BankART出版紹介 vol.2 川俣 正 『Expand BankART』

今回取り上げたい書籍は、2012年から2013年にかけてBankART Studio NYKで開催した川俣正展「Expand BankART」のカタログだ。BankART Studio NYKの象徴的な作品となった本展覧会の足跡を辿ることができる。

本カタログは、これまでの川俣氏の軌跡を振り返ることが出来る全作品目録、本プロジェクトに向けたスケッチや模型などが載っている「Plan for Expand BankART」、本展や関連イベントBankART schoolの様子などが記録された「Documentation of Expand BankART」の三巻構成だ。

一冊一冊見応えのあるものとなっているが、特にプロジェクトの痕跡を見ることが出来るカタログも含まれているのは、「制作プロセスそのもの」も作品であるという川俣氏の作風に合った見せ方である。

本プロジェクトの特徴的な点は、プランと作業をほぼ同時進行で行ったことである。横浜という「場」と、そこで出会った「人」と関係しながら、絶えずプランを変え生み出されていった。残念ながら現在は施設自体が解体され作品を見ることは出来なくなったが、この場で起きた変化やコミュニケーションはしっかりと本カタログに残されている。

また、現在は三冊まとめて販売されている本カタログだが、当時は三回配本される仕組みとなっており、最後の記録集は展覧会が終了した後に配送されるという前払いシステムになっていた。現在では、いくつかの美術館などでも同様なことが採り入れられているが、本カタログがその先駆けとなったのは間違いないだろう。

執筆:㋖

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川俣 正『Expand BankART』
A4変形判 3冊セット 計352ページ
¥3,000+税
購入はこちらから
http://www.bankart1929.com/bank2020/book/index.html

BankART出版紹介 vol.1 BankART入門編「City Living BankART1929’s Activities」

「この書籍はこれまでの活動のエッセンスです。横浜に誕生したBankART1929がどのように都市に棲み続けてきたかを感じ取っていただければ幸いです。」

本書の冒頭に書かれている説明文の最後の一節である。

「棲む」という表現がBankARTらしいなと感じるが、この本はまさにBankARTの「生態」を垣間見ることが出来る。同施設を知らない人にとっては入り口となるような、知っている人は過去を振り返り懐かしく思うだろう。

本書の構成は2004年〜2015年までのBankARTの活動を13つの項目に分けて紹介している。ページをめくりながら、しみじみと「色々なことをしているな〜」とその活動の幅の広さに改めて驚く。

というのも、川俣正氏や原口典之氏など大規模展覧会をやっているのかと思えば、U35シリーズなど若手作家を支援する活動も行なっている。また、美術だけでなく大野一雄フェスティバルなどパフォーミングアーツも企画しているし、横浜トリエンーレとの連動企画「BankART Life」もある。さらに、活動は国境を飛び越え、続・朝鮮通信使シリーズとして韓国や、横浜市と台北市の交流プログラムなども活発に行なっている。

例をあげれば枚挙にいとまがなく、一つずつ紹介していくと日が暮れそうなので、ここまでにしておきたい。

もし気になる展覧会やプロジェクトがあれば、それぞれの活動をより詳しく紹介した単独の本があるので、ぜひ読んで頂きたい。

ここまでつらつらと書いてきたが、最後に私が言いたいのは「BankARTを知りたければこれを読め!」の一言に尽きる。

執筆:㋖

『City Living -BankART1929’s Activities』
B5変形判 184ページ
¥1,200+税
購入はこちらから
http://www.bankart1929.com/bank2020/book/index.html

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BankART AIR 2021 SUMMER オープンスタジオ

2021年8月8〜9日、13〜15日
@ BankART Station

BankART Stationにて、6月中旬から2ヶ月間行ってきたクリエイターのスタジオ事業の成果発表も兼ねてのオープンスタジオを開催した。

コロナ禍の重ぐるしい日々が続く中、作家たちの活動はちょっと元気がない印象だった。だが、公開した会場では、久しぶりの知人との再会や興味をもって話しかけてくる観客に丁寧に対応、マスク越しでも作家たちの笑顔を垣間見ることができた。

後半3日間も細心の注意を払いながらオープンしていく。

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横浜の街並みを一望 46階展望スペース

現在、徐勇展を開催しているBankART KAIKOだが、その施設の反対側にある高層ビルの最上階に行かれたことはあるだろうか。

実は、横浜の絶景を無料で一望できる超穴場スポットがそこにある。

KAIKO入り口の反対側にあるエレベーターから一気に46階に上がると、ホテル「オークウッドスイーツ横浜」のロビー階に行くことができる。宿泊者でなくても開放的な雰囲気があるため気兼ねなく行けるのも良いところ。到着すると、一瞬で目を奪われる横浜の絶景が広がっている。しかも、フロア全体が360度のパノラマが楽しめるようになっており、上から見渡しながら、「あれは赤レンガ倉庫だ」とか「あそこは山下公園」等々見つけながら眺めていると横浜を観光した気分にもなれる。

また、同フロアにはレストランやバーなどもあり、素晴らしい景色を眺めながらの食事はまた格別だろう。そして、実は喫煙所もある。タバコを片手に横浜の絶景を眺めながら一呼吸置いてはどうだろうか。

どんな人も満足できるだろうこの場所にぜひ足を運んでみて欲しい。

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【展覧会開催中】
徐勇展「THIS FACE」
2021年7月16日[金]~8月16日[月] 11:00~19:00
会場:BankART KAIKO(横浜市中区北仲通57-2 北仲BRICK&WHITE 1F) 
入場料:700円(64頁小冊子付) 無料(障害者手帳お持ちの方) 
主催:BankART1929  協力:劉檸 海牛子。

www.bankart1929.com/bank2020/news/21_023.html

BankART AIR 2021 SUMMER アーティストトーク第5回

@BankARTStation

青い色彩の平面作品(どちらかというと工芸的な表情)を手掛けるビコ(近藤)氏。ここ最近は、このシリーズにこだわって、制作を続けている。鑑賞者が自身と対話できるような青い内部空間をもつ球体作品にもトライしている。

関 和明氏は、2019年度まで関東学院大学教授で、歴史建造物や古代エジプトを専門とする学者。近年は北海道の東川町でのプロジェクト、「きたのもりのまなびや」に取り組んでいる。土地の取得は完了しているが、建物の計画案も本人が携わっており、ソフトプログラムの構築も含めて、トライアンドエラーが続いているようである。

細淵太麻紀氏は、今秋、愛媛県の宇和島、元JR 扇形機関庫で個展を開くため、その準備や現地のリサーチを行っている。戦中に建てられた建物活用で、現場の条件は不安定だが、主宰者の将来の構想に期待しているようで、楽しみながら作品制作に取り組んでいる。

長い袖が繋がった衣服等、既製の衣服をリコンストラクションした作品や、ゴミ袋で作った衣服など、衣服の意味や機能を剥奪しながらも衣服の形式を保持する作品をここ数十年、継続的に取り組んでいる窪田久美子氏。会場から「誰に作品を見せたいのか、誰に喜んでもらいたいのかを感じない」と厳しいコメント。たしかに、そろそろ発表という方法で、世に問うてみてもいいかもしれない。

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コンドウビコ

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関 和明

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細淵太麻紀

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窪田久美子 

徐勇展「THIS FACE」個展スタート

7月16日~ 8月16日 @BankART KAIKO

1954年中国上海生まれの写真家 徐勇氏。同氏の代表作に北京の「胡同」を撮影した『胡同101像』や天安門事件(六四天安門事件)を撮った写真集『Negatives』がある。さらに、写真家としての功績だけでなく、中国現代美術の礎となる798芸術区の創始者の一人でもある。

そんな中国の重鎮作家の展覧会がここKAIKOで開催されている。本展は写真集「THIS FACE」をベースにしており、これは2011年1月19日の1日に、実在の娼婦(性工作者)・紫Uの顔だけを連写した約500点の写真で構成されているものだが、本展はその内の450点を展示している。化粧が施されていない素の顔から濃いメイクをした姿まで、あどけない表情から挑発的な視線まで、あらゆる姿の彼女と出会うことになる。

来場者は刻一刻と変わっていく彼女を食い入るように見つめている。

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【展覧会情報】
徐勇展「THIS FACE」

2021年7月16日[金]~8月16日[月] 11:00~19:00
会場:BankART KAIKO(横浜市中区北仲通57-2 北仲BRICK&WHITE 1F)
入場料:700円(64頁小冊子付) 無料(障害者手帳お持ちの方) 
主催:BankART1929  協力:劉檸 海牛子。

BankART AIR 2021 SUMMER アーティストトーク第4回

@BankART Station

■川口眞人
プロジェクションマネージャーとして舞台制作に関わっている。初めに国内外でのこれまでの活動を紹介後、現在取り組まれているKAATでのキッズプログラム「ククノチ テクテク マナツノ ボウケン」の制作秘話を語られた。

_hpy
ARやAIを用いて作品を制作。現在は、脳波センサーを読み取るテクノロジーを用いて制作をしている。また、横浜東急REIホテル(Stationの近く)に_hpy氏の作品が常設展として展示されているようなのでぜひ見に行きたい。

■中屋敷 南
ダンサー・振付家であり、コロナ禍で「ノン・コンタクトワーク」を編み出したという。物理的接触を避けるために演者それぞれが空間と時間をずらして映像を撮影し一つの作品にしていく。今回のレジデンスでは、このシリーズをインスタレーション作品にするため日々励んでいる。

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川口眞人

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_hpy

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中屋敷 南

BankARTAIR 2021 SUMMER アーティストトーク第3回

@BankART Station
■松本恭吾
事前に録画した映像でプレゼン。「影をなくした女の子の話」と題して、横浜郊外の都市空間の中、見えないものを楽しい形で可視化していく絵本制作を試みている。■青木 崇
スケートボードに乗っている動きをイメージした絵を描いたり、スケートボードと都市の関係性を映像や写真で表現。日々のインスピレーションをスタジオで実験している。■山岡瑞子
今回絵画や写真、映像などを駆使し、自身の経験と体験を追走しながら作品を制作している。
前回のプレゼンはこちら
https://bankart1929.com/blog/archives/date/2021/05
■土本亜祐美
回転のぞき絵など、古典アニメーションの表現手法に着目し制作している。今までは、机の上に載るサイズだったが、今回は等身大サイズの作品を制作中とのこと。■アイヴァン・ティンブレル
2014年に来日し、2020年まで鳥取県でイベントの企画や、海のゴミをベースに、音、映像、立体作品など制作をしてきた。2020年に黄金町バザールで展示したピンホールカメラの作品をきっかけに写真表現を中心に活動。好奇心旺盛で、他の入居者たちとも積極的にコミュニケーションをとっている。プレゼでも流暢な日本語で、芸術との出会い、日本での制作状況などを紹介してくれた。
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松本恭吾
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青木 崇
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山岡瑞子
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土本亜祐美
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アイヴァン・ティンブレル
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BankARTAIR 2021 SUMMER アーティストトーク第2回

@BankART Station

■辻 梨絵子
東京藝大出身の彼女は、在学中にスイス、ドイツへ交換留学。またアメリカやフィンランドなどのレジデンスプログラムに参加。海外での制作と活動が多い。ドイツではキオスクに扮したスペースを作り、24時間オープンする店を営業[展示]するなど、異なる文化圏での生活環境や思考の相違などに着目した作品を発表している。今回は、歌謡曲の「ブルーライトヨコハマ」にインスピレーションを受けた作品を手掛けるそうだ。

■宮﨑優花
絵画表面のクラック(ひび割れやマチエール)を自身で派生させた画面作りの平面作品を手掛ける。絵画表現だけでなく、地元の群馬県にある臨江閣(国指定の重要指定文化財)の茶室にて、展示企画なども行なっているとのことだ。今回のAIRでは週末に茨城から横浜に泊まり込みで通い参加している。

■新江千代
布を素材にしたインスタレーションや映像作品を主に発表している作家。前回のAIRでは、幼い時、亡くなった彼女の父の記憶(父が植えた桜の木を抜粋するなど)、不在の存在への記憶に着目した作品を制作した。今回もその記憶との繋がりを再考するとのこと。手放すことや消費されていくなど、失っていく、”もの”や”こと”をどう表現していくのか。

■高久柊馬
2019年横浜美術館の記念展に出展した浅井裕介さんの壁画制作を手伝うことをきっかけに、作家として活動することになったとのこと。トークでは制作するうえでの原動力をお話いただいた。今回は壁一面に大きな平面作品を手掛ける。終日丸ノコでの支持体作業に取り組んでいるのが印象的だ。

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辻 梨絵子

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宮﨑優花

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新江千代

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高久柊馬

BankARTAIR 2021 SUMMER アーティストトーク第1回

@BankART Station

コロナで不透明な現状だが、予約制でのトークを毎週末開催していく。

■片岡純也
フランス、アイスランド、台湾など海外でのレジデンスについての活動をお話しいただいた。台湾では、市場で見つけた乾燥ナマコを使い、なまこのボコボコをオルゴールの歯車としてキネティック作品を手がけた。どの場所でも制作でもツーリストの視点を重要にしているとのこと。

■秋山直子
SPRINGに続き、コーヒー(味覚)と写真(視覚)の表現を追求していくとのこと。焙煎した味に近い写真[風景]の探索、写真[風景]をイメージした焙煎の開発。双方を並行して制作しているとのことだ。

■橋村至星
平面作品を中心に活動している作家。昨今のコロナ禍でみんながマスクしている日常の風景など、日常とそこに潜む違和感を表現している。今回はオフィス街の無人のなか働くパソコンたちなどリモートワークをテーマに制作するとのこと。

■おどるなつこ
過去のAIRに何度も参加している。タップダンスで、パフォーマンスだけでなく福祉とタップダンスをつなげるプロジェクトを立ち上げ、ジャンルを横断し活躍している作家だ。今回は新潟の材木店のご協力のもと無垢一枚板をタップダンスを鳴らす楽器として展開していく。日々アトリエからも素敵な音が響いている。

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片岡純也

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秋山直子

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橋村至星

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おどるなつこ

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