35歳以下の若手作家を個展形式で紹介するUnder35。今回はBankART KAIKOにて招待2名公募5名を選出し、3期にわたって開催する。1期目は、招待選出の井原宏蕗氏と山本愛子氏だ。
井原氏は、鉄、真鍮のピースを集積した集合体で現れた実寸大の象やサイの彫刻の初期作《fading》というシリーズがあり、BankARTでも過去何度か出品しているので、見覚えのある人は多いのではないだろうか。本展では、動物の食べ物や糞、巣を素材として扱った作品を中心に発表。《cycling》というシリーズでは、羊、豚、鹿それぞれの糞を集積させ、その動物のかたちを再現している。近づくと糞そのものの生々しい形にぎょっとさせられるが、漆によるコーティングを施しているため、工芸的な美しさも孕んでおり、じっと観察する人も多い。特に子供には大人気だ。他、ミミズの糞塚、蚕紗(カイコの糞)などを扱った壁画、レリーフ、ジュエリー、映像等が会場に並ぶ。素材そのものを集めるのではなく、焼成し、漆や金彩を施すなどそれぞれの素材の組み合わせと変化で生まれたかたちを、ぜひ楽しんでほしい。
山本氏は、染色技術を主に用いる作家で、アジアを中心に精力的に活動している。BankARTでも2017年にチューターとして、インドネシアの染色作家を招きワークショップを企画してくれた。中国杭州、台湾などでも滞在と発表を行い、2020年からは横須賀市がサポートする施設を拠点に活動。染料になる藍などの植物を育てることにも取組んでいる。今回は、横須賀で育てた植物、アジア各国で手に入れた天然素材を用いた草木染めの平面作品《あわいのはた》9点を発表。きめ細かな絹布に、藍、柿、茜、クルミなどの抽出色が染み込んでいる途中のような、一瞬の静謐さがある。中央には大きな旗が、空間・時間のあわいで揺らめいている。
4/23オープニングの様子
井原宏蕗
山本愛子
井原宏蕗展の様子
井原宏蕗《fading –increasing-》 2011 鉄 ・真鍮
山本愛子展の様子