東アジアの夢

夢をみた。
遠い昔に別れてしまった大切な人に会う為に、旅にでる夢をみた。
数百年も、数万キロもいっただろうか?どんなに歩いても、その人はみつからない。国を過ぎ、空と海を超え、戦地をくぐり抜け、干ばつと極貧を往く。夜露の中で眠っていると、祖母のような人がそっと銀色の毛布をかぶせてくれる。坂道が続く道では威厳に満ちた大きな馬に乗った人が何キロも引っ張ってくれた。大切な人にはなかなか会えないけど、たくさんの教えを受け、見知らぬ人の優しさに出会う。
それなのに先を急ごうとするあまり、その人たちの家や畑を壊してしまう。本当はごめんなさいを言いたいのに、ごめんなさいも言えずに、後ろを振り向かないで、走り続ける。道で出会った小さな子どもは、はにかみながら臆病そうにこちらを見ているが、通りすぎたあとの背中に感じるのは、憎悪と哀しみだ。
嫌悪と疲れでピークを迎え、本当に大切な人は誰なのかもわからなくなって、どうしてあのときあやまれなかったのか、どうして「ごめんなさい」と「ありがとう」を……。小さな祠で寝入ってしまう。

夢をみた。
白髪の翁がそっと肩に手をかけ、ささやきはじめる。
少し休んだら、またいきなさい。あなたが探している人は必ず見つかります。
あなたが誠実に一歩一歩、旅を続ければ。

あやまるという言葉には、誤るという意味と謝る(感謝する)という意味があること……。
岩からしみでた冷たい水で夢は覚めた。