2021年11月19日(金)-28日(日) BankART KAIKO
11月19日から28日まで『Tanker Project Prologue』というタイトルの展覧会がBankART KAIKOにて開催されている。今、インターネットによって世界が“統一される”ことで軋轢が生まれている。それを乗り越えるため、“仮想と現実の海に、アートのエネルギーを載せて航海する”というのが本展のコンセプトである。
会場に足を踏み入れると、まず視界に飛び込むのが天井から吊り下げられたタンカーの精巧な模型だ。栗林隆のこの作品は、現実の中の“想像上の海”に浮かぶタンカーをイメージさせる。小さな巨船は植物を大量に積載し、一つの島のように独立した生態系が世界を旅しているかのようだ。
その奥には電球が巻きついた小屋がある。そこにはサーカスのようなどこか懐かしい賑やかさがある。Cinema Caravanの本展示は、逗子海岸映画祭を再現したそうだが、まさに自分が移動したような感覚に包まれる。
キューバの風景画のパズルが崩れた向こうに本物の写真があるというカルロス・ガライコアの作品や、カメルーンで人気のボードゲームが置かれた“移動式カフェ”など、外国の作家の作品も、移動というテーマを日常に設営するのに大きな役割を果たしている。
全体として“移動”というテーマでまとめられていることが、一つ一つの作品の個性を際立たせており、とてもワクワクする展覧会となっている。一つ残念なのは、Caravanや光る矢印のサイン、二台とそれを曳く自転車などが、入った時に正面から見えないことだ。会場に足を踏み入れた瞬間、異世界へ移動したような雰囲気を作れれば、一歩目から“日常の延長としての移動”を感じられたかもしれない。
以下、主催者より
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Tanker Project – Prologue: Road to documenta fifteen 展 開催中!
Tanker Projectは、作家・栗林隆が長年温めてきた、タンカー船を改造し、自由に動く島をつくりたいという思いをもとにArtTankと発起したプロジェクト。現代の様々な場所で生じている軋轢を乗り越えるアートエネルギーを船に載せ、世界中に届ける構想です。インターネット上の仮想の海から始動し、実現に向けて活動する過程の一つ一つを現実世界の展覧会やプロジェクトに仕立てながら、本物のタンカー島の就航を目指し進めていきます。
このたび、栗林隆と乗船アーティスト CINEMA CARAVANが、ドクメンタ15(2023年6月18日―100日間)参加決定したことを機に、キックオフ展を開催する運びとなりました。テーマは 「旅・移動・Lumbung(ルンブン)」です。
出展アーティスト・団体: 栗林隆(日本)、志津野雷(日本)、CINEMA CARAVAN(日本)、バルトロメイ・トグオ(カメルーン/フランス)、バンジュン・ステーション(カメルーン)、カルロス・ガライコア(キューバ/スペイン)、アーティスタ×アーティスタ(キューバ)。
旅・移動 世界のあちこちで移民についての考え方が社会問題となっていた近年、突如地球を覆ったコロナ禍は、私たち人間の様々な移動について根本的に問い直す契機となりました。Tanker Project 構想の源にもまた、場所(土地)を巡る人間の諍いから自由を求める希求が、あるいは、様々な地域の差異を前提とした共生する社会を実現したいという思いがあります。バルトロメイ・トグオ(カメルーン) 、カルロス・ガライコア(キューバ)、栗林隆(日本)、志津野雷(日本)は、それぞれに、旅や移動をテーマとした作品を作り続けています。アフリカから見える格差と移動(移住)、西欧から「発見」された新大陸から見る人間の移動の意味、溢れる情報を疑う旅、地球の美しさと営みを探求する旅とその表現は様々です。彼らの作品を通して、私たち人間がなぜ移動し続けるのか、再考する契機となれば幸いです。
Lumbung(ルンブン)とはインドネシアの米蔵とそれを管理する共同体を差す概念で、来年開催されるドクメンタ 15のテーマ です。上記の4名の作家たちには、それぞれの故郷や拠点でライフワークとして取組む活動、チームがありました。Tanker Project は、アーティストだけではなく、作家たちの創作の源となる思いや活動を共に載せ、航海していきます。これまでの概念では、アーティストとは呼ばれない活動やチームも、Tanker Projectにおいては、大切なエネルギーを創り出すアーティストなのです。こうした活動やチームのことを、ドクメンタ 15では、Lumbungと呼んでいます。CINEMA CARAVAN(日本、逗子)、Artista X Artista(キューバ、ハバナ)、Bandjune Station(カメルーン、バンジュン) という 共同体(活動体)をアーティストとしてご紹介いたします。
Road to docmenta fifteen
そして、ドクメンタ15への道、と題したドローイングも展示販売中です。CINEMA CARAVAN+Takashi Kuribayashi のドクメンタ15作品制作資金となります。ドローイングのご購入を希望される方は会場にてお声掛けいただくか、プロジェクトホームページのコンタクトフォームよりお問い合わせください。
https://tanker-project.com/contact/
展覧会名:「Tanker Project ― Prologue:Road to documenta fifteen タンカープロジェクト ー プロローグ:ドクメンタ15 への道」
主催:ArtTank
協力:BankART1929
会期:2021年11月19日(金)― 11月28日(日)
会場:BankART KAIKO (横浜市中区北仲通5-57-2 KITANAKA BRICK&WHITE 1階)
時間:11:00-19:00 (会期中無休)
料金:700円(中学生以下及び、障がい者手帳お持ちの方と付き添い1名は無料)
トークイベント:
■ 11月23日(火・祝) 17:30― : YATAI- Road to Documenta15 トーク ※予約優先
登壇者:栗林隆、YATAI TRIPメンバー _ 溢れる情報を疑い、境界を旅することで世界を再認識する旅 「YATAI TRIP」。 ドキュメントを観ながら、栗林とYATAI TRIPメンバーが語ります。
■11月27日(土) 17:30― :Swells of WAVEMENT TOUR ※ ご自由に参加いただけます。
2007年の夏、海から原発や放射能の現実を学び、意識を共有した旅「WAVEMENT TOUR」。発起人の一人 志津野雷と参加者たちが、それぞれの場所で今なお感じる旅の共振を確かめ、これからの活動のビジョンを語ります。