【アートラーニング・インタビュー #1】BankART Life7 参加アーティスト・水木塁 by BankART実験広報部

こんにちは、福谷です!本日はBankART Life7 の出展作家さんである京都のアーティスト、水木塁さんにインタビューさせてもらいました🎤

水木さんのLife7の作品「P⁴ (Pioneer Plants Printing Projects) 」は、半透明の立体作品で、一部破損した状態で展示されています。この作品のコンセプトや、水木さんの活動について紹介していきたいと思います!

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Q.この作品はどうやって作っているんですか?

水木:これは植物の3Dデータを作ってもらって、それを3Dプリンターで出力したものです。

Q.この格子状の立体も植物ですか?

水木:いや、これは3Dプリンターで自動的に生成されるものなんですよ。モデリングをしてそれを出力するときに、出力物を支えるためのトラスという構造がソフト上で作られます。本来だったらそれは不要なものなので取られるんですよ。この作品はそれも含めての彫刻と考えています。

Q.今回の作品のコンセプトはなんですか?

水木:今回の作品は人間の世界と植物の世界の境界線というものが都市の中では常に揺れ動いていて、その二つの世界の絡まり合いみたいなものを可視化できないかと思いました。そのとき、人工的で構造的なトラスと植物の造形というものを文字通り絡み合った物(オブジェ)として提示することでその見えない境界線みたいなものを再現できるんじゃないかと。そういうコンセプトで作ってます。

Q.ところどころ壊れてるのは何か意味があるんですか?

水木:ところどころ壊れてるのはある種の不完全性みたいなものとか仮設感だったりとか、壊れたところから何か生成されていく過程のような、もしくはその両方を感じてもらえるようしようと思って。この会場を見て、例えばタイヤ痕がついてるとかコンクリートが割れているとか、そういう何かが起きた痕跡性を一つの足がかりとして壊すことを考えました。

Q.お客さんに壊された部分もあるとか…。それを想定してこの形で展示を?

水木:これとか自分が壊したわけじゃなくて当たっちゃったらしくて(笑)。触れて壊してしまうということに関して言えば、美術作品だったら駄目だけど、道端の小さな雑草はどうでしょうか?実際、僕たちが雑草をこの作品に起こったように踏んだりしてないかと言われたらそれはノーですよね。雑草は良くて美術作品は駄目っていう境界がなんだろうと思うし、これは…うん、踏まれても仕方ない展示方法とも言えちゃいますよね。もちろん故意に踏んで欲しくはないわけです(笑)。例えばこの作品のささやかな存在感って、僕たちの足元の世界に対する解像度についての問いも含んでいるわけですから、踏んでしまったことによって考えるじゃないですか。ただ、やっぱりこういう美術の現場における雑草と作品は違うから、踏まれたこっちも心を痛めるし踏んだ方も心が痛い。それならいっそ自分でしっかりと壊して、壊れた存在として展示した方がいいかなって。

タイヤに潰される作品
お客さんに壊された作品

Q.イントレ(展示台に使ってる足場)はBankARTのものだと思うんですけど、もとから使う予定だったんですか?

水木:会場を見せてもらったときにこれを使いたいってなりました。例えばビルを建てるとかビルの外壁を塗るときにはこれが役に立ちます。でもその目的を果たすとイントレは全部解体される。そういう文脈もあってこれを展示台にしてしまうのはありかなって。

イントレにインストールされた水木さんの作品

Q.普段はどんな作品を作っているんですか?

水木:2022年に東京都写真美術館で発表していた作品は写真の作品なんです。この作品も僕は写真を撮っただけで造形は自分でしていません。僕の場合、写真データを含めてイメージってテーマに沿ってどういうメディアで再現するかというシンプルな問題しかないので、雑草などのモチーフは同じやし、シームレスにそこら辺は繋がってはいるんですけど。一般的に考えて、平面と立体的な作品では、初めて見る人にとったらずいぶん違うなってなりますよね。先に言った自分の言葉を借りると、雑草のデータっていうことに関しては両方とも同じで、それがどのメディアに乗っかるかっていう違いがあるという感じですかね。

Q.ずっと雑草をモチーフに取り扱っているんですか?

水木:コロナ禍以降ずっと雑草がメインのモチーフにはなってますね。コロナ禍より前はスケートボーダーから見た都市の風景の捉え方って感じでやってたんですけど、人間から見た視点ではなくて植物から見たとか鳥から見たとか、そういう人間以外の視点から街を見ていくアイディアが生まれて、その一つのきっかけとして雑草というものがあるという感じです。

Q.他の作品でも会場に合わせて展示形態を考えたりしているんですか?

水木:はい。場所を与えられてその場所を見て、その場所に既に存在している何かを自分の中に取り込んでいく感じでしょうか。例えば2017年にαMで個展をやったとき、壁には一切作品を展示せずに柱にだけ湾曲した大きな写真を展示しました。柱には床などの建築構造を支える歴史があるわけなんですけど、そこを展示場所として積極的に読み替えることがちょうどその時考えていた自分と空間との関わり合い方でした。既にその柱があることで十分空間が美しかったから、作品をどう展示するかすごく困ったんですけど、同時にすごく挑戦のしがいがあるというか。つまり、場所を読み込んで、どうアウトプットするか、そういうのは結構大事にしているかな。

Q.自分の作品の中で印象に残ってる作品はありますか?

水木:先にも触れた写美で発表した作品は機会がある時に見てもらえればより僕の作家像が見えてくるかもしれません。少なくともどういうところに関心があるのかっていうのは多かれ少なかれ見えてくるかなと思いますね。特に作品のタイトルを見てもらったりするとよりそれがわかってくるかと思います。僕の場合、基本的にはテキストや資料などを展覧会場に置いておくことはなくて「写真作品ボンっ」とか「彫刻作品ドーン」みたいな感じだから、タイトルを見てもらったときに何を考えてるか、わかってもらえるようなタイトルをつけてるつもりです。

Q.次の展覧会の情報などあれば教えてください!

水木:次は少しの間だけ夏にロンドンにレジデンスに行きます。それから帰ってきてから東京で個展の予定があるので、それが成果報告的な位置づけになりそうです。

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実はインタビュー時間は30分と長く、これでもだいぶ削った内容になってしまっています😭お話の内容がとても面白くてたくさんお時間をいただいてしまいました。すごく興味深くてためになりました…!

水木さん、ありがとうございました!

水木さんの作品や情報などはこちらから見れます👉@rui.mizuki

福谷

テキスト:福谷 写真・映像:傳田