【アートラーニング・インタビュー #12】BankART Life7 参加アーティスト・葭村太一 by BankART実験広報部

こんにちは実験広報部の傳田です。

「北緯35度27分43秒 東経139度37分38秒」の作者である葭村太一さんにインタビューさせていただきました。
今回展示されているのは、都市に描かれた落書き(グラフィティ)を木で彫った作品のシリーズです。GoogleMapのストリートビューで実際落書きのあった場所を見ることができ、時間と場所を行き来するような感覚になります。
永続的に残ることはないグラフィティに対する葭村さんの考えや、制作過程についてお聞きしました。

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_______木を使おうと思った理由はありますか?

葭村:僕は大学時代は建築寄りのデザインの勉強をしてたんです。それでそのままデザイン会社に就職していくんですよ。だから美術作家になろうという気持ちはその時は無くて。で、大学の時何してたんやろって考えた時に、、、デザインの課題もするんですけど、よく木工室で木で何かつくったりしてたんですよ。だからデザインの授業も受けながら、自主制作みたいな感じで木を触ってたっていうのがあって。その木を触ってた理由も特にまあ、扱いやすい材料やからとか、多分最初はそれぐらいの理由でしかなかったです。
それで、自分が美術を始めるっていう手前で彫刻っていうものを見たときに、すごいこう、なんかグッときたものがあって。そこも、深い理由はないんですけど、、、、
昔ちょっと木を触ってたっていうのがあったから、木の彫刻だったら自分でもできるな、という安易な発想から使い始めたマテリアルがたまたま木やったって感じですかね。
一応、木以外の素材も色々扱ったんですけど、また木に戻ってきたみたいな。結局この材料に落ち着きました。今は木というマテリアルが作品の重要な役割になっています。

_______タイトルの「北緯35度27分43秒 東経139度37分38秒」はどこかの場所を表しているのでしょうか。

葭村:タイトルの場所はいつも展覧会の行われる場所の座標の緯度と経度にしてます。だから今回のタイトルはこのBankART Stationのある場所なんですよ。
僕はいろんな国の壁の落書きとかをモチーフに引用してて、、、、”その場所に描かれていた”という、一種の建物とか場所の記憶みたいなものを彫刻化していくみたいな。
世界各地からGoogleMapのストリートビューを通してモチーフを探して、見つけたモチーフを木彫にして、展覧会場に集合させる、みたいなことなので、このシリーズでやる時のタイトルはいつも展覧会場の場所にしています。

_______グラフィティは犯罪ですが、この世から無くなってしまったら寂しいですか?私は見るのが好きなのでちょっと寂しいかもしれないです。

葭村:僕はちっちゃい頃は学校の机とかにちょっと落書き描くとか、まあそういうのはしてましたけど、街に書いたりはしてないんですよ。犯罪行為なんで。やりたいかやりたくないかでいうと、特にやりたい気持ちもなくて。

_______え~!そうなんですね。

葭村:グラフィティのカルチャーが好きかって言われたら全然詳しくないんですよ。まあ、こういう作品をつくり始めてから色々調べたりすることも増えたから、最低限の知識はあるんですけど、かと言って別に街に描いて自分のタグを残したいとか、そういうのは一切なくて。
だからよく、「あ、グラフィティ好きなんですね。」って言われるんですけど、作品を制作するための興味というか研究材料みたいな感じです。
たまたまこの作品シリーズのモチーフがグラフィティなだけで、グラフィティの在り方と か、人がなぜ街にそういうキャラクターや文字を残していくのか、みたいなことは興味があります。そのグラフィティを描いている側は、消えることは想定内でやってると思うんですよ。
言ったら、残したいんやったらキャンバスに描くし、スケッチブックに描くし。でも彼らは、建物とか公共の場所にそういうのを残していくっていう、、、
落書きが描かれた場所や建物も、永久に残るわけじゃないじゃないですか。
だから自分が書いた場所が壊されることもあるし、それで別に彼らは怒ったりしないし。
だけど僕はそういう一種の行為がたまたま残されたとか、一定期間しか見られへんかったものとか、そういうののちょっとエモい部分みたいなものを感じてて。永久的に残されないものだし、ああもうちょっとしたら消えちゃうんかな、とか。なんかそれを彫刻で保存していくっていう感覚に近いのかもしれないです。

_______QRコードを読んだらGoogleMapでその場所を見ることができますが、いくつか落書きが見つからないものがありました。もう消されてしまったりして無いということなのでしょうか?

葭村:QRコード読み込んだら、位置情報だけでるやつもあるんですよ。僕はいつもGoogleMapのストリートビューを使うんですけど、横浜のやつも作ろうと思って、横浜市内をストリートビューで見たんです。
そしたら何個か見つかって、実際に行ける距離なので見に行ったんですよ。いつもだったら見に行かないんですけど。
そのときにあの横断禁止の看板は自分の足で見つけたんです。だからあのモチーフは、Googleのカメラがとらえてないものなので、位置情報だけが表示されます。
これとかも(上書きされたモチーフ)、歩いて見つけた物なんですよ。おそらく、最近描かれた物で、Googleのカメラがまだ、撮影に入っていなくて、もしかしたら何ヶ月か後に撮影してアップされるかもしれないですし、Googleのカメラが来るまでに消されるかもしれないです。位置情報が出るので、今現地に行けばもしかしたらまだあるかもしれないです。
今回のためにつくった横浜の新作の一部は、自分で行けるな、と思って動いたんですけど、いつもはGoogleMapで見つけて、自分が行くことなくつくっています。

_______この彫刻が乗っている箱はなんでしょうか? マークがあって運送用の箱みたいですね。

葭村:そうですそうです。これは輸送するための梱包箱なんですよね。だからこれに入れて、運送屋さんが運ぶ、みたいな。

_______え!実際にこれで運んでいるのですね。

葭村:そうです。これが実際に輸送するものなので、海外に、輸出する時もこれに入れて送ったりするっていう。梱包箱、クレートっていうんですけど、、、、
なんか僕がやってるのって、Googleマップのデジタル上でモチーフを探して、それを遠隔でつくって、それをこの中に入れて運んだりするんですよね。で、この箱に印字されたQRコードを読むと、iPhoneとかの端末がモチーフの場所に飛ばしてくれてストリートビューの画像が見れるっていう。
言ったら、デジタル上での移動とフィジカル上での移動っていうのをこの一個の箱と彫刻で表現できないかなと思って。
だから、僕は動かずに遠隔でつくって、それを発送して、「この上において展示してください」って指示だけすれば、作品が移動して勝手に展示されるっていうことができるので、展示台とセットの作品というかんじなんです。そんな感覚でやっています。

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葭村さん、ありがとうございました!!
グラフィティのあった場所と今展示されている場所、それを自分が見ているということについて考えさせられます。
Life7の後は7月のART OSAKA Expanded Section、8月の神戸六甲ミーツ・アートで展示するそうなのでそちらも要チェックです!

葭村太一さんのホームページはこちら