「新・港区」は、横浜・新港ピアに拠点を構え、2012年から2年間の期間限定で50組を超えるクリエイター達のシェアスタジオであった。本著では、そこに住んでいたクリエイター達による2年間の活動が記録されている。さらに、同プロジェクトを推進・応援してきた関係者の寄稿文やシンポジウム「クリエイターがまちに住むこと シェアスタジオの可能性」などが掲載されており、「新・港区」という一つのプロジェクト記録だけでなく、都市にアーティストやクリエイターを誘致することで社会に与える影響について重層的に学ぶことができる一冊である。
さて、本著の編入作業はユニークな方法である。具体的には、住民会議という自治から選出された編集委員と管理運営者側が協働して、可能な限り住民が参画する形で進められている。例えば、住居人の紹介は自己紹介だけでなく、他の住居人による他己紹介も掲載されている。そのためか、住民同士の関係性やシェアスタジオの空気感が本からでも伝わってくる。また掲載されている寄稿文からは、アーティストやクリエイターの可能性を信じ、前例のないことに挑戦しながら、都市の中で文化芸術を育んできた人々の同プロジェクトに対する想いがひしひしと伝わってくる。
地域を活性化するためアーティストやクリエイターを誘致する動きが盛んな昨今。その効果には賛否両論あるが、ぜひ本著を手に取って考えてほしい。
新・港区(2014年3月発行)
B5判 224ページ
¥1,800+税
ご購入希望の方は、ホームページをご覧ください。
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