「Borderlands」Responding: International Performance Art Festival and Meeting

BankART KAIKOにて、12/2123までパフォーマンスイベントを開催。
今年で3年目となるレスポンディング国際パフォーマンスアート芸術祭というチームの企画だ。彼らは今年6月に長野県諏訪盆地という山の境界地帯(borderlands)を捉え直すリサーチとパフォーマンスを実施。諏訪は生糸生産が盛んだった地域。その関係で生糸専用倉庫復元施設の一室であるBankART KAIKOで、リサーチの成果発表を行い、発信するというのが今回の目的とのこと。モニターを背負い、ただ黙々と歩き続ける村田氏。歌を歌いながら会場を回る前田穣氏。ドローイングパフォーマンスをするたくみちゃん氏など。各々が空間内でパフォーマンスをしていくなか、ときおりそれぞれが向かい合い、パフォーマンスが連鎖していき、予想しない展開へと進んでいった。儀式のようなパフォーマンスを鑑賞者が唾を飲み、じっと見つめる様子、ときには笑いが溢れる様子などが見られた。

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参加作家:村田峰紀、前田穣、たくみちゃん、濱田明李、瀬藤朋(舞台芸術制作者)、渋革まろん(批評家)、牧田義也(歴史家)、武谷大介

Theater Company ARICA『ミメーシス』

ARICAの公演をBankART Stationにて1215日から19日まで開催した。

今回は、本年創立20周年と記念して、大野一雄の「ミメーシス=模倣」によって、世界を震撼させた川口隆夫氏をゲストに迎えた新作公演だ。ステージ上には、安藤氏と川口氏の二人だけが登場。安藤氏が真っ赤なロープを通じて、川口氏に指示を送る様は、「教えと学び」からやがて、「加害と被害」「命令と服従」といったものを連想させる。緊迫した1時間の公演だった。20周年記念であること、そして広報活動も奏して、客席は連日大入だった。

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『ミメーシス』

演出:藤田康城 
テクスト・コンセプト:倉石信乃
出演:川口隆夫 安藤朋子 
音楽:福岡ユタカ 
美術:高橋永二郎
舞台監督:菅原有紗(ステージワークURAK
照明:岩品武顕 (with Friends
音響:田中裕一(サウンドウエッジ)
衣装:安東陽子 
衣装製作:渡部直也
宣伝美術:須山悠里
協力:茂木夏子 前田圭蔵 山田規古
制作:福岡聡(カタリスト)

BankART出版紹介 vol.8 リターンから撤収までの記録『新・港区』

「新・港区」は、横浜・新港ピアに拠点を構え、2012年から2年間の期間限定で50組を超えるクリエイター達のシェアスタジオであった。本著では、そこに住んでいたクリエイター達による2年間の活動が記録されている。さらに、同プロジェクトを推進・応援してきた関係者の寄稿文やシンポジウム「クリエイターがまちに住むこと シェアスタジオの可能性」などが掲載されており、「新・港区」という一つのプロジェクト記録だけでなく、都市にアーティストやクリエイターを誘致することで社会に与える影響について重層的に学ぶことができる一冊である。

さて、本著の編入作業はユニークな方法である。具体的には、住民会議という自治から選出された編集委員と管理運営者側が協働して、可能な限り住民が参画する形で進められている。例えば、住居人の紹介は自己紹介だけでなく、他の住居人による他己紹介も掲載されている。そのためか、住民同士の関係性やシェアスタジオの空気感が本からでも伝わってくる。また掲載されている寄稿文からは、アーティストやクリエイターの可能性を信じ、前例のないことに挑戦しながら、都市の中で文化芸術を育んできた人々の同プロジェクトに対する想いがひしひしと伝わってくる。

地域を活性化するためアーティストやクリエイターを誘致する動きが盛んな昨今。その効果には賛否両論あるが、ぜひ本著を手に取って考えてほしい。

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新・港区(2014年3月発行)
B5判 224ページ
¥1,800+税
ご購入希望の方は、ホームページをご覧ください。
http://www.bankart1929.com/bank2020/book/index.html

BankART出版紹介 vol.7 小さな未来都市『新・港村』

『新・港村はあらゆる国と種類のクリエイターが働く蜃気楼のような小さな未来都市です。』

「新・港村」の挨拶はここから始まる。

横浜トリエンナーレ2011の特別プログラムとして、8月6日から11月6日の期間限定で、横浜・新港ピアにて突如として出来上がった小さな未来都市「新・港村」。そこに住む住人(村民)は国内外の約150のアートイニシアティブチーム達。はたしてその村で何が起きていたのか。本著はその記録を辿る記録集である。

ページをめくると、4400平方mの巨大な建物の中で、住人であるアーティスト、クリエイター、NPO、オルタナティブスペース関係者等による展覧会やパフォーマンス、制作活動、レクチャーなどの記録や、新・港村Cafe LIVEや大野一雄フェスティバル、展覧会「横浜プレビュウ」などの様子が写真やテキストからうかがえる。さらに、「新・港村」の空間や意義に関して、BankART代表池田修氏とみかんぐみ・曽我部昌史氏による対談や池田氏による寄稿文などが掲載されており、ミクロな視点だけでなくマクロな視点からも同プロジェクトを考察することができる。

あらゆる国と種類のクリエイター達が横浜に集まった全80日間。本からでも伝わってくるクリエイター達による熱気をぜひ感じていただきたい。

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新・港村 小さな未来都市(2012年5月発行)
B5判 272ページ
2,400円+税
ご購入希望の方は、ホームページをご覧ください。
http://www.bankart1929.com/bank2020/book/index.html

BankART出版紹介 vol.6 『美食同源』

横浜・馬車道にあったBankART19292棟を始め、関内外広域で展開された「食と現代美術」の記録集。「食と現代美術 part1」(2005年)と、続編にあたる「食と現代美術 part2」(2006年)の内容を紹介。合間には読み応えあるコラムもあり、全160頁にわたる充実したフルコースのような図録である。

地図を眺めて店名を確認すると、聞き覚えのある名前が多いが現存しているのはどれ位だろうか。「横濱芸術のれん街」と称した周辺の飲食店を舞台にした企画では、食をテーマに制作された作品が、1作家1店舗の組み合わせで展示された。食器として供されるもの、什器に擬態したもの、作家本人がふん装して出迎えるパフォーマンス。設置というよりも潜入という感覚が近い。

「横浜 食の展開」の章では、横浜の郷土酒とも言えるビールや、横浜での都市農業について、歴史や展開が解説されている。また老舗店や新参店のオーナー達へのインタビューも収録されている。開店当初のエピソードや店名の由来など、歴史を感じる逸話もあり興味深い。

15年も前の出版であるにも関わらず、まるでこれから開催されるイベントを心待ちにするかのように、記された作品それぞれへの興味が尽きることはない。本書を片手に想像力をかきたてながら、かつての横浜に想いを馳せ、新鮮な視点で街を歩くこともできるのではないだろうか。

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『美食同源』[現在、在庫なし]

監修:井上明彦、編集:BankART1929

A5判 160ページ
2006年2月発行

いちはらアート×ミックス鑑賞ツアー

千葉の市原市で開催されている、「いちはらアートミックス」の鑑賞ツアーを開催。船頭は、アートフロントギャラリーの原蜜さんと奥野恵さん。乗船者はバンカートの新旧スタッフ10名プラス1名だ。事前にきちんとしたツアー計画とタイムスケジュールがセットされていたので、朝9時〜夕刻4時まで(食事時間込)の短時間で新旧のゾーンの主な場所を鑑賞することができた。

個々の作品にも触れるべきかもしれないが、今回は全体の印象だけにとどめたいと思う。

線路沿いのプログラムと聞いていたが、実際には1/時間の電車でツアーするのは難しいらしい。我々は車2台に分乗して現地を駆け巡った。それにしても、今回も北川フラムさんらしく、広いエリアの不思議な場所を巡らせるプログラムだ。これまでの妻有や瀬戸内とどこが違うかというと、いいにくい言葉になるが、前者二カ所は、過疎は進んでいるが、建物や自然はやさしく、こちらを迎えてくれる雰囲気が残っており、尖っていたり、痛々しくは感じない。ところが、今回巡った場所は、「廃墟」そのものの場所が多く、昭和の時代にせっかちにつくられてきた日本の郊外都市の、せっかちな崩壊を露骨に感じてしまう空間なのだ。作家の大半が、その状況をとらえ、「バナキュラー」な印象から出発し、そこにあるものを引用し、作品化しているものが多いし、それはそれで、きれいなもの、豊かなものもあるが、ときによっては見る人に「いたたまれない哀しさ」を与えてしまう行為のようにも思えるのだ。「どう感じたらいいのか」わからない感覚に陥ってしまう。もっと自分勝手に、この滅び行く空間から自立して、間違っていてもいいから好きなように、新しいメッセ—ジを送ってくれたら、なんてことを思ってしまうのだ。

展覧会として意図した部分は十分伝わってくるし、いくつかの力強い作品にも出会えたし、全体としては楽しく巡る事はできたが、そこから先、我々はどこに向かい、共働してけばいいのか?北川フラムさんは、何をみせたかったのだろうか?この問いかけには短い時間では、答えはでないようなツアーであった。

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右の男性:原蜜氏、中央緑の服の女性:奥野恵氏

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高橋啓祐「いつもの時間」

2022年12月29日 @北仲ブリック&ホワイト歴史広場(BankART KAIKO外)
BankART KAIKOがある帝蚕倉庫の復元施設、北仲ブリック&ホワイトの歴史広場に、高橋啓祐氏の映像作品を挿入した。横浜市が推進するイルミネーションのイベント時期に併せての開催。昨年のドライエリアでの展示に続き、今年は壁面に映像を投影。3つのゼンマイ仕掛けの時計を羊や象などの動物たちが忙しなく動くことで、時を刻むアニメーションを投影。長針が12時に重なると、文字盤が開き、パフォーマーの映像などが展開する。年末で、寒く慌ただしい時期であったが、早足で歩く通行人も、この映像の前では足を止め、写真を撮ったり、子供たちもぴょんぴょん跳ねたりしながら映像を楽しんでいる様子が見られた。道ゆく人の気持ちを落ち着かせてくれるような作品だ。

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高橋啓祐「いつもの時間」
2020年12月8日から2022年1月30日まで 17:00~24:00
北仲ブリック&ホワイト歴史広場(BankART KAIKO外)

BankARTschool ヨコハマみなとみらい物語Ⅲ 神奈川大学

みなとみらい物語は、急ピッチで開発が進んでいる「みなとみらい新高島地区」を中心に、その歴史や開発の仕組みなどを考えるゼミである。今回は、みなとみらいに新しく校舎を設立した神奈川大学の事務局の3名からお話があった。

1人目の講師である田島和久氏は神奈川大学の沿革について、2人目の講師である高嶺徹氏は、キャンパスの整備計画について、3人目の講師である田中純平氏は、大学の地域社会との連携について、それぞれ講義を行なった。

講義終了後は、受講者も興味を持った方がたくさんいたようで、質問も数多くあった。実際、市民に開放された本棚や食堂、学内外の起業志望者や中高生を対象としたプロジェクト、隣接した資生堂など民間企業との共同事業など、従来のイメージの“学校”とは異なる、オープンで地域と関わり合う大学を目指していることがよく伝わってきた。一般市民は校舎内に立ち入ることすらできない大学なども多くある中で、地域の市民と交流するだけでなく、実際にプロジェクトを協力して行っているのは非常に進歩的であると言える。

一方で、やや形式的な発表だったことも否めない。大学が推しているはずの建築学科の教諭ではなくゼネコンに新校舎の設計を依頼した理由など、深掘りして聞きたいトピックは講義になかった。神奈川大学が今後、みなとみらいの車輪の一つの中心になっていくためにも、さらなる斬新なアイディアと学生を伸ばす学校づくりに期待したい。

左から、田島和久氏、高嶺徹氏、田中純平氏

BankART出版紹介 vol.5 『100人先生~横浜の東アジア』100人の市民先生による100の講座

学校の黒板と思わしき背景。何やらおじさんが学ランを着て両手を広げている姿。そして、100人先生というタイトル。表紙からコミカルな雰囲気がただよっているその本を手に取ってみると、それは総勢100人の市民たちが先生となり開講された様々な講義の記録集となっていた。

本著「100人先生〜横浜の東アジア」は、作家の開発好明氏が企画したものであり(表紙のおじさんが開発好明氏)、BankART LifeⅥ「東アジアの夢」のプログラムの一つとして開催。201581日から113日の95日間 BankART NYKにて、タイトルにある通り100人の市民が先生となり100の講座が開催された。期間中は、市民先生が日頃あたためていた「実は得意なもの」や「みんなが知らないこと」を中心に授業が行われた。

100人の市民先生による講義をすこし覗いてみることにしよう。開発好明氏による「応援先生」を皮切りに、「空気よめない先生」「古代火起こし先生」「美術とエロ先生」「震災避難者先生」「ふんどし先生」..ユニークなタイトルに好奇心をそそられるが、それに負けじ劣らず個性的な先生たち。彼ら・彼女ら自身がそれをこよなく愛していることが本からでも伝わってくる。どれも魅力的な講座だが、個人的には「段ボール先生」「セルフビルド先生」「不法占拠先生」あたりを受講したい。ホームレスにでもなるつもりなのかと思われそうだが(笑)

最後に、開発氏は「100人先生の魅力は、『誰もが先生、誰もが生徒になれる』」と述べる。人と比べて自分は劣っていると感じる競争社会の中で、短所ばかりに目を向けるのではなく、自分の好きなものや自分にしかできないことに目を向けよと、思考の転換を促しているように感じる。さて、私は何の先生になれるだろうか。

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開発好明『100人先生 -横浜の東アジア』(2015年7月発行)
A5判 96ページ
880円(税込)
購入希望の方はホームページをご覧ください。

YPAM2021 – 横浜国際舞台芸術ミーティング

2021年12月1日〜19日
@BankART KAIKO & BankART Station

「YPAM」と聞くと、「?」となる人もいるかもしれない。これまで「TPAM – 国際舞台芸術ミーティング in 横浜」と称していたイベントが、「YPAM – 横浜国際舞台芸術ミーティング」と名称を変え、この度新たに開幕したのだ。YPAMとは、国内外の舞台関係者が、公演プログラムやミーティングを通じて交流するプラットフォーム。BankARTでは、舞台芸術のプロフェッショナルによるトークを中心とした交流プログラム「YPAMエクスチェンジ」と、公募プログラムである「YPAMフリンジ」を開催している。

「YPAMエクスチェンジ」は、12月1日(水)〜 16日(木)の期間のうち11日間、1日3コマ程度行われた。(詳細はYPAM2021プログラムを参照)コロナの影響で海外のクリエイターの来日が難しくなったが、オンラインでタイ、韓国、中国、台湾、カナダ、アメリカ、オランダ、オーストラリア…など世界各国から舞台関係者が登壇した。聴衆も同様に海外から多くの参加があったようだ。物理的距離があっても世界中が参加する本プログラムは、コロナ時代の新たな国際イベントの姿といえるだろう。

「YPAMフリンジ」は、BankART KAIKOで『空間と戯れる音たち』(
恩田晃他)というライブパフォーマンスやその他、連日、一流のパフォーマーが、音、肉体、空間、時間を駆使して、表現の極限に肉薄する内容の発表が続いている。また、BankART StationではベテランのARICAの『ミメーシス』の連続公演が続く。

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以下、
YPAMフリンジ企画『空間と戯れる音たち』
撮影:前澤秀登

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