[Yokohama Re:Portside Project Vol.2]7月のリサーチツアー「植生からみるポートサイド ー ポートサイド公園から街路樹まで」

2026年7月26日

公園を設計した人と一緒に公園を歩く。

そんな経験は、人生でなかなかないのではないでしょうか。

先日の「ヨコハマ・リ・ポートサイド・プロジェクト」第2回リサーチツアーは、ポートサイド公園を設計された鈴木裕治さん(オンサイト計画設計事務所)をゲストに迎えた回でした。

公園を歩くときは頭を空っぽにして、風を感じながらお散歩をするのが好きです。なので、公園自体のことを考えながら歩いたことは、そういえばなかったなぁと思うのです。

設計士の視点で公園を歩くと、こんな味わい方があるのかと発見の連続でした。まるでアートを鑑賞する感じというのか、目の前の風景の解像度が上がる感じというのか。 形や素材、それを具現化するための工夫は、アートを作る時の思考と重なる話がたくさんありました。芝生も、地面も、ベンチも、石も、照明も、植物も、すべてにこだわりが詰まっていて、そのディテールひとつひとつに目を向ける時間はとても新鮮で贅沢でした。

ポートサイド公園は、公募のコンペによって選ばれました。コンペが実施された1991年は私が生まれた年。ポートサイド地区自体もだいたい自分と同世代ということで、なんだか勝手に街全体へ親近感を抱いています。

公園の竣工からはおよそ30年が経ちました。30年経てば当然いろいろな変化があり、まず目につくのは植物です。すっかり大木に成長したものもあれば、なかなかうまく育たなかった小さな木もあります。個性がそれぞれに現れ、大きさがまばらになった木々たちを見つめる、竣工当時を知る鈴木さんの眼差しがとても印象深かったです。

驚いたのは、公園のメインストリートに植えられているエノキは、鈴木さんが森で自ら探してきたものだということ。なんとなく公園の木というと、効率的に淡々と植えられたのかなと思っていましたが、実際は設計士自らが森に入り、ひとつひとつ見繕ってきたものでした。その背景を知るだけでも木の見え方が変わり、ふと並木道が神木の連なりのようにも見えました。

ポートサイド公園で欠かせないのが、水辺のヨシの群生です。 設計の特徴でもあるこのヨシの風景を生み出すためにも、並々ならぬ工夫があったといいます。シーバスが通るたびに立つ波がヨシを倒してしまうため、波を打ち消す構造を考えたこと。さらに、水際線部分は位置により、港湾、河川、公園などの管轄が分かれており、ヨシを植えるためにいくつもの部署をまわらなければならなかったこと。 自然の摂理にも、人間界のルールにも、両方の声に真摯に向き合いながら形を作っていく設計の姿勢が、こうして後世に残り、今日の公園の美しさをつくっているのだと知りました。

あいにくの小雨でしたが、そのおかげで水辺を歩くカニの姿が見られたり、夏の湿度に乗って葉の香りが立っていたり。雨ならではの公園の表情を満喫できました。雨の日に公園に行こうなんてひとりだと思わないから、これも特別な体験です。

そして、私自身の制作に直結する収穫もありました。 どんな植物が、どういう背景でこの場所に植えられたのかを設計士ご本人から直接聞けたこと。どの時期にどんな実が落ちるのか、染料として使えそうな素材はどれか、剪定の時期はいつなのかなど、染色に活用できそうな具体的なヒントが見えてきました。

さらに、鈴木さんとの対話の中で「会場で展示している作品が、ポートサイド公園のどの植物で染めたものなのか、公園に足を運ぶと分かるようになっていると面白いよね」というアイデアも生まれました。ここからどう形にしていこうか、想いを巡らせています。

山本愛子

Photo by Tatsuhiko Nakagawa