【アートラーニング・インタビュー #4】BankART Life7 参加アーティスト・吉田山 by BankART実験広報部

こんにちは、BankART実験広報部のJUNGです!

今回はLife7出展作家の吉田山さんにインタビューさせていただきました。

都市にも遺伝子があるとしたらどのように抽出できるのかを問いとして、新しい地図を考える吉田山さんと、その考えによって作られた作品について紹介していきたいと思います!

Q.簡単な自己紹介お願いします。

吉田: こんにちは、東京を拠点にキュレーションやアートプロジェクト、アート作品の発表などしています。吉田山という名前で活動しています。

Q.今回の作品はどのように作っていますか?

吉田:いろんなことをしていますが、会期中には等身大ぐらいのB0サイズぐらいの木版画地図を手刷りでプリントしていたり、そのための什器展示や蒸留ツアーもしています。

Q.今回の作品のコンセプトはなんですか?

吉田:  BankARTさんから話が来た時に、展示のテーマがUrbanNestingということだったり、新しい地図という話を聞いて、その二つを軸に作品のコンセプトを考えて作りました。

日常でも都市に住んでまして、都市に対しては、さまざまなものが流動的であたかも生物のように日々変形していき、景色が変わっていくのが面白いと思っていました。そこで、都市にも哺乳類のようにシンプルなDNA構造体があるのかもしれないという、SF的な空想をコンセプトの中心としました。今回は横浜ですけど、様々な都市に対しての話をしたいなと思いました。遺伝子のようにすごく基本的な構造を何かビジュアルで表現できたら面白いなって思って、今回の作品を考えてきました。

Q.色々な都市を行き来していますか?

吉田: そうですね、去年もニューヨークやイスタンブールに行って、それぞれの独特な風土、風景、立ち上がってきた歴史や建築物があったりして、どこも異なっていて面白いなと思いました。横浜もそれにおとらずな歴史もいっぱいあって、山を削り埋め立てられた今はもうない横長の浜が横浜の名前の由来だったり。今回の地図は地形にフォーカスしたものになっていて、手に持って動き回る地図ではなくてどこにも行けない地図という、ただ単に眺めるための地図ですね。元々地図っていうものが侵略だったり、戦争のために細かく作り込まれて、それを我々はGoogleマップだったりで、日々ありがたく無料で使わせてもらっているということを考えた時に、個人的なアート作品として地図を扱う場合はそういう機能性は一切取り外していこうと思って、都市内の目的地を的確に巡るっていうことではなくて、概念や想像で都市を巡るようなものを考えてみました。

Q.特に印象に残っている都市はありますか?

吉田: このプロジェクト自体は今回初めてですけど、よく仕事で熱海に行くんですけど、海と山がすごく小さい街にコンパクトにまとまってるのが面白いなと思っています。まあ、イスタンブールもそんな感じだったんですけど、やはりそういう起伏のあるところに惹かれますね。海と都市が連続してる場所で、さらにその奥に山が立ち上がってきたらかなり面白いなと思ってます。ま、横浜もそういう場所ですね。

Q.韓国に行ったことはありますか?

吉田: 韓国は釜山に行ったことがあります。道路がそのまま海から見えて、車で飛び込んでいけるような風景があったり、10年前ぐらいなのでちゃんと覚えてないんですけど、日本からすごい近いのにまた違う、東京よりは大阪側の雰囲気に似ているかなと思い出しました。

Q.作品にあるアクリル板はどういう意味ですか?

吉田: この作品地図は横浜のバンカートステーション中心の5km半径の地図で、それに対応する山側の、等高線、みなとみらいなどの地形をアクリル板で表わしています。

Q.今回の作品を通じて観客に伝えたいメッセージはありますか?

吉田: 今回のプロジェクトは色んな人と連携しています。この什器は木雨家具製作所さんに作ってもらって、地図の部分編集で西山萌さんに関わってもらってます。その他にも色々細かいところを色んな方に関わってもらったのですけど、最終的に木版画で刷るっていうのが、単純に見せるだけのパフォーマンスではなくて、作品のタイトルにも入っていますけど、流通させようと思って、今本屋さんとかいろんなところに卸し始めて、置いてもらってます。

色んな人に買ってもらって、家に持ち帰ってもらうようにしています。

プリント数を100部としていて、この今回抽出した都市を100分の1に切り分けて色んな人の家に流通するっていうのが面白いと思っていますね。

後、ISBNという国際基準の図書コードを付けてもいます、国立国会図書館にも納本してきたので、この地図作品自体が国にアーカイブされている状態になっています。都市を抽出して制作した作品を再度都市のインフラやシステムを使いつつ流通していくという、結構ダイナミックな関係を作っていて限界美術のようなものでもあると思っていますし、この作品自体が都市に根付く雑草の根っこみたいで、いずれでかい木に成ればいいなと思いながら自分自身は木版画でこれらを刷っています。

Q.木版での手刷りをずっと取り扱っていくつもりですか?

吉田: そうですね、すごい大変で結構つらいですけど、やはりつらいっていうのが重要だなと思っていますね。自分の体で一日プリントして疲労して次第に何も考えられなくなる、このような労働感覚が結構大事だと思っています。この方法は効率は異常に悪いし、この資本主義のシステム的には正直やらなくてもいい行為ですけど、でもこの労働とアイディアを作り出す資本家が折り合わさっている作品制作のプロセスは、僕の中での喜びとして今回大切にしたいと思ったことであるから、引き受けるべき大変さだなって思っています。手作業や身体的な労働や現場感は大切にしていきたいので、このようなことは続けていくと思います。

Q.次の展覧会の情報や今後の計画があったら教えてください。

吉田: ちょうど来月に神津島っていう東京の離れた島で、アートのツアー企画を作っているので、ぜひ来てもらいたいなと思っています。後は、色々常に活動している状態になっています。

テキスト・写真 ・動画:JUNG