美術ジャーナリストでありBankARTスクール校長の村田 真が30年来の絵画に挑戦する。美大生時代に一度は諦めた絵筆を再度取り直し芸術のオリジナリティーへ問いかける作品を紡ぎ出す。
本図録に収録されている《豆腐絵画》では日本の西洋絵画の第一人者である高橋由一の《豆腐》を彼なりに解釈した斬新な作品が載っている。本作は高橋氏の《豆腐》に描かれた事象を描きなおすに当たって豆腐の形状やキャンバスの質感に注目した。その結果豆腐1丁、焼き豆腐2丁、油揚げ2枚が一見オブジェのように並べられていながら絵画の必要条件であるキャンバスの上に描くという事柄は満たしているというなんともキテレツなものが誕生した。
高橋氏が当時《鮭》やら《豆腐》やら絵画のテーマにわざわざするひつようのないものを描いたのは、西洋の進んだ技術である油絵がいかに素晴らしく写実的であるかを、誰の家にもある身近な物で表現するためであった。村田氏の《豆腐絵画》は高橋氏が追及したリアリティーをより顕著にしたもの、ある意味高橋氏が成し遂げたかった最終形態を形にできたのではないかと思う。
このような「絵画」「美術」「芸術」の固定観念を見つめ直し、新たな価値基準を与えてくれる作品が収録されている。皆さんも本書を手に取って本当の絵画を探す旅に出てみてはいかがだろうか。
村田 真《絵画芸術》(2011年8月発行 )
A5判 20ページ
¥300円
ご購入希望の方は、ホームページをご覧ください。
http://www.bankart1929.com/bank2020/book/index.html