【アートラーニング・インタビュー #8】BankART Life7 参加アーティスト・婦木加奈子 by BankART実験広報部

こんにちは!BankART実験広報部の福谷です。

今回はLife7出展作家さんの婦木加奈子さんにインタビューです!🎤

婦木さんの「洗濯物の彫刻」という作品は洗濯物もハンガーもグレー1色。設営時も一番会場に足を運んで作品を作られていた婦木さんの魅力を伝えていきます!👇

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Q.今回の作品について教えてもらえますか?

婦木:これは柔らかいものを外側からテグスでギュッて引っ張って形にしているっていう作品で、展示されている空間の中で柱とか壁とか天井の構造と物理的に繋ぎ合わせて形を保てる彫刻みたいなのを作れないかなと思って作りました。洗濯物をモチーフにしてるんですけど、洗濯物って街を歩いててどこでも目に入るというか、そこで暮らしてる人がいたらそこに立ち現れてる風景という感じがして、日々生活する中で現れてしまわれてまた現れてまたしまわれて繰り返し立ち現れる風景だなって思って。そういう洗濯物みたいに、展示されている空間の中でだけ現れる形みたいなものを考えて作った作品です。

Q.この繋いでいるテグスはわざと見せてる感じですか?

婦木:そうですね。ぷらっと展示室に入ってきたときに「あ、洗濯物が干されてるな」ってまず目に入って、近くに来ると「あ、テグスでめっちゃ引っ張られてるんだな」っていうのが後から見えてくるといいなみたいな。

Q.テグスが結構不規則に垂れていたりとかくるくるしてるのがあると思うんですけど、それもわざとですか?

婦木:なんかライブ感というか、実際にここに物を持ってきて作業していく中で形ができていて、これはこう引っ張れそうかなとかその場で作った痕跡みたいなのを残しておけたらなと思って。

Q.彫刻の色が全部グレーなのは意味がありますか?

婦木:洗濯物の風景を一つの形として見えるように現せたらいいなって思っていて、ものとしてはバラバラなんだけど、全体では一個の塊みたいに見えたらいいなと。この洗濯物の彫刻っていうのはだんだんステップアップしている作品で、元になる作品があって展示するのは今回が3回目ぐらいで展示される場所によっていろいろ要素を変えたりしているんですけど、かかっているものが本当の洗濯物だったときもあって、そうなるとまた別の意味になってくる感じもあって。今回は都市の中の一個の風景として全体に現せたらいいなと思ってグレー1色にしました。

Q.今回の洗濯物は全部婦木さんが作ったものですか?

婦木:これ(Tシャツ)は作ったもので、本物の洗濯物もちょっとあったりします。本物の洗濯物があることで日常の知ってる風景にぐっと近づく部分もあれば、洗濯物の形をトレースした偽物の部分、表象をなぞっている作り物の部分もあることで、現実の世界と作り物の世界を行き来するような駆け引きみたいなのをちょっと入れてみました。

Q.ハンガーとか洗濯バサミも全部作ったものですか?

婦木:はい、全部手で縫ってふにゃふにゃなんですよ。本当は触ってもらうと良く分かるんですけど。やっぱり見るだけだと針金が入ってるみたいに見えて、でも実際は全部ふにゃふにゃ。でも触ってOKですって言って色々外れちゃうと怖いので(笑)。もし触ってもいいですか?って聞かれたら優しく触ってください!って気持ちです。

Q.今回のテーマが都市なので、婦木さんにとっての都市について聞かせてください。

婦木:ちょっと逸れながら話す感じになってしまうかもしれないんですが、私決まったスタジオとか持っていなくて。レジデンスに参加してその先で期間限定のスタジオに入ったりとか、製作期間に裏の倉庫の中にいさせてもらって制作したりとか、定住の場所をあんまり持っていなくって。住む場所も製作する場所も入れ替わりながら制作活動をしていて、それに作品の形態がついてきてる感じがあって、大きい形があるものを物理的に持っておけないからこそこういう柔らかい小さくたためて展示のたびに形を変えられる作品形態になっていったりとか、自分が都市に棲んでいるっていうことが作品の形態や質感とか制作の技法に表れている感じがしています。今回のテーマの「再び都市に棲む」の棲むも棲みつくの棲むじゃないですか。いろんな都市の中の限られた制約のある場所へ自分の生活とか制作の方法の形を変えながら、そこの場所に収められるように変えていっている感じがあって、それが棲むっていう言葉とちょっと通ずる気がしています。都市ごとに自分自身が形を変えていくみたいな。この作品も展示される場所の中にある要素によって繋がれ方が変わっていく作品なので、都市に棲むというテーマに合うんじゃないかなって。私にとって都市って、限られたスペースの中にいかに棲み着くかみたいな、なんかそういう感じがします。

Q.最後に今後の展示の情報とかあれば!

婦木:7月の31日から1ヶ月ぐらい、京都芸術センターで丸山のどかさんというアーティストさんと2人展があります。ぜひ来てください!

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

婦木さんはなんとBankARTのスタッフに大学の後輩がいたそうで😲

たまたまここで再会したみたいです✨雑談もたくさんしてくださって楽しかったです!

婦木さんの作品情報はこちらから見ることができます!👉@kanakofuki

婦木さんありがとうございました😊

【アートラーニング・インタビュー #7】BankART Life7 参加アーティスト・片岡純也+岩竹理恵 Part 1 by BankART実験広報部

こんにちは。BankART実験広報部の傳田です。今回はLife7に展示されている、片岡純也+岩竹理恵「新陳代謝のある都市の風景」の作者の1人である岩竹理恵さんにインタビューさせていただきました。

ーーーーーーーーー

この作品の動きと音、そしてコラージュされた都市の様子にはずっと見入ってしまいます。岩竹さんはどのような思いで制作をしているのでしょうか。まず作品のモチーフである伊勢佐木町について聞いてみました。

__伊勢佐木町というのは、どこにあるのですか?

岩竹:場所は桜木町と関内駅の間あたりですかね。歴史で言えば、横浜といえば桜木町っていう感じだと思うんですけど、、、この辺は港が開港して、町ができて、その後に大震災と大空襲があって。で、その後アメリカになっちゃったんです。

__えー!アメリカになっちゃったんですか!

岩竹:はい。日本人入れない、みたいな。それで、戦後は日本に戻ってきて復興して、華やかな町になったんです。でも今横浜って人通りは多いんですけど、中心が移動しちゃってたりとかして。結構、波のある町ですね。

__じゃあ、結構最近の建物が多いんですかね?

岩竹:そうですね、馬車道あたりと比べると戦後の建築が多いですね。本当に人が、生活してきた場所です。だから今回は、その横浜っていう華やかな町のイメージというよりかは、”生活感のある町”。で、自分と本当に接触していて体感的に感じているような”身の回り”っていうものを扱いました。

__作品に身の回りのものを使っているから、なんだかそれがすごく伝わります。

岩竹:”身の回り”は、身の回りにあるから見てみて気になって、その形の特徴や物理的な現象からイメージが湧いて、そのアイデアを作品化してますね。結構、その素材の形の特徴をどうアウト プットするか、ということを考えています。

__いつも片岡さんと2人で作ったり展示したりしているのですか?

岩竹:いつも、、じゃないですけど結構多いですね。まあ、8割くらいかな。夫婦なので。

__あ!ご夫婦なのですね。

岩竹:そうそう。生活が一緒なので、見てるものとかのことをなんか話し合ったり。でもやっぱりまあ、気になる点はズレがありますよね。私は平面に関心があって、彼は動きに関心がある。彼はどうしたらどう動くか、というふうに物を捉えてて、私はこの3Dというか、立体的な自分がいる環境を平面に起こすときにどんなことが起こるのかってところに関心が高めです。

__それが組み合わさっているのがすごくいいですよね。

岩竹:それぞれ作って組み合わせてみるっていうやり方なんですけど、うん、なんか意外と合うんですよね。

__作品に使っている物たちはどのように選んでいるのですか?

岩竹:私たちは2人とも、元々の役割は無視して物として見直すっていうことが多いです。新聞は鳥とかが見たら確実に巣の材料に、、笑

__私は学校とかで、使う素材に対して意味を求められることがあって悩んでいて、、、

作品を見るときにも、たとえばこれが瓶であるということに意味があるのかなとか考えてしまいます。

岩竹:現代の美術に求められがちですけど、私たちは形の特徴から発想します。でもこれを抽象的な形にするとまた、作品のバランスが違くなる。やっぱり、使われてて社会的な背景があるゆえの背景をとっぱらってる、というところがおもしろいかなと思います。というより、使いやすいから最初は使ってますね。それが物理的な実験として新しく抽象的な形を作る、ということではないですが。

このトンカチは瓶が乗ると立つんですけど、でもその理由が聞いてもだからおもしろいというわけでもないし、なんかその理由がおもしろいってことでもないですよね。

結局、コンセプトを出す段階で身の回りのことや、世の中のこととその目の前のことの関係性を探したり考えたりしてみるという感じですかね。

作ってるうちに自分が実際に物を使ってみるとうまくいかないことがあって、そこをクリアするためにまた物理的な関係性を考えたりすることが、クリエイティブなのかなと思っています。

ーーーーーーーーーーー

作品の細部についてもお聞きしました。

__この、ところどころに置いてある立体物はなんでしょうか?

岩竹:これは(写真のトンカチのような形の物)たとえば、新聞紙でできていて、、

__えっこれ新聞紙なんですか!?本当だ、少し面影がある!

岩竹:そうなんです。持ってみていただくとーー

__あ!軽い

岩竹:新聞の写真とかを貼って、削り出して。

絵画的な感覚で私はこういうのを作っていますね。見たものを映し取って置き換えるっていう造形行為が、絵画的かなと思っているので、、立体的なコラージュのようなものですね。

それでいうとその上のものも感覚が近くて、これは紙を丸めたものに、アクリル絵の具でその紙のシワを絵の具で辿って形を辿るっていうことをしています。素材としても紙にアクリル絵の具という、ペインティングなんですけど”形を辿るっていう行為”ですね。

__岩竹さんは紙をたくさん使われてますね。

岩竹:そうですね。このへんはまさに身の回りの日々の紙ですね。こういう身の回りの工業製品で何かこう、街の景色のようなものを描いてるんですけど、机の上で見る工業製品の素材も、その時代の街レベルの風景とか情景とかそういう感覚が表れるんだなって、やってみて思いまし た。

これ、(コラージュ作品の一部)使い捨てカイロのゴミだったものなんですけど、この”貼る”というのがコラージュとかかってる、とか。その辺は材料とのたまたまの出会いでやっています。たまたまあった包装物の文字や形を、電柱に見立てたり、雨戸のようなものに見立てたり。文字情報とイメージがバランスよくなるように、でも文字を読んだ時のそのイメージのこの行ったり来たり感とか、、、、

今、戦後のモダニズム建築が表面が剥がれてきて、ポストモダニズムの街、っていうのとコラージュっていうのが、ちょうどモチーフと技法が合ってたな、とやりながら思いました。

__この波の画像のようなものは?

岩竹:これは、海の表面の写真を分割してその網点の大きさを変えてるんです。離れて薄目で見ると写真のような画像に見えて、近づくと紙とドットに還元されてしまうというのが、印象派のような対象と距離との問題を扱ってます。全体のバランスや横浜のイメージとかを考えた時に置きたいなと思って。

__横浜といえば海のイメージがあります。

岩竹:横浜といえば、海があるからできた街、ですからね。

ーーーーーーー

岩竹さん、ありがとうございました!形を辿るだけでなく、都市のバックグラウンドも辿っていると感じました。機会があればぜひ片岡さんにもお話を聞いてみたいです。

BankART Station での展示に加え、オリマツ中央市場店でもお2人の作品を見ることができるので是非チェックしてみてください。

※特別に作品に触らせて頂きましたが、会期中はお手を触れずにご覧ください。

片岡純也+岩竹理恵の作品や情報はこちらから→https://kataoka-iwatake.tank.jp

テキスト・写真:傳田

【横浜クリエイティブCOOP】商品のご紹介-黄金町バザール出展作家編

BankART実験広報部の今井です
大型連休も終わりましたが、皆さまはどのように過ごされましたでしょうか?

さて、今回は「黄金町バザール2024」に出展されている作家・クリエイターさんのグッズをご紹介します
まずは 安部泰輔 さん
端切れや古着からぬいぐるみを制作するアーティストさんです🧸
恒例になってきたヨコトリぬいぐるみバッジには、タイトルの「野草」からとってクローバーがあしらわれています🍀

次にご紹介するのは かずさ さん
お米をモチーフとした作品制作やパフォーマンスをおこなっている作家さん🍚
横浜クリエイティブCOOPでは、素朴で可愛らしいお米のポストカード2種とお米の手ぬぐいを販売中です

Tシャツに描かれたイラストレーションが目を引くのは さとうりさ さんのグッズ!
描かれているのは「こはち」というお名前で、さとうさんの作品に登場します😳
お花のこはちのTシャツと、さとうさんが翻訳を担当された絵本をお取り扱い中です

続いてご紹介する 瀧健太郎 さんは、平面や立体作品のほか、映像作品を制作するアーティストさん🎥
今回は瀧さんのスケッチが印刷された真っ赤なTシャツと、過去展示や今回のバザールのスケッチが含まれるポストカードセットを販売しています
黄金町での展示は映像作品を投影していますので、暗くなった夕方ごろが見頃です🌆

最後にご紹介するのは、油絵特有のテクスチャが印象的な 実実生 さんのグッズ
実さんの描いた油彩画がそれぞれポストカード、ステッカーになって販売中です🎨
描かれた女性と、その女性たちの間で交わされる関係性を想像するとより楽しめますよ

見どころも見応えも満載の黄金町バザール✨
竹内化成ビルや、黄金町アートブックバザールでも様々な作家さんのグッズや書籍が販売中とのことですので、横浜クリエイティブCOOPとあわせてぜひお立ち寄りください!
皆さまのご来店を心よりお待ちしております☺️

テキスト・写真:今井
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

創造都市20周年記念「横浜クリエイティブCOOP」
会期:2024年3月15日(金)~ 6月9日(日) 10:00~18:00
定休日:毎週木曜(4月4日、5月2日、6月6日を除く)
会場:BankART KAIKO ショップエリア
横浜市中区北仲通5-57-2 北仲ブリック&ホワイト 1階

https://bankart1929.com/…/artists/yokohama-creative-coop


【多様な地図で巡るツアー】身ひとつで生きる~奥能登アートクラフト トークイベント「身ひとつと、ひとりひとりの明日の話」

BankART実験広報部 劉が書いています✍

BankART Life7に作品を展示している奥能登アートクラフトのトークイベント「身ひとつと、ひとりひとりの明日の話」に参加しました✨

今回のトークイベントは、「身ひとつと、ひとりひとりの明日の話」と題して小林晴夫(blanClass)さんの進行の元、今瀬風韻さん、加藤修央さん、高畑圭介さん、萩のゆきさん、山田睦美さんの皆様の話を聞き、より作品に込められた思いや災害後の作品に対する見方の変化を知ることができました。

トークイベントでそれぞれの作家の話から印象的と思ったところについて書いていこうと思います。✍

加藤修央さん(漆作家)の話では、その住んでいる場所についてのリアルな話をたくさん聞くことができ、奥能登をより知ることができ面白かったです。話の中では、20年後には職人たちは減っていくと言われていて、災害がそれを前倒しにしたとおしゃっていた際に不思議な気持ちになりました。

今瀬風韻さん(輪島塗下地職人)の話では、東輪島塗は分業制で完成までには多くの職人がかかわっているという話から災害により、職人が減ってしまった現状を知りました。そのことから、後悔しないように関わっていきたいという思い、やりたいことをしていく、これから伝えてくれる人を育てていく、制作を伝える、やりたいことをする、作ること、学ぶことを守るきっかけになっているのを感じました。

山田睦美さん(珠洲燒作家)の話では、被災した当時の風景や感情が伝わり、大まかな囲った言葉ではなく、当事者が感じたものを感じることができました。その中で、ポジティブな言葉が嫌いになる、まだ頑張らなきゃいけないのか、という感情になり疲れてしまうという言葉がとても印象的に感じました。この言葉から山田さんの感じた辛さが伝わりました。

高畑圭介さん(レザークラフト作家)の話では、悲しいことがたくさんあったが、それをプラスにするために制作する。プラスに見せれるように作っていく。生きていることがもう財産であり、プラスを作っていくという思いと言葉から力を感じました。全てが当たり前ではなく、何事も大切にしていきたいと感じました。

萩のゆきさん(の菓子研究所)の話では、屋根の瓦が崩れた途端にいらないもの、ダメなものになってしまう、ということの不思議さを語らせていました。また、大切なものを失った反面、本当に必要ではないものたちにも囲まれて生活していたということに気付き、断捨離になるきっかけになり、気楽になった。ものを求めなくなり執着が減ったということから、このような見方があることに驚き、実際に被害を経験した後には感じるものが違うのだということをあらためて感じました。

トークイベントでは、作家さんが作品に対する思いや考え方を詳しく知り、自分がなにかを始めるきっかけになったり、自分の知らないものを知るきっかけになると思うので、ぜひ機会があれば次のイベントに参加してみてください✨

以上私、実験広報部の劉が印象的に感じたことでした。

【アートラーニング・インタビュー #6】BankART Life7 参加アーティスト・電子音響ピープル・柴山拓郎 by BankART実験広報部

こんにちは福谷です。

またまた作家さんにインタビューさせてもらいました!

今回はLife7唯一のサウンドアート作品「Imaginary Sphere 2024」を作られた電子音響ピープルの柴山拓郎さんにお話を伺いました。作品や電子音響ピープルについて紹介できればと思います!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Q.作家活動名について教えてください

柴山:作家活動名は電子音響ピープルプロジェクトと言います。ここではアーティスト名を電子音響ピープルと記載させていただいています。これは参加型のプロジェクトアートです。

Q.柴山さんお一人で電子音響ピープルなんですか?

柴山:このプロジェクトに関わったアーティストや参加者も含めて全員まとめて電子音響ピープル、という、アーティスト名として使っています。

Q.今回の作品はどんな作品ですか?

柴山:このインスタレーション作品は、去年実施したワークショップの参加者の皆さんの音からできています。ワークショップでは参加者の皆さんがお家から持ってきたものを使って音を録音して、それをコンピュータを使って切り貼りして作るんですが、ちょっとヘンテコな音楽なので、多くの人々はそれを音楽として楽しめないことが多いんですが、作ってるうちにみんな何か楽しくなってくるというプロセスも作品の一部です。ワークショップの後には、講師を務めたプロの作曲家が皆さんの作品をまとめて全部で8曲の新作ができまして、それを2月のライブで上演しました。その後でワークショップの音を使ってみんなのサウンドインスタレーション作品として完成させたのが、この作品です。私はこれのプログラムを組んだだけで、鳴っている音は参加者皆さんの音です。誰の作品だかよくわからない作品になっているところが表現の柱です。

Q.音自体は何の音が使われているんですか?

柴山:色々あります。参加者の皆さんがお家から持ってきたものなので、例えば下敷きとか筆記用具とか、調理器具とか、ちょっと忘れちゃいましたけど空き缶とか瓶などもありました。野球の応援をするメガホンを持ってきてた方もいました。

Q.普段はどんな作品を作られてるんですか?

柴山:私自身は電子音響音楽をコアにした音楽作品とか、こういうインスタレーション作品を作ってます。最近の軸足を、自分の作品を作るのではなく、みんなで作って楽しんだ方がいいかなと思って、こういう社会実戦に置いています。仲間外れがいない方がいいと思うんです。最近の音楽界隈にしろアートにしろ、ある意味かなりコンペクティブになってしまって、一人のヒーローが誕生するために千人の屍が必要だったりするのではないような世界ができるといいなっと考えています。

Q.過去の代表作とかありますか?

柴山:この作品のプログラム画面には2024年って書いてあるんですけど、元になっているこのプログラムは、2017年から2018年にかけてドイツのZKMで作ってきました。今回は画面に、ワークショップに関わった全ての皆さんのお名前が記載されています。こういった作品が、活動の代表作という位置づけになりますが、並行して、ライブも含めて、全体の流れを作品にすることを目指しています。参加型プロジェクトは活動自体が作品だと思います。ですので、ワークショップも、ライブも、このサウンドインスタレーションもその一部であるといえます。

Q.今回のテーマが都市だと思うんですけど、柴山さんにとっての都市とは?

柴山:都市や街には、目に見えないレイヤーがいくつもあると思います。地図で見えてる部分は表面だし、街の風景として見てるのも表面だし。そこにはいろんな人が住んでいて、いろんな仕事の人とかいろんな国籍の人がいて、みんながそこで動いてるんだけど、そういう全体を可視化することってできないじゃないですか。同じようにアートについても、レイヤーがあって、例えばそれを作り出す人と、それを楽しむ人が別々のレイヤーに分かれてるんですよね。BankARTとか美術館はそういう人たちが一緒に集うインターフェースと捉えることもできると思います。私達の活動は、都市の中に住んでいる、アートを作る人も、それを好きで観る人も、普段別々に棲んでいるレイヤーをかき混ぜながら、みんなが少しずつ気づいたら、作る人側に近づいていみませんか、トイ提案をしている活動が電子音響ピープルプロジェクトです。この作品も今まであんまり音楽なんか作ったことがなかったよ、という皆さんが「作ってみた」結果と、皆さんが棲むむ街の音が重なって鳴り響いているという構成になっています。

Q.今後の活動の情報などあれば!

柴山:今年の今後の活動は、ストックホルムとドイツとフランスでワークショップをやります。ストックホルムは6月で、ドイツが7月でフランスが8月です。そのワークショップでまたみんなで電子音響音楽を作って、プロとの協働制作作品を6作品完成させて、ドイツで9月に公演をやることになっています。この公演は、日本で協働制作した作品も上演する大きなイベントです。そのあと10月には、今度はヨーロッパで協働制作された作品を日本に持ってきて、ゲー下インスティテュート東京でライブとシンポジウムと展示をします。2024年は活動メインの年間計画で、2025年にはそれらをアーカイブ化する予定です。よろしくお願いします。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

柴山さんは東京電機大学の先生でもあり、インタビュー時間外で大学のお話や機械の詳しいお話も聞かせてもらいました!とてもためになりました

柴山さんと電子音響ピープルの活動情報はこちらから

・柴山さん

https://m.facebook.com/takuro.shibayama.14?mibextid=LQQJ4d

・電子音響ピープル

https://www.facebook.com/denshionkyopeople?mibextid=LQQJ4d

柴山さんありがとうございました!福谷

【多様な地図で巡るツアー】身ひとつで生きる~奥能登アートクラフト トークイベント「身ひとつと、ひとりひとりの明日の話」

今瀬風韻、加藤修央、高畑圭介、萩のゆき、山田睦美 
進行:小林晴夫(blanClass)
2024/5/5 sun. 19:00-21:00

今年元旦に起こった能登半島地震で被災した奥能登のクラフトアーティストたちへの応援プロジェクト。
その参加作家から5名の作家にお話をお聞きしました。

やはり、それぞれ違う経験をして、4か月経った今の状況もそれぞれ違い、これからもきっとそれぞれ違うのだと思いますが、復興といって、それは元の状態に戻るのではなく、町だけじゃなく個人でも、新しく作っていくことなんだなぁと思いました。

聞きに来ていた出品作家の山岸優羽さんも一緒に奥能登ポーズ👍
トークの様子は近日中に公開予定です。

テキストと写真:blanClass

【アートラーニング・インタビュー #5】BankART Life7 参加アーティスト・キム・ガウン by BankART実験広報部

↑絵本「君は僕のプレゼント!」を持つガウンさん

こんにちは、BankART実験広報部のJUNGです!

今回は韓国からいらっしゃった作家さんにインタビューさせていただきました!

キム・ガウンさんは今回BankARTとのプロジェクトで神奈川公園の70mの壁にペン画を描く予定であります!キムさんの制作を楽しみにしながら作品を中心に紹介していきたいと思います!

Q. 簡単な自己紹介お願いします。

キム: 5年前から横浜を拠点にアート活動をしている。韓国人アーテストキム・ガウンと申します。クマとウサギの旅という形でペン画作品を作っています。

Q. 普段どのような作品を作っていますか?

キム: 基本なんでもペン画から始まります。例えば、細かい作業を必要とする絵本製作からアニメーション、そして壁画やパブリックアートのような大きいスケールの作品まで作っています。特に最近はパブリックアートプロジェクトと共にイベントやワークショップを取り組みながら観客の共感を求めるアート活動に楽しさを感じています。

クマとウサギアクリルキーホルダー

7.5mx5.5m作品「杜甫の記憶」、中国成都、2023

Q. ペン画に興味を持つようになった理由がありますか?

キム:独学で絵を描いてますが、10年前ごろ母の看病をしながら家の中で過ごす時間が長かった時期に、身近にある紙とペンで絵を描き始めたのがきっかけでした。つまり表現活動を始めた時の環境から自然と選ぶようになったと思います。

Q. 作品に出てくる動物にはそれぞれの意味がありますか?

キム: 何となく昔からクマとウサギっていう決まりがあった訳ではないですけど、一応動物が好きで、見た目がどう見ても対立している(違う、異なる)のが明確に見えるものをずっとイメージしてきました。弱くて小さな存在、あとは、デカくて強い存在っていうのを最初はあまり明確にはしてなかったですけど、それがクマとウサギの形にだんだんなってきました。

Q. 今回作る作品のコンセプトは何ですか?

キム: 今回BankARTとのプロジェクトでは、神奈川公園の70mの壁面に作品を描くことになって、タイトルは英語だと「Dreamers」、夢を描く人たちと言います。公園に通ってくださる地元の方々、子供から大人まで、私が絵を描く過程を眺めてくださることによって、絵を見てそこに想像を加えて自分なりの色々な夢を見てもらいたいという願いを込めて、クマとウサギの旅をその公園で生かせる作品にしたいと思っています。

Q. 今回の作品を通じて観客に伝えたいメッセージはありますか?

キム: パブリックアートとしてみんなに通ってもらう場所に描く作品である分、何となくその絵を見てとにかく何かを感じてもらいたいなーと思っていますね。もう少しアートという言葉を使うよりも身近な存在として自分の日常に関わったほんの少しの喜びとして捉えてもらえたら、私が求めていることが叶うのではないのかなという希望があります。

Q. 白黒で描く理由がありますか?

キム: 最初にペンという材料から絵を描き始めたのがやはり大きなきっかけではありますけど、その白黒の世界の中で色んな表現ができると思っています。やればやるほど無限の可能性が出て来て、そこに色を加えてしまうとあまりにも選択肢が多くなって、私にはむしろ道に迷ってしまいそうな感じですね。私は白黒の世界でほとんど遊んでいますが、それが必ず色を入れちゃいけない訳ではないです。その中で自分の意味を与えたいところ、納得いくところがあれば、色を入れたりする作業をしています。

Q. イタリアと日本で活動するようになったきっかけは何ですか?

キム: ひたすら自分が好きと思われるような場所から色々自分のアートを生かしたい気持ちがありました。イタリアで若い頃にイタリア語を学んだ経験もあって、好きな国で何かをやりたかったのが基本ですね。

Q. 次の展覧会の情報や今後の計画があれば教えてください。

キム: 今回のBankARTの「Dreamers」プロジェクトは、ただ私が絵を描いて終わりではなくて、巨大な壁画を描いていくうちに、地元の方やボランティアの学生や小学校の学生達を招いて、協力してくれる関係者の家族まで、色んな人と関わってワークショップを行ったり、ダンスパフォーマンスもそこでやったりする長期プロジェクトを考えています。後は、もう少し先なんですけど、絵本も日本で出版する予定があって、それも同時進行で準備しています。

キムさんの作品や情報はこちらでみることができます! – https://gaeun-art.com/

Instagram – https://www.instagram.com/gaeunart/

テキスト・写真:JUNG

【多様な地図で巡るツアー】 blanClass+神村恵「身ひとつで生きる」Live Art ツアー  ミルク倉庫+ココナッツ[配牌(パイズ)ダービー]♯2 

今回はメンバー全員が出走。
アバターもですが、前回にもましてプレイヤーの審査基準を決める話し合いが白熱した感じです。
最終レースはアバターはプレゼンをパフォーマンスでしなければならず、まさにここでしか見られない作品になっていました。

テキストと写真:blanClass

オークションを経て作品を手にした皆さん。

【横浜クリエイティブCOOP】商品のご紹介-BankART Life7出展作家編

BankART実験広報部の今井です
待ちに待ったゴールデンウィーク、皆さまいかがおすごしでしょうか?
大型連休も横浜トリエンナーレは休みなく開催中!
「アートもりもり!」と称したアート・プログラムも各地で開催中です✨


今回は「アートもりもり!」の中でも、「BankART Life7」に出展されている作家さんのアイテムをご紹介いたします👀

まずは、新高島駅にあるBankART Stationで展示されている作家さんの商品をご紹介✨

岡崎乾二郎 さんは、近代美術にフォーカスしたベストセラー「抽象の力」のほか
おかざき乾じろ 名義の絵本「ねこかしら」などなど、書籍を5種類ほど取り揃えております📚

続いてのご紹介は 志田塗装 さん🪣
1874年創業の塗装会社さんの粗品タオルと企業Tシャツを販売中!なのですが
はて、そのような業者さんが横浜にあったでしょうか…🤔

次のご紹介は 三田村光土里 さん
三田村さんのブランド「näkö fabric(ナコ・ファブリック)」のバッグ&ブローチをお取り扱いしております🛳️
横浜の風景が息づくバッグはカラーも様々!お好きな柄と色のバッグをぜひ探してみてください🔍

続いてのご紹介は 吉田山+西山萌+木雨家具製作所 さん
3名のアーティストさんが共同制作された手刷り作品で、その面積はたたみ一畳分ほど!😳
大迫力の木版画を購入できるのは今の時期だけです👍

続いてご紹介させていただくのは 岩竹理恵 さん
古切手を封入した特製のバッジと、見る距離で印象が変わる👀 壁掛け商品を販売しています
切手バッジは黄金町アートバザールにもお取り扱いがありますが、壁掛け商品はこちらのみ!ぜひお立ち寄りください✨

次は、ポートサイド地区で作品展示されている 谷本真理 さん
素敵なイラストがプリントされたTシャツとトートバッグに、陶器のお皿を販売しております👚
谷本さんの描くやわらかな世界観を身につけて生活してみませんか?

続いてご紹介するのは、旅するクマとウサギを描く繊細なペン画がとても素敵なアーティスト、キム・ガウンさんのグッズです🐻🐰
6カ国語で楽しめる絵本をはじめ、アクリルスタンドとキーホルダー、いつでも世界観を楽しめるポストカードとA4カードを販売しております📗

馬車道に設置のアートテーブルを制作された野老朝雄 さん
野老さんといえば、2020年東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムデザインで有名なアーティスト✨
野老紋様の手ぬぐいやシールのほか、お部屋のインテリアとして飾っても素敵な壁掛け商品をお取り扱いしております
また、 FRAMEFLAME さん から野老紋様をモチーフにしたジュエリーも販売中💍
「つなげること」をテーマに作られた、シンプルながらも美しいデザインのジュエリーです

こちらもアートテーブルを制作された みかんぐみ さん
建築家4名による横浜の建築事務所で、その活躍は全国各地へ広がっています
今回は、過去の建築作品をまとめた書籍とポストカードを販売中です🍊

BankART Life7は新高島会場のほか、馬車道やみなとみらい、ポートサイド地区をはじめとした横浜の各地で展示されています🗺️
横浜の街を散歩しながら美術鑑賞を楽しみつつ、横浜クリエイティブCOOPでのお買い物をお楽しみください😊
皆さまのご来店を心よりお待ちしております!

テキスト・写真:今井
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

創造都市20周年記念「横浜クリエイティブCOOP」
会期:2024年3月15日(金)~ 6月9日(日) 10:00~18:00
定休日:毎週木曜(4月4日、5月2日、6月6日を除く)
会場:BankART KAIKO ショップエリア
横浜市中区北仲通5-57-2 北仲ブリック&ホワイト 1階

https://bankart1929.com/…/artists/yokohama-creative-coop

【多様な地図で巡るツアー】電子音響ピープルプロジェクト Sound Scape & Sound Montage workshop @ BankART Station

電子音響音楽の創出に関わる満足感高いワークショップ、今回は「BankART Life7」ツアー担当の桑原がレポートします。

今回のツアーはワークショップ主体で、日常、聞き流している様々な「音」を改めて認識し、「音」に関する感覚を高めていくフェーズと、「音」自体を作り出し、それを素材に「音楽」を作り出していくフェーズに分かれています。13時から17時までとなかなか長丁場。前半の部分はともかく、後半はどのように進むのか、興味津々です。

さて、始まりました。

最初に電子音響音楽や環境音についてのレクチュアを少し。電子音響音楽は、「なんの音か」より「どんな音か」を中心に音を味わうもの、「音が出ているからには、その原因となることが目に見える形で起こっているはず、それと音を一体化して感じる」ということなのだというお話。この後、マリー・シェーファー(カナダを代表する現代音楽の作曲家。サウンドスケープの提唱者)の本「世界の調律」で述べられていることや、ロバート・カーソンの「46年目の光」のエピソードなども交えての説明は、これから「音を聴く」ことに関しての意識を高めてくれました。

その後、記録用のシートを受け取って外へ出かけます。BankART Stationの前の通路、外の広場、歩道橋の上などで耳を澄ませ、どんな音が聞こえてくるのかを記録していきます。

意外に難しかったのは、最後に歩道橋の上で行った、「どんな音が・どんな順番で・どっちから」聞こえてくるかを記録して行くというもの、3つの要素をどのように記録するかを考えながら書いていくのが思いの外大変でした。

その後、戻って、各参加者が聞こえた音を発表していきます。自分がそのとき聞こえていなかった音を記録している人がいたりして、はっとします。記録の仕方もいくつかあって、例えば「こどもの話し声」、「エスカレーターの音」といった記録の仕方もあれば、「ブーン」「コツコツ」「ドンッ」といった、いわゆるオノマトペ的なものもあり、そういった面でも、それぞれとらえ方が異なるのだなと人との違いを再認識しました。

そうやって「音」に対する感性を高めたあと、休憩を挟んで、いよいよ、「音」を創り、それを紡いでいくという作業になります。

今回は、あらかじめ何か音を出すものを各自持ってくるということで、各人、いろいろ持ってきています。ペットボトル、ネックレス、ホッピーの瓶とバリエーション豊か、柴山氏は「オイルが少し残る缶の中に小石のようなものを一つ入れた」という品で、少し遅れて「コトン」と落ちる感じの音が気に入っているとのこと。参加者は最初に名前を言ってから、持ってきたものを音素材として録音していきます。

全員が録り終えたら、各自に用意されたパソコンでその音を材料に15秒ほどのフレーズを創っていきます。利用するのはAudacityというサウンド編集ソフト、基本的な編集は易しい操作でできるもので、初めてでしたが割とすんなり操作できました。

しかし、操作は出来るものの、意図したようなフレーズを創るのが難しい。これまでいわゆる「打ち込み」作業は少し経験があるものの、「ガイドのリズム無し」、「そもそも素材の長さや音程がない」もので、「こんな感じにしたい」というものに近づけるのがむちゃくちゃ難しい。正直、できあがったものはイメージしたものとだいぶ違ってしまいました。しかしとにかくあっという間に時間が過ぎて、作業時間終了。作成したものを、みんなで聴く時間となりました。

音の使い方など、当たり前ですがみんな違って面白い。「フレーズ」というには少々抵抗があるけれど、こんな感じのものを創りたいのよ!という意図のようなものが伝わってきます。おまけに、柴山氏の「いやー、この音の使い方がいいですねー」とか「ここで、間があるのが表現を拡げてますねー」とかの絶妙な褒め方で、なんだか、「電子音響音楽創れちゃってる、俺~」みたいな気分になります。

長丁場でしたが、時間があっという間にすぎ、満足感高めでワークショップを終えました。今後、今回の音、フレーズを元に、編曲して、BankART Stationで行われるコンサートでお披露目となります。(5月26日(日)を予定)

今回参加してみて、「電子音響ピープルプロジェクト」が目指す「音楽の受け手としてではなく、少しヘンテコな音楽を自ら創るアーティストとして、共にその体験を楽しむこと」を、充分に感じられるツアーとなっていたことを改めて実感しました。