【アートラーニング・インタビュー #7】BankART Life7 参加アーティスト・片岡純也+岩竹理恵 Part 1 by BankART実験広報部

こんにちは。BankART実験広報部の傳田です。今回はLife7に展示されている、片岡純也+岩竹理恵「新陳代謝のある都市の風景」の作者の1人である岩竹理恵さんにインタビューさせていただきました。

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この作品の動きと音、そしてコラージュされた都市の様子にはずっと見入ってしまいます。岩竹さんはどのような思いで制作をしているのでしょうか。まず作品のモチーフである伊勢佐木町について聞いてみました。

__伊勢佐木町というのは、どこにあるのですか?

岩竹:場所は桜木町と関内駅の間あたりですかね。歴史で言えば、横浜といえば桜木町っていう感じだと思うんですけど、、、この辺は港が開港して、町ができて、その後に大震災と大空襲があって。で、その後アメリカになっちゃったんです。

__えー!アメリカになっちゃったんですか!

岩竹:はい。日本人入れない、みたいな。それで、戦後は日本に戻ってきて復興して、華やかな町になったんです。でも今横浜って人通りは多いんですけど、中心が移動しちゃってたりとかして。結構、波のある町ですね。

__じゃあ、結構最近の建物が多いんですかね?

岩竹:そうですね、馬車道あたりと比べると戦後の建築が多いですね。本当に人が、生活してきた場所です。だから今回は、その横浜っていう華やかな町のイメージというよりかは、”生活感のある町”。で、自分と本当に接触していて体感的に感じているような”身の回り”っていうものを扱いました。

__作品に身の回りのものを使っているから、なんだかそれがすごく伝わります。

岩竹:”身の回り”は、身の回りにあるから見てみて気になって、その形の特徴や物理的な現象からイメージが湧いて、そのアイデアを作品化してますね。結構、その素材の形の特徴をどうアウト プットするか、ということを考えています。

__いつも片岡さんと2人で作ったり展示したりしているのですか?

岩竹:いつも、、じゃないですけど結構多いですね。まあ、8割くらいかな。夫婦なので。

__あ!ご夫婦なのですね。

岩竹:そうそう。生活が一緒なので、見てるものとかのことをなんか話し合ったり。でもやっぱりまあ、気になる点はズレがありますよね。私は平面に関心があって、彼は動きに関心がある。彼はどうしたらどう動くか、というふうに物を捉えてて、私はこの3Dというか、立体的な自分がいる環境を平面に起こすときにどんなことが起こるのかってところに関心が高めです。

__それが組み合わさっているのがすごくいいですよね。

岩竹:それぞれ作って組み合わせてみるっていうやり方なんですけど、うん、なんか意外と合うんですよね。

__作品に使っている物たちはどのように選んでいるのですか?

岩竹:私たちは2人とも、元々の役割は無視して物として見直すっていうことが多いです。新聞は鳥とかが見たら確実に巣の材料に、、笑

__私は学校とかで、使う素材に対して意味を求められることがあって悩んでいて、、、

作品を見るときにも、たとえばこれが瓶であるということに意味があるのかなとか考えてしまいます。

岩竹:現代の美術に求められがちですけど、私たちは形の特徴から発想します。でもこれを抽象的な形にするとまた、作品のバランスが違くなる。やっぱり、使われてて社会的な背景があるゆえの背景をとっぱらってる、というところがおもしろいかなと思います。というより、使いやすいから最初は使ってますね。それが物理的な実験として新しく抽象的な形を作る、ということではないですが。

このトンカチは瓶が乗ると立つんですけど、でもその理由が聞いてもだからおもしろいというわけでもないし、なんかその理由がおもしろいってことでもないですよね。

結局、コンセプトを出す段階で身の回りのことや、世の中のこととその目の前のことの関係性を探したり考えたりしてみるという感じですかね。

作ってるうちに自分が実際に物を使ってみるとうまくいかないことがあって、そこをクリアするためにまた物理的な関係性を考えたりすることが、クリエイティブなのかなと思っています。

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作品の細部についてもお聞きしました。

__この、ところどころに置いてある立体物はなんでしょうか?

岩竹:これは(写真のトンカチのような形の物)たとえば、新聞紙でできていて、、

__えっこれ新聞紙なんですか!?本当だ、少し面影がある!

岩竹:そうなんです。持ってみていただくとーー

__あ!軽い

岩竹:新聞の写真とかを貼って、削り出して。

絵画的な感覚で私はこういうのを作っていますね。見たものを映し取って置き換えるっていう造形行為が、絵画的かなと思っているので、、立体的なコラージュのようなものですね。

それでいうとその上のものも感覚が近くて、これは紙を丸めたものに、アクリル絵の具でその紙のシワを絵の具で辿って形を辿るっていうことをしています。素材としても紙にアクリル絵の具という、ペインティングなんですけど”形を辿るっていう行為”ですね。

__岩竹さんは紙をたくさん使われてますね。

岩竹:そうですね。このへんはまさに身の回りの日々の紙ですね。こういう身の回りの工業製品で何かこう、街の景色のようなものを描いてるんですけど、机の上で見る工業製品の素材も、その時代の街レベルの風景とか情景とかそういう感覚が表れるんだなって、やってみて思いまし た。

これ、(コラージュ作品の一部)使い捨てカイロのゴミだったものなんですけど、この”貼る”というのがコラージュとかかってる、とか。その辺は材料とのたまたまの出会いでやっています。たまたまあった包装物の文字や形を、電柱に見立てたり、雨戸のようなものに見立てたり。文字情報とイメージがバランスよくなるように、でも文字を読んだ時のそのイメージのこの行ったり来たり感とか、、、、

今、戦後のモダニズム建築が表面が剥がれてきて、ポストモダニズムの街、っていうのとコラージュっていうのが、ちょうどモチーフと技法が合ってたな、とやりながら思いました。

__この波の画像のようなものは?

岩竹:これは、海の表面の写真を分割してその網点の大きさを変えてるんです。離れて薄目で見ると写真のような画像に見えて、近づくと紙とドットに還元されてしまうというのが、印象派のような対象と距離との問題を扱ってます。全体のバランスや横浜のイメージとかを考えた時に置きたいなと思って。

__横浜といえば海のイメージがあります。

岩竹:横浜といえば、海があるからできた街、ですからね。

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岩竹さん、ありがとうございました!形を辿るだけでなく、都市のバックグラウンドも辿っていると感じました。機会があればぜひ片岡さんにもお話を聞いてみたいです。

BankART Station での展示に加え、オリマツ中央市場店でもお2人の作品を見ることができるので是非チェックしてみてください。

※特別に作品に触らせて頂きましたが、会期中はお手を触れずにご覧ください。

片岡純也+岩竹理恵の作品や情報はこちらから→https://kataoka-iwatake.tank.jp

テキスト・写真:傳田