ヨコハマ創造界隈アーティストトーク 櫻井 淳・悦子・心平  2018年10月27日

櫻井家は、関内に事務所を構え、ともに横浜の都市計画に大きく関わってきている。
櫻井淳氏は、本町シゴカイ(2006~)からだが、その前から、市街地基本計画の調査(2000〜2003)等を行ってきた。創造都市構想には北沢猛氏とその立ち上げから関わり、創造都市事業のコンペ応募案を作成したり、黄金町エリアマネジメントセンターの設立を支援するなど、関内地区の街づくりを多く手掛けてきている。
ちなみに、横浜南協会の牧師さんでもある。

夫人の悦子氏は、長きにわたる、東京でのまちづくりコンサルタントとして活動ののち、横浜にはいってからは、夫ともに地区計画や建築協定などのルールづくり、景観形成、福祉のまちづくり、防災、緑化など様々な分野で、地域の住民のニーズを踏まえたまちづくりに携わっている。

息子である心平氏は、2003年から櫻井計画工房に入社し、建築の特に数値に関わる仕事を担当しており、例えば、横浜市の居住率とバスや鉄道などの交通カバー率、高齢化率などをメッシュ統計で、数値データ化等を行なっている。

櫻井淳氏いわく。「コミュニティ、共同体に興味を持っている」と。
学生運動を経験したこともあり、まともな建築をやるのは嫌だと思い、修論も広場で人がどういった行動をするかなどを調査し、人がどのように街をつくるかについて、ハード作りより、ソフトに可能性をおいて研究したそうだ。
横浜は行政だけでなく民間も活発に活動し、たくさんのクリエイターの住む街になった。この財産と可能性をこれからも大事にしていくべきだとお話いただいた。

DSC_0005.JPG

トキワビルの交流会の様子(写真:福島健士).jpg
トキワビルの交流会の様子(写真:福島健士)

ヨコハマ創造都市を巡るリレーレクチャー 神部 浩 2018年10月26日

横浜トリエンナーレを長きにわたって推進してきた、文化観光局文化プログラム推進部長の神部浩氏に、トリエンナーレの歴史をスライドをみながら解説していただいた。国際展の歴史の浅い日本にとって、2001年に始まり計6回開催したヨコトリは、日本の中では先輩格とも思えるが、歩んだ軌跡は決して平坦ではなく試行錯誤の連続だったとのこと。

国際交流基金の旗ふりのもとスタートした国際展だが、横浜市は最初から狭い領域のアートプログラムにとどまるのではなく、横浜の街づくりを強く意識したプロジェクトにしたいと考えていた。1回目は竣工したばかりの横浜パシフィコの展示ホールと大改修を施した赤レンガ倉庫、2回目は山下埠頭3、4号上屋、3回目は新港ピア+日本郵船海岸通倉庫等。これらの場所は現在横浜の象徴的な場所として位置づけられており、大規模開発の最中でもある。会場の決定の段階で未来への予感(計画)をしたためていたことは確かだ。一方開発途上の場所を攻撃的に先行使用するということは、不安定要素も含まれ、その場所そのものが使えなくなるというようなアクシデントが何度もおこった。

継続についての困難さもあった。それは、動員数だけが一人歩きして、内容からのあるいは専門家からの評価が、土俵にのってこないことである。議会等から、「中止」の声がささやかれるなか、「街にひろがる」というキャッチフレーズを武器に、なんとか、市民を巻き込み、経済的にも自立し、動員をはかることで、市民権をえるプログラムに変換すべき継続した努力を続けている。

会場からの質疑応答で故北沢猛(元横浜市参与、アーバンデザイナー)氏の言葉、「ヨコトリは、創造都市のショーケース、都市の総合力が問われている」というキーワードが挙げられた。常に都市政策との関係で試行錯誤を繰り返し、チャレンジを続けていったヨコハマトリエンナーレは、今後も新しい街づくりの指標になるべく、継続されていくだろう。

DSC_0008.JPG

DSC_0005.JPG

ヨコトリ.jpg

ヨコトリ2.jpg

初年度の様子.jpg
第一回の様子

ヨコハマ創造界隈アーティストトーク 川口ひろ子 2018年10月6日

横浜アパートメント、藤棚アパートメントのオーナーの川口ひろ子氏は、横浜市元参与の北沢猛氏、元副市長の小松崎隆氏とともに創造都市を作った中心メンバーの一人、文化芸術都市創造事業本部の本部長川口良一氏の奥様である。川口氏は、出版社で主に女性関係の記事、書評を行うライターとして活動している頃は、現代アート、創造都市とは無縁であったが、あるとき夫から、クリエイターの活動する施設を作るから手伝ってくれと相談を受けたのがアートと関わるきっかけとのこと。夫がなくなった現在でも、1階が共有スペースで、2階には住戸数が4部屋の「横浜アパートメント」のオーナーとして展覧会を企画・開催し続きている。また2016年には、アパートの近隣に小規模な藤棚アパートメントを構築し、地域のコミュニティ形成に寄与している。一住民として自分の好きなことを行いながら、レベルの高い活動を継続されていることには頭が下がる。

DSC_0121.JPG

ヨコハマアパートメント.jpg

石塚.jpg

流しそうめん.jpg

藤棚.jpg
藤棚アパートメント

ヨコハマ創造都市を巡るリレーレクチャー 岡田 勉 2018年10月5日

東京青山の文化施設「スパイラル」シニアキュレーターの岡田氏のお話を、彼らが9年運営している「象の鼻テラス」で伺った。ご存知の通り、スパイラルは下着メーカーワコールが推進する文化事業の本拠地。この「象の鼻テラス」は開港150周年記念事業として、当時横浜市が企画推進し、運営者を公募したものだが、スパイラルが、継続して運営を続けている。東京で培ってきたノウハウとセンスを駆使しながら、横浜市という公的なチームとがっぷり四つになり、確実な成果をあげてきている。メイン建物はもちろんのこと、公園や河岸を活用しながら、パブリックスペースの新しい姿を提案構築してきている。スマートイルミネーション、パラリンピックなど、館外に滲みでた評価の高いプログラムも多い。

今日の話は、岡田氏の横浜時代(小中高)から大学時代、ワコールに入社するまでのモチベーションなど、プライベートな話にも触れながらの楽しい話だったが、もともと建築家志望だったのには、少し驚いた。でもよく仕事の内容をみてみると岡田氏の仕事の廻りには、優秀な建築家の固有名詞が散らばっている。スパイラル(槇文彦設計)、バルセロナ博(隈健吾コーディネート)、アーバンリング(クールハウス、北沢猛)、アルヴァーアルトー(フィンランド)などの建築系の勇士があたり前のように顔を連ねている。

会場からは、パブリックとプライベート問題や、頑張っているけど知られていないなど、必ずといっていいほどでる辛口の質問や意見がでたが、企業人であり、行政と長くやってこられているので、さすがにさらりと交わしながら、でも本音もちくりとお話されて対応されていたのが印象的だった。

3G5A7883.jpg
象の鼻テラス

Spiral_Building.jpg
青山スパイラル

3G5A7940.jpg

3G5A7962.jpg

3G5A7980.jpg