ダニー・ユン実験劇場が今年も来日。20代前半の昆劇俳優たちが、明代の古典的戯曲に基づく「Flee by Night」(夜逃げ)を上演しました。物語は、水滸伝の英雄林冲が、迫害され梁山泊にかくまわれて盗賊になる話です。政府高官が逆賊になる。ダニー・ユン氏はこれを社会の「役割交換」の物語であると捉えます。そこでこの舞台で起きるひとつのテーマは「役割交換」とそれがもたらす創造性の検証です。しかしダニー・ユン氏の演出はいつも手がこんでいます。俳優達は、自分の役柄を交換するだけでなく、時には裏方の衣装を付けて役柄からも抜けだし、最後はアフタートークにも参加して素顔を見せます。現在の中国は、社会的役割が固定されている。その役割を交換することで、もっと自由になれるのではないか。ダニー・ユン氏のそういった呼びかけは、日本の社会にも響くものがあると思います。
O氏への旅 O氏からの旅
今回の出演は、黑沢美香、Abe “M”aria、大森政秀、上杉満代、そして大野一雄舞踏研究所研究生です。最初に登場する黑沢美香さんの踊りが終わる。しかし彼女はそのまま舞台に残る。そしてこの空間を次に訪れるAbe “M”ariaさんを迎えていく。こうして次々となにかを受け渡すように、踊り手が繋がっていく。この空間とそこで行われる儀式性のある行為は、大野一雄さんが60年代に作った実験映画、「O氏の肖像」を思い起こさせました。DVDにもなっているので、ご存じの方も多いと思いますが、60年代ならではのアヴァンギャルドな映像で、白塗り(当時は石膏を使ったらしい)の大野さんが原っぱを走り回ったり、人間の内面を旅をするように、謎の行為を延々繰り広げる映画です。この公演の旅のおわりには、研究生と出演者全員が登場、楽しげな祝祭のようでした。
女子美術大学芸術学科視聴覚メディア研究制作発表 Video Screening for Exercises
女子美術大学芸術学科による展覧会がBankART Mini ギャラリーで始まりました。
この展覧会は視聴覚メディアの杉田敦クラスと坪山真理クラスの2年生が授業で制作した作品を展示しています。主に映像やWebの作品で、メディアを用いてどんな表現ができるのか、どんな素材を使って映像としてみせていくかなど考えることをテーマとして作品が作られました。2年生ということもあって、技術的にもまだ若い印象を受けますが、素直に伝えたい事を表現しているのびのびとした作品が多くあります。今日は、杉田さん、坪山さんらによる講評会を兼ねたギャラリートークが行われました。話を真剣なまなざしで聞く学生たち。
2日間のみの短い展示ですが、ぜひご覧ください。
続・朝鮮通信使研究会始動!(BankART School)
夏に、ソウルから対馬、下関、瀬戸内、神戸、大阪、名古屋、横浜、妻有までを巡る「続・朝鮮通信使」プロジェクトを行いましたが、その次のステップとして、BankARTスクールの枠組みで「続・朝鮮通信使研究会」を始めることになりました。
前回スクールの仲尾宏先生のゼミに引き続き参加してくださった方、前回のプログラムに参加した人、それをみて興味を持った人、続・朝鮮通信使のことを全く知らなくても興味をもって下さった方などなど。建築系、アーティスト、ダンサー、歴史に興味のある人、韓国に興味のある人、交流事業に興味のある人、様々なバックボーンをもったひとたち総勢20名程が集まりました。
また、夏の通信使でお世話になった水都の会の藤井薫さんも大阪から駆けつけてくださいました!
とりあえず、第一回目は、自己紹介と、これまでのプロジェクトの紹介・説明、質問・フリートークなど。通信使全般についての復習的な会話や、今夏おこなった旅についての質問、今後の展開、日韓関係などなど、皆でブレーンストーミング。あっという間に予定の2時間が終了しました。
どうなることやら乞うご期待。今後はゲストなども招いていく予定です。
次回は12.10です。
大野一雄の世界展
大野一雄フェスティバル2010では、「大野一雄の世界展」を開催しています。
初公開となる過去のフェスティバル等の記録映像20点以上、大野一雄の映画5作品の上映やAntony and the Johnsonsと大野慶人との公演、NYKの河岸で2005年に開催したテアトロ・マクナイマの名公演等々、多くの映像をご覧いただけます。
また、大野一雄舞踏アーカイブ資料として、多くの国内外の新聞記事を中心に、直筆のメモやアルヘンチーナの家族から送られた写真、1955年の国体の振り付け資料、公演ポスター、大野一雄自身のアルバムなどを展示しています。その中でも1903年〜1938年の幼少から第二次世界大戦出兵までの写真を展示しているコーナーでは、大野一雄のデビューと思われる1938年江口・宮舞踊劇場旗揚げ公演「麦と兵隊」の貴重な舞台写真が展示されています。ただ、群舞の中で、果たしてどれが大野一雄なのか、いささか困難な写真です。また、時期的にも確定しがたい要素が残っています。
展覧会は12月12日まで毎日開催。滅多に観れない資料を公開しておりますので、是非ご覧下さい。