たちにとって、懐かしいようなもしくは新たな感情を芽生えさせてくれるワークショップだったと思います!
最後には神村さんやスタッフ、参加者の皆さんで集まって感想を話し合ったり、談笑する時間がありとても素敵な時間を過ごせたと思います。

「ワークショップが終わった後、普段の靴がとてもふわふわしていて不思議な感覚でした」
「みんな靴を履いているのに私たちはを靴を履いていないという非日常が新鮮で楽しかったです」
「周りの通行人の視線や反応がとても面白かったです」
「普段歩いていた道なのに裸足で歩いてみるとまた違った視点でとても面白かった」
など、皆さんそれぞれの感想を持っていただいたようでとても充実したツアーになったと思いま
す。今後もツアーは続きますので、皆さんのご参加ぜひお待ちしております🙇

室井

【横浜クリエイティブCOOP】商品のご紹介-黄金町スタジオアーティスト編

BankART実験広報部の今井です

大型連休も終わり、少し落ち着きを取り戻してきたこの頃、トリエンナーレ展示会場、ショップ、共に落ち着いて鑑賞できる絶好の機会🤩
何気ない日々を彩るのにぴったりなグッズの中でも、黄金町にスタジオを構え制作されている作家さんのアイテムをご紹介します!


今回最初にご紹介するのは usagi さん🐇
ゆるりと日々を生活するうさぎのグッズを多数お取り扱い中です
Tシャツ、トートバッグなどの布製品のほか、シールやアクリルキーホルダー、ポストカードも!どれも可愛くて迷っちゃいます🥰

続いてのご紹介は 宇田見飛天 さん
あたたかくも力強く描かれる幼い子供や猫に思わず心が惹かれます
店頭では宇田見さんの作品を手軽に楽しめるキャンバスアートとポストカード、猫型のファントムマスクを販売しておりますよ🐱

次にご紹介するのは 太田瑞穂 さん
太田さんは横浜市や黄金町などで子供向けのワークショップを手がけていらっしゃいます👦
柔らかな印象を受ける陶器のお皿と箸置きは日常使いもしやすくて大変オススメです✨


続いては、アーティスト2名のコラボグループ acatunderbubblewrap さん
プログラミングと手作業で作品を生み出す小林誠一さんと、布や刺繍などを用いて作品制作をおこなう美塩・持田・ジャックさんによるTシャツを販売中です🤝
様々なTシャツが並んでおりますが、どれもほぼ1点モノ!お好きな模様、色のTシャツを探してくださいね


次は編み物で作品を制作されている 近あづき さんをご紹介🧶
CMやテレビへの衣装協力のほか、黄金町であみもの教室を開いたりと様々な方面で活動されているアーティストさんです
今回はご自身のブランド「pipi-goldfish」さんからハンドニットのブローチやヘアクリップ、ヘアゴムを販売🎀 和紙のブローチは要チェックです!


続いては SUZUKIMI さんのご紹介です
動植物をモチーフにした絵画や、牛乳パックや食品の包装といった廃棄物で作品を制作されているSUZUKIMIさん🧃
クリエイティブCOOPではシルクスクリーン印刷のカエルのTシャツに、インスタレーション作品が印刷されたポストカードを販売中🌱 一緒に環境問題について考えてみませんか?


日常風景を描いた絵画が目を引く 橋村至星 さんのグッズ👀
よく観てみるとなんだか奇妙な風景に見えるような…日々の景色に紛れる違和感を描くアーティストさんです
たくさんのいちごが描かれたマグカップやスマホケース、Tシャツには他の食品が描かれたものもお取り扱いしています😆


色彩が素敵なアイテムは ビココンドウ さんのグッズです
独学で作品制作を始めたというビコさん、淡くカラフルな作品や青を基調とした作品を制作されています🌌
作品を気軽に身につけられるピアス、イヤリングのほか、小さなキャンバスのようなマグネットを絶賛販売中です✨


次にご紹介するのは Ariane Mercier-Beau(アリアネ・メルシエ・ボー) さん
ドイツ生まれのフランス人アーティストで、テキスタイルや油彩などを利用した作品を生み出す若手作家さん🎨
今回のクリエイティブCOOPには手刷りのポストカード3種と、イラストと文字が描かれたキュートなパンツをご用意しております👖💖


最後にご紹介するのは キウチアサミ さんのグッズ🩰
オランダでパフォーマンスとワークショップをおこなっていたグローバルなアーティストさんです
現在販売している木靴とビニール靴のストラップは、既に同じものを持っている方がヨーロッパに30人程いるそうです😳 片手に収まる不思議な体験をしてみませんか?


5月は心身ともに疲れやすくなる時期ですので、のんびり街歩きしながら美術鑑賞で息抜きもおすすめです💨
皆さまのお越しを心よりお待ちしております

テキスト・写真:今井
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創造都市20周年記念「横浜クリエイティブCOOP」
会期:2024年3月15日(金)~ 6月9日(日) 10:00~18:00
定休日:毎週木曜(4月4日、5月2日、6月6日を除く)
会場:BankART KAIKO ショップエリア
横浜市中区北仲通5-57-2 北仲ブリック&ホワイト 1階

https://bankart1929.com/…/artists/yokohama-creative-coop