【アートラーニング・インタビュー #11】BankART Life7 参加アーティスト・石内 都 by BankART実験広報部

こんにちは!

BankART実験広報部の福谷です。

今回は石内都さんにインタビューさせていただきました!🎤

石内さんの作品「絹の夢 -silk threaded memories」はみなとみらい線馬車道駅の改札を出るとすぐ見えるとっても大きな作品で、繭や糸、着物の写真が展示されています。作品や石内さんについて詳しくご紹介していきます!

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Q.今回の作品について教えてください!

石内:これは絹の夢というシリーズで、以前のBankART Lifeでも展示をやったことがあるんですよ。これは蚕の繭を蒸しているところで、今回は碓氷製糸工場を中心に繭から糸をつくるっていう流れを中心に展示しています。で、できたのがこの絹ですね。(写真を指しながら)こうやって絹糸ができるの。繭はお湯で茹でてぐるぐる回して、糸が取れるでしょ。最後にできたのがあれ。

Q.展示されている写真はなんですか?

石内:こことここ(内側の写真)が、繭から、糸ができる大きな機械です。内側の写真が糸の製造過程のような写真で、外側が銘仙と言いまして、くず繭という普通は捨てちゃう繭なんですけど、それを糸にしてできた着物の写真です。

Q.その銘仙という着物はどれも鮮やかで珍しい柄ですが、どういうものですか?

石内:それの色がすごい綺麗なのはみんな化学染料。日本の着物はちゃんとした繭の糸で、化学染料じゃない普通の草木染めで染めるんだけど、全然違うんですよ。普通はこんな色出ない。銘仙っていうのは安く、女性も買えたんですよ。で長持ちしないから買い換える、それで四億反も織られた。だから日本の伝統的な文化とはちょっと違うね。くずの繭で織って化学染料で染める、日本の伝統的な着物とは真逆な着物。この写真はその着物の一部です。着物は三代百年着れるもの。でも銘仙は一代。すぐ切れちゃう安物だから。そういう意味では自由に買える着物としてすごく人気が出ました。この模様もおかしいでしょ、日本的じゃない。これはみんな西洋のグラフ雑誌か何かで取ってる。これとかこっちも、ありえないよね。この着物なんて家の模様だから(笑)。ロシア・アヴァンギャルドとか、西洋のそういうデザイン的なもの、そこから真似してとったんです。すごくモダンでかっこいい。

Q.シリーズものっておっしゃってましたけど、「絹の夢」はどのような作品なんでしょうか?

石内:私「絹の夢」という写真集を出しているんですよ。上(BankART KAIKO)にもあると思うけど。今ずっと継続してるのは広島で撮っているもので、絹の夢は今は撮っていません。これは実は群馬の桐生でコレクションしていた人がいて、4年ぐらい前かな、火事で着物が全部燃えちゃった。だから写真の中にしかこの着物はない。写真は記録的な意味もすごくあって、私はあんまり記録するって気はないんだけど結果的には記録になってしまったなって。そういうことも含めて銘仙っていう着物は儚いものなんですよ。

Q.普段はどんな作品をつくっていますか?

石内:いま実は私スカジャンをつくってるんですよ。絹の帯と着物で作ってるんです。タンスの肥やしになっているもう着ない着物がもったいないからジャンパーにして、世に送り出すっていう仕事です。私桐生で生まれて横須賀で育ってて、私の個人史がスカジャンと全く似てるわけ。横須賀はスカジャン発祥の地だけど、桐生ではそのスカジャンをつくってたってことがわかったの。そういう非常に個人的な歴史がすごく私にとっては意味がある。横浜と桐生はとっても関係があって、私は横須賀で育ったから、なんか地域というか個人史が関係してて、それで写真を撮ってる。全部関係したものしか撮れないのよ。無関係のものは撮らない。

Q.今回テーマが都市なので、作品と都市の関係とか石内さんにとっての都市を教えてください。

石内:だから今言ったことです。私自身横浜に40年以上住んでて、今桐生っていうとこで、やはり絹の関係、でこのあたりも絹の貿易の場所だったからこの絹自体が横浜という都市に関係があるものでやっぱり歴史があるので。あの、シルクセンター、昔はすごく有名なとこだったんだけど、そこら辺も含めて横浜はとっても絹に関係あるんですよ。そういう意味でBankARTの方でもね、これをお願いしたいということで、今回展示しました。

Q.今後の作品の展示情報などあればお願いします!

石内:桐生の大川美術館というところで夏に個展がありますので、ぜひ見に来てください。

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写真の中の着物には実際に石内さんが今も持有されているものもあるそうで!銘仙について知らなかったこともあり、とても興味深くお話を聞かせてもらいました👘

横浜トリエンナーレの期間中、石内さんの作品のグッズや写真集がBankART KAIKOで開催中の横浜クリエイティブCOOPで購入できます!

@yokohamacreativecoop

石内さんありがとうございました✨

【アートラーニング・インタビュー #10】BankART Life7 参加アーティスト・志田塗装+酒井一吉 by BankART実験広報部


こんにちは。BankART実験広報部の石丸です!
今回は、志田塗装+酒井一吉「Anno Bomb」の作者である、酒井一吉さんにインタビューをさせていただきました!


この作品は絵画のように飾られた外壁の塗膜が不思議な魅力を放っています。どこから来たのか…何かの絵に見えるような…?そんな作品について詳しく教えていただきました!

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Q.今回出展されている作品の事について教えて下さい。

酒井: 今回は、志田塗装+酒井一吉という名義で参加していて、街の中の建物の外壁の塗膜を採取し、それをBankARTStationの壁面に構成している作品になります。

Q.塗膜を剥がす際はどのようにされたのですか?

酒井: 剥離剤という液体を塗装面に塗ると、塗膜の結合が弱くなって壁から浮いてくるので、ヘラのような物で刮ぎとっています。

Q.今回作品にキャンバス地が使われていますが、どのような意味がありますか?

酒井: 技術的な面で言うと、塗膜の厚みによって裏打ちだけで済むものと、キャンバスやパネルといった支持体に定着させないと塗膜が弱く壊れてしまうものがあるので、採取した塗膜の強度によるところが大きいです。

それ以外には、塗装を絵画として提示することによって、塗装工が建物の外壁の色を塗っている=街の中を彩る画家という見方が出来るのではないか、と考えています。
この発想には、横浜が近代塗装発祥の地と言われている歴史と日本洋画の父といわれる高橋由一の存在が大きく関係しています。近代塗装発祥の歴史については諸説ありますが、1854年にペリーが日本に再来航した際にペンキが持ち込まれ、日米和親条約の締結の場となった横浜応接所の外壁を日本人(町田辰五郎)が初めてペンキ塗装したというものや、1856年に神奈川宿の本覚寺がアメリカ領事館として使われた際に、建物をペンキで塗装されてしまったことなどに由来しています。そして、日本の美術史においても横浜は重要な土地で、高橋由一がイギリスからの特派記者として来日していたワーグマンに横浜で西洋画を学んだということは有名な話ですが、当時高橋由一らが西洋画を学んだ目的は、現代の「表現としての絵画」とは異なり、画学局に入局していたことからも物事を正確に記録するための技術、つまり殖産興業に役立つ技術の習得として始まったものでした。英語で表記すると、「絵を描く」も「塗装する」も「painting」と表記されますが、この2つの「oil painting」はもともと日本においては殖産興業という共通の目的を持って始まっています。現在では全く異なる分野として発展し、交わることがないようにみえる「塗装」と「絵画」が、再び交わる地点として志田塗装(の行為)を見ることが出来るのではないかと考えています。

もっと深掘りすると、この作品は「北亜墨利加人本牧鼻ニ切附タル文字ヲ写」という瓦版がモチーフになっています。この瓦版は、ペリーが横浜に滞在していた際に、東京湾を測量していたペリーの船員が本牧の岩壁にペンキで落書きしたという事件を伝えるものです。この作品はいろいろな場所から採取した塗膜(グラフィティの断片)をコラージュして、瓦版に描かれている岩壁の落書きを模して描いています。
その岩壁の落書きを日本におけるグラフィティの最も古い記録と捉えてみると面白い世界線が見えてくるんじゃないかと考えていて、そこから横浜を塗装・絵画・グラフィティの3つの爆心地と捉えタイトルを「Anno Bomb」にしました。

Q.この作品における、塗装とグラフィティの繋がりについて聞かせてください。

酒井: 志田塗装は、街中の塗膜を「剥がす」という行為をしていて、剥がした作品と対になる「塗膜を剥がされた壁」が街中に存在します。グラフィティにはオーバー(ゴーイング・オーバー)という考え方があり、ある基準を満たせば人が書いたものに上書き出来るというストリート独自のルールがあります。志田塗装の行為は、「剥がす」という壁面上では物質的にマイナスにする行為ですが、図としては一番上のレイヤーに見えてくるという反転が起きていて、街中にある「塗膜を剥がされた壁」が志田塗装のオーバーになっているとも言えます。
また、グラフィティの語源は、イタリア語の「graffio」や「graffito」からきていると言われていて、「引っかく、引っかれたもの」「壁や石板に刻み込まれた」などの意味があります。このことから、志田塗装の「剥がす」という行為がグラフィティの語源により近い行為なのではないかとも思っています。

Q.酒井さんは普段からグラフィティを扱った作品が多いのでしょうか?

酒井: 僕は普段、自分自身の生と繋がっている歴史や場所について考え制作しています。日々何が生まれ何が失われていているのか、場が生まれることも含め何かを残すということはどういうことなのかをメディアに縛られる事なく考えていきたいと思っています。志田塗装の作品は、日々オーバーされ変化していく都市の皮膜をアーカイブする試みとして塗装やグラフィティを扱っています。また、会場のBankART Stationは、名前の通り地下鉄の新高島駅に直結していますが、1970年代にグラフィティが流行したその舞台がNYの地下鉄である事にも重なり、会場であるBankART Stationの壁面にBomb(グラフィティを書く)して見えるように構成しています。



Q.最後に「志田塗装」という塗装会社について教えてください。

酒井: 志田塗装は、伊勢佐木町にある伊勢佐木町センタービルという築70年くらいの雑居ビルの3階に事務所があります。創業1874年の老舗の塗装屋ということになっていますが、真相について説明するのも面白くないので、Webサイト等もありますので是非皆さんの方で調べてみてください。どこからが事実でどこからが作品なのか、そのことも含めて鑑賞体験だと思っています。

志田塗装ウェブサイト https://shida-toso.com

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会期中の毎週土日は、関内地区にある伊勢佐木町センタービルでも志田塗装+酒井一吉「hallucination」の展示が行われています。あわせて是非ご観覧ください。

会場:志田塗装(横浜市中区長者町7-112 伊勢佐木町センタービル3F) 時間:14:00-18:00



【アートラーニング・インタビュー #9】BankART Life7 参加アーティスト・中谷ミチコ by BankART実験広報部

こんにちは、BankART実験広報部のJUNGです!

今回はBankART Life7期間中、ぷかりさん橋を舞台に展示している作家さんにインタビューさせていただきました!

コロナ禍の中で石川県珠洲市の住民達と協力し合ってつくられた、中谷ミチコさんの作品「すくう、すくう、すくう」を、リアリティを自分の元に手繰り寄せようとした話などを一緒に紹介していきたいと思います!

Q. 簡単な自己紹介からお願いします。

中谷: こんにちは、中谷ミチコです。彫刻家として活動しています。

Q. 普段どのような作品をつくっていますか?

中谷: 彫刻をつくっています。立体作品なんですが、2次元と3次元の間を行き来するような彫刻がつくりたいと思って制作しています。

Q. 今回の作品のコンセプトは何ですか?

中谷:この展示は、2021年に石川県珠洲市で開催された奥能登国際芸術祭で発表した作品の再構成です。当時はコロナ禍の真っ只中で、どのうようにすればリアリティを自分の元に手繰り寄せることができるか、考えながら制作した作品です。今回は6点の彫刻作品から構成されていますが、元は20点の彫刻で成り立っていました。展示場所になった飯田町の住民の方に協力していただいて、手の写真を送っていただきました。地域間の移動の自粛を求められていた時期だったので、現地に行ってリサーチするよりも、その方が自然に感じられたのです。水をすくう手のポーズをしてもらって、それを写真に撮っていただき、三重県の自宅の方に送っていただいたデータを元に粘土で形を作り、石膏で型取りして、その雌型に透明樹脂を流し込んであります。見る人は透明樹脂の内側から手の表側を見る形になっています。なかなか説明するのが難しいのですが、遠方に確実にいる誰かの手っていうものを、粘土で形作ることで自分の元に手繰り寄せて、それを反転させて彫刻作品にしました。

Q. 「水をすくう」手の形にした特別な理由はありますか

中谷: このタイトルが「すくう、すくう、すくう」というひらがなの三つの「すくう」が並んだタイトルになっています。一つ目のすくうが、水を「掬う」から来ています。二つ目のすくうが、何かを助ける救済の意味での「救う」で、三つ目が鳥の巣に食べるの「巣食う」。­コロナ禍で自分が感じていた色んな意味が反転するような、一つの音であるのに意味が変化し続ける、反転の意味が込められているタイトルです。コロナ禍によく手を洗ったんですね。手を洗う時、一番最初の水を掬う仕草、多分古代からおこなわれていた普遍的な仕草を現地の人達にそれぞれにしてもらうと、手の組み方はそれぞれ全然違っている。その違いの隅々を全部読み取りたかったんです。丁寧に遠方の他者の気配に接することができるような、沢山の意味が含まれている仕草をつくりたかった。

Q. 今回の作品を通じて観客に伝えたいメッセージがありますか?

中谷: 彫刻の変わらない形の中に綴じ込められていて、見方によってそれがまったく反転してしまうとか、そういうものを読み取ってもらいたいです。それからここはすごくぼんやりできる場所なので、遠くの方に思いを馳せるような機会になったらいいなと思っています。また、2024年のお正月に奥能登の震災が起きました。過去の作品であるけど、震災を乗り越えてこの時期に展示することで何か、意味が生まれるのではないかと思っています。

Q. ­ぷかりさん橋にこの作品を展示しようとした理由がありますか?

中谷: ここでやってと言われたからという理由もありますけど(笑)ここって、海の上に浮いていて、常に揺れていますよね。意識を変えてみた時に、ふっとこの揺れが自分の身体の揺れか、この建物の揺れか分からなくなりました。そういうところがすごく面白いなと思っていました。彫刻をつくる上で強固な地面みたいなものが自分の中で大前提とされ過ぎていたんだなと驚くと同時に、そういう条件みたいなものを覆されて面白いような難しような感じがしています。

Q. 立ち入り禁止の線をビーズにした理由がありますか?

中谷: ここは基本的に無人で監視の人もいないし無料で入れます。安全性も加味してインスタレーションの中は立ち入りできない形で展示をすることになりました。そのため柵を設置しなくてはいけなくなったのですが、観客に対して拒否、拒絶ではない、できる限り和らげた形の境界線を作りたいと思って、子供と一緒にビーズを通したんです。立ち入りできない。だけど強く跳ね返さないような柔らかさ。後は、海と反響するような光になったらいいなと思ってビーズで制作しました。

Q. 作品をつくる時の自分なりのこだわりがありますか?

中谷: 丁寧につくること。物を丁寧につくれているのかを作品を完成させる最後まで自問自答し続けることがこだわりかもしれないですね。

Q. 作品の色味が薄い感じがしますが、その理由はありますか?

中谷: 彫刻のマテリアルの温度から人間の温度になるようにちょっとだけの朱色、オレンジがかかった赤みたいな色を着彩しています。

Q. 次の展覧会の情報や今後の計画があったら教えてください。

中谷: 今はちょっとまだふわっとしています。来年ぐらいにまた新しい作品を発表できるように頑張っています。

今回の作品は購入ができ、収益は能登半島地震義援金として珠洲市に寄付・返還する予定であるそうです。「すくう、すくう、すくう 2024」(「掬う、救う、巣食う」プロジェクトの詳細はこちらから確認できます!

https://www.michikonakatani.com/複製-drawings

テキスト・写真・動画:JUNG

【アートラーニング・インタビュー #8】BankART Life7 参加アーティスト・婦木加奈子 by BankART実験広報部

こんにちは!BankART実験広報部の福谷です。

今回はLife7出展作家さんの婦木加奈子さんにインタビューです!🎤

婦木さんの「洗濯物の彫刻」という作品は洗濯物もハンガーもグレー1色。設営時も一番会場に足を運んで作品を作られていた婦木さんの魅力を伝えていきます!👇

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Q.今回の作品について教えてもらえますか?

婦木:これは柔らかいものを外側からテグスでギュッて引っ張って形にしているっていう作品で、展示されている空間の中で柱とか壁とか天井の構造と物理的に繋ぎ合わせて形を保てる彫刻みたいなのを作れないかなと思って作りました。洗濯物をモチーフにしてるんですけど、洗濯物って街を歩いててどこでも目に入るというか、そこで暮らしてる人がいたらそこに立ち現れてる風景という感じがして、日々生活する中で現れてしまわれてまた現れてまたしまわれて繰り返し立ち現れる風景だなって思って。そういう洗濯物みたいに、展示されている空間の中でだけ現れる形みたいなものを考えて作った作品です。

Q.この繋いでいるテグスはわざと見せてる感じですか?

婦木:そうですね。ぷらっと展示室に入ってきたときに「あ、洗濯物が干されてるな」ってまず目に入って、近くに来ると「あ、テグスでめっちゃ引っ張られてるんだな」っていうのが後から見えてくるといいなみたいな。

Q.テグスが結構不規則に垂れていたりとかくるくるしてるのがあると思うんですけど、それもわざとですか?

婦木:なんかライブ感というか、実際にここに物を持ってきて作業していく中で形ができていて、これはこう引っ張れそうかなとかその場で作った痕跡みたいなのを残しておけたらなと思って。

Q.彫刻の色が全部グレーなのは意味がありますか?

婦木:洗濯物の風景を一つの形として見えるように現せたらいいなって思っていて、ものとしてはバラバラなんだけど、全体では一個の塊みたいに見えたらいいなと。この洗濯物の彫刻っていうのはだんだんステップアップしている作品で、元になる作品があって展示するのは今回が3回目ぐらいで展示される場所によっていろいろ要素を変えたりしているんですけど、かかっているものが本当の洗濯物だったときもあって、そうなるとまた別の意味になってくる感じもあって。今回は都市の中の一個の風景として全体に現せたらいいなと思ってグレー1色にしました。

Q.今回の洗濯物は全部婦木さんが作ったものですか?

婦木:これ(Tシャツ)は作ったもので、本物の洗濯物もちょっとあったりします。本物の洗濯物があることで日常の知ってる風景にぐっと近づく部分もあれば、洗濯物の形をトレースした偽物の部分、表象をなぞっている作り物の部分もあることで、現実の世界と作り物の世界を行き来するような駆け引きみたいなのをちょっと入れてみました。

Q.ハンガーとか洗濯バサミも全部作ったものですか?

婦木:はい、全部手で縫ってふにゃふにゃなんですよ。本当は触ってもらうと良く分かるんですけど。やっぱり見るだけだと針金が入ってるみたいに見えて、でも実際は全部ふにゃふにゃ。でも触ってOKですって言って色々外れちゃうと怖いので(笑)。もし触ってもいいですか?って聞かれたら優しく触ってください!って気持ちです。

Q.今回のテーマが都市なので、婦木さんにとっての都市について聞かせてください。

婦木:ちょっと逸れながら話す感じになってしまうかもしれないんですが、私決まったスタジオとか持っていなくて。レジデンスに参加してその先で期間限定のスタジオに入ったりとか、製作期間に裏の倉庫の中にいさせてもらって制作したりとか、定住の場所をあんまり持っていなくって。住む場所も製作する場所も入れ替わりながら制作活動をしていて、それに作品の形態がついてきてる感じがあって、大きい形があるものを物理的に持っておけないからこそこういう柔らかい小さくたためて展示のたびに形を変えられる作品形態になっていったりとか、自分が都市に棲んでいるっていうことが作品の形態や質感とか制作の技法に表れている感じがしています。今回のテーマの「再び都市に棲む」の棲むも棲みつくの棲むじゃないですか。いろんな都市の中の限られた制約のある場所へ自分の生活とか制作の方法の形を変えながら、そこの場所に収められるように変えていっている感じがあって、それが棲むっていう言葉とちょっと通ずる気がしています。都市ごとに自分自身が形を変えていくみたいな。この作品も展示される場所の中にある要素によって繋がれ方が変わっていく作品なので、都市に棲むというテーマに合うんじゃないかなって。私にとって都市って、限られたスペースの中にいかに棲み着くかみたいな、なんかそういう感じがします。

Q.最後に今後の展示の情報とかあれば!

婦木:7月の31日から1ヶ月ぐらい、京都芸術センターで丸山のどかさんというアーティストさんと2人展があります。ぜひ来てください!

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婦木さんはなんとBankARTのスタッフに大学の後輩がいたそうで😲

たまたまここで再会したみたいです✨雑談もたくさんしてくださって楽しかったです!

婦木さんの作品情報はこちらから見ることができます!👉@kanakofuki

婦木さんありがとうございました😊

【アートラーニング・インタビュー #7】BankART Life7 参加アーティスト・片岡純也+岩竹理恵 Part 1 by BankART実験広報部

こんにちは。BankART実験広報部の傳田です。今回はLife7に展示されている、片岡純也+岩竹理恵「新陳代謝のある都市の風景」の作者の1人である岩竹理恵さんにインタビューさせていただきました。

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この作品の動きと音、そしてコラージュされた都市の様子にはずっと見入ってしまいます。岩竹さんはどのような思いで制作をしているのでしょうか。まず作品のモチーフである伊勢佐木町について聞いてみました。

__伊勢佐木町というのは、どこにあるのですか?

岩竹:場所は桜木町と関内駅の間あたりですかね。歴史で言えば、横浜といえば桜木町っていう感じだと思うんですけど、、、この辺は港が開港して、町ができて、その後に大震災と大空襲があって。で、その後アメリカになっちゃったんです。

__えー!アメリカになっちゃったんですか!

岩竹:はい。日本人入れない、みたいな。それで、戦後は日本に戻ってきて復興して、華やかな町になったんです。でも今横浜って人通りは多いんですけど、中心が移動しちゃってたりとかして。結構、波のある町ですね。

__じゃあ、結構最近の建物が多いんですかね?

岩竹:そうですね、馬車道あたりと比べると戦後の建築が多いですね。本当に人が、生活してきた場所です。だから今回は、その横浜っていう華やかな町のイメージというよりかは、”生活感のある町”。で、自分と本当に接触していて体感的に感じているような”身の回り”っていうものを扱いました。

__作品に身の回りのものを使っているから、なんだかそれがすごく伝わります。

岩竹:”身の回り”は、身の回りにあるから見てみて気になって、その形の特徴や物理的な現象からイメージが湧いて、そのアイデアを作品化してますね。結構、その素材の形の特徴をどうアウト プットするか、ということを考えています。

__いつも片岡さんと2人で作ったり展示したりしているのですか?

岩竹:いつも、、じゃないですけど結構多いですね。まあ、8割くらいかな。夫婦なので。

__あ!ご夫婦なのですね。

岩竹:そうそう。生活が一緒なので、見てるものとかのことをなんか話し合ったり。でもやっぱりまあ、気になる点はズレがありますよね。私は平面に関心があって、彼は動きに関心がある。彼はどうしたらどう動くか、というふうに物を捉えてて、私はこの3Dというか、立体的な自分がいる環境を平面に起こすときにどんなことが起こるのかってところに関心が高めです。

__それが組み合わさっているのがすごくいいですよね。

岩竹:それぞれ作って組み合わせてみるっていうやり方なんですけど、うん、なんか意外と合うんですよね。

__作品に使っている物たちはどのように選んでいるのですか?

岩竹:私たちは2人とも、元々の役割は無視して物として見直すっていうことが多いです。新聞は鳥とかが見たら確実に巣の材料に、、笑

__私は学校とかで、使う素材に対して意味を求められることがあって悩んでいて、、、

作品を見るときにも、たとえばこれが瓶であるということに意味があるのかなとか考えてしまいます。

岩竹:現代の美術に求められがちですけど、私たちは形の特徴から発想します。でもこれを抽象的な形にするとまた、作品のバランスが違くなる。やっぱり、使われてて社会的な背景があるゆえの背景をとっぱらってる、というところがおもしろいかなと思います。というより、使いやすいから最初は使ってますね。それが物理的な実験として新しく抽象的な形を作る、ということではないですが。

このトンカチは瓶が乗ると立つんですけど、でもその理由が聞いてもだからおもしろいというわけでもないし、なんかその理由がおもしろいってことでもないですよね。

結局、コンセプトを出す段階で身の回りのことや、世の中のこととその目の前のことの関係性を探したり考えたりしてみるという感じですかね。

作ってるうちに自分が実際に物を使ってみるとうまくいかないことがあって、そこをクリアするためにまた物理的な関係性を考えたりすることが、クリエイティブなのかなと思っています。

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作品の細部についてもお聞きしました。

__この、ところどころに置いてある立体物はなんでしょうか?

岩竹:これは(写真のトンカチのような形の物)たとえば、新聞紙でできていて、、

__えっこれ新聞紙なんですか!?本当だ、少し面影がある!

岩竹:そうなんです。持ってみていただくとーー

__あ!軽い

岩竹:新聞の写真とかを貼って、削り出して。

絵画的な感覚で私はこういうのを作っていますね。見たものを映し取って置き換えるっていう造形行為が、絵画的かなと思っているので、、立体的なコラージュのようなものですね。

それでいうとその上のものも感覚が近くて、これは紙を丸めたものに、アクリル絵の具でその紙のシワを絵の具で辿って形を辿るっていうことをしています。素材としても紙にアクリル絵の具という、ペインティングなんですけど”形を辿るっていう行為”ですね。

__岩竹さんは紙をたくさん使われてますね。

岩竹:そうですね。このへんはまさに身の回りの日々の紙ですね。こういう身の回りの工業製品で何かこう、街の景色のようなものを描いてるんですけど、机の上で見る工業製品の素材も、その時代の街レベルの風景とか情景とかそういう感覚が表れるんだなって、やってみて思いまし た。

これ、(コラージュ作品の一部)使い捨てカイロのゴミだったものなんですけど、この”貼る”というのがコラージュとかかってる、とか。その辺は材料とのたまたまの出会いでやっています。たまたまあった包装物の文字や形を、電柱に見立てたり、雨戸のようなものに見立てたり。文字情報とイメージがバランスよくなるように、でも文字を読んだ時のそのイメージのこの行ったり来たり感とか、、、、

今、戦後のモダニズム建築が表面が剥がれてきて、ポストモダニズムの街、っていうのとコラージュっていうのが、ちょうどモチーフと技法が合ってたな、とやりながら思いました。

__この波の画像のようなものは?

岩竹:これは、海の表面の写真を分割してその網点の大きさを変えてるんです。離れて薄目で見ると写真のような画像に見えて、近づくと紙とドットに還元されてしまうというのが、印象派のような対象と距離との問題を扱ってます。全体のバランスや横浜のイメージとかを考えた時に置きたいなと思って。

__横浜といえば海のイメージがあります。

岩竹:横浜といえば、海があるからできた街、ですからね。

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岩竹さん、ありがとうございました!形を辿るだけでなく、都市のバックグラウンドも辿っていると感じました。機会があればぜひ片岡さんにもお話を聞いてみたいです。

BankART Station での展示に加え、オリマツ中央市場店でもお2人の作品を見ることができるので是非チェックしてみてください。

※特別に作品に触らせて頂きましたが、会期中はお手を触れずにご覧ください。

片岡純也+岩竹理恵の作品や情報はこちらから→https://kataoka-iwatake.tank.jp

テキスト・写真:傳田

【アートラーニング・インタビュー #6】BankART Life7 参加アーティスト・電子音響ピープル・柴山拓郎 by BankART実験広報部

こんにちは福谷です。

またまた作家さんにインタビューさせてもらいました!

今回はLife7唯一のサウンドアート作品「Imaginary Sphere 2024」を作られた電子音響ピープルの柴山拓郎さんにお話を伺いました。作品や電子音響ピープルについて紹介できればと思います!

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Q.作家活動名について教えてください

柴山:作家活動名は電子音響ピープルプロジェクトと言います。ここではアーティスト名を電子音響ピープルと記載させていただいています。これは参加型のプロジェクトアートです。

Q.柴山さんお一人で電子音響ピープルなんですか?

柴山:このプロジェクトに関わったアーティストや参加者も含めて全員まとめて電子音響ピープル、という、アーティスト名として使っています。

Q.今回の作品はどんな作品ですか?

柴山:このインスタレーション作品は、去年実施したワークショップの参加者の皆さんの音からできています。ワークショップでは参加者の皆さんがお家から持ってきたものを使って音を録音して、それをコンピュータを使って切り貼りして作るんですが、ちょっとヘンテコな音楽なので、多くの人々はそれを音楽として楽しめないことが多いんですが、作ってるうちにみんな何か楽しくなってくるというプロセスも作品の一部です。ワークショップの後には、講師を務めたプロの作曲家が皆さんの作品をまとめて全部で8曲の新作ができまして、それを2月のライブで上演しました。その後でワークショップの音を使ってみんなのサウンドインスタレーション作品として完成させたのが、この作品です。私はこれのプログラムを組んだだけで、鳴っている音は参加者皆さんの音です。誰の作品だかよくわからない作品になっているところが表現の柱です。

Q.音自体は何の音が使われているんですか?

柴山:色々あります。参加者の皆さんがお家から持ってきたものなので、例えば下敷きとか筆記用具とか、調理器具とか、ちょっと忘れちゃいましたけど空き缶とか瓶などもありました。野球の応援をするメガホンを持ってきてた方もいました。

Q.普段はどんな作品を作られてるんですか?

柴山:私自身は電子音響音楽をコアにした音楽作品とか、こういうインスタレーション作品を作ってます。最近の軸足を、自分の作品を作るのではなく、みんなで作って楽しんだ方がいいかなと思って、こういう社会実戦に置いています。仲間外れがいない方がいいと思うんです。最近の音楽界隈にしろアートにしろ、ある意味かなりコンペクティブになってしまって、一人のヒーローが誕生するために千人の屍が必要だったりするのではないような世界ができるといいなっと考えています。

Q.過去の代表作とかありますか?

柴山:この作品のプログラム画面には2024年って書いてあるんですけど、元になっているこのプログラムは、2017年から2018年にかけてドイツのZKMで作ってきました。今回は画面に、ワークショップに関わった全ての皆さんのお名前が記載されています。こういった作品が、活動の代表作という位置づけになりますが、並行して、ライブも含めて、全体の流れを作品にすることを目指しています。参加型プロジェクトは活動自体が作品だと思います。ですので、ワークショップも、ライブも、このサウンドインスタレーションもその一部であるといえます。

Q.今回のテーマが都市だと思うんですけど、柴山さんにとっての都市とは?

柴山:都市や街には、目に見えないレイヤーがいくつもあると思います。地図で見えてる部分は表面だし、街の風景として見てるのも表面だし。そこにはいろんな人が住んでいて、いろんな仕事の人とかいろんな国籍の人がいて、みんながそこで動いてるんだけど、そういう全体を可視化することってできないじゃないですか。同じようにアートについても、レイヤーがあって、例えばそれを作り出す人と、それを楽しむ人が別々のレイヤーに分かれてるんですよね。BankARTとか美術館はそういう人たちが一緒に集うインターフェースと捉えることもできると思います。私達の活動は、都市の中に住んでいる、アートを作る人も、それを好きで観る人も、普段別々に棲んでいるレイヤーをかき混ぜながら、みんなが少しずつ気づいたら、作る人側に近づいていみませんか、トイ提案をしている活動が電子音響ピープルプロジェクトです。この作品も今まであんまり音楽なんか作ったことがなかったよ、という皆さんが「作ってみた」結果と、皆さんが棲むむ街の音が重なって鳴り響いているという構成になっています。

Q.今後の活動の情報などあれば!

柴山:今年の今後の活動は、ストックホルムとドイツとフランスでワークショップをやります。ストックホルムは6月で、ドイツが7月でフランスが8月です。そのワークショップでまたみんなで電子音響音楽を作って、プロとの協働制作作品を6作品完成させて、ドイツで9月に公演をやることになっています。この公演は、日本で協働制作した作品も上演する大きなイベントです。そのあと10月には、今度はヨーロッパで協働制作された作品を日本に持ってきて、ゲー下インスティテュート東京でライブとシンポジウムと展示をします。2024年は活動メインの年間計画で、2025年にはそれらをアーカイブ化する予定です。よろしくお願いします。

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柴山さんは東京電機大学の先生でもあり、インタビュー時間外で大学のお話や機械の詳しいお話も聞かせてもらいました!とてもためになりました

柴山さんと電子音響ピープルの活動情報はこちらから

・柴山さん

https://m.facebook.com/takuro.shibayama.14?mibextid=LQQJ4d

・電子音響ピープル

https://www.facebook.com/denshionkyopeople?mibextid=LQQJ4d

柴山さんありがとうございました!福谷

【アートラーニング・インタビュー #5】BankART Life7 参加アーティスト・キム・ガウン by BankART実験広報部

↑絵本「君は僕のプレゼント!」を持つガウンさん

こんにちは、BankART実験広報部のJUNGです!

今回は韓国からいらっしゃった作家さんにインタビューさせていただきました!

キム・ガウンさんは今回BankARTとのプロジェクトで神奈川公園の70mの壁にペン画を描く予定であります!キムさんの制作を楽しみにしながら作品を中心に紹介していきたいと思います!

Q. 簡単な自己紹介お願いします。

キム: 5年前から横浜を拠点にアート活動をしている。韓国人アーテストキム・ガウンと申します。クマとウサギの旅という形でペン画作品を作っています。

Q. 普段どのような作品を作っていますか?

キム: 基本なんでもペン画から始まります。例えば、細かい作業を必要とする絵本製作からアニメーション、そして壁画やパブリックアートのような大きいスケールの作品まで作っています。特に最近はパブリックアートプロジェクトと共にイベントやワークショップを取り組みながら観客の共感を求めるアート活動に楽しさを感じています。

クマとウサギアクリルキーホルダー

7.5mx5.5m作品「杜甫の記憶」、中国成都、2023

Q. ペン画に興味を持つようになった理由がありますか?

キム:独学で絵を描いてますが、10年前ごろ母の看病をしながら家の中で過ごす時間が長かった時期に、身近にある紙とペンで絵を描き始めたのがきっかけでした。つまり表現活動を始めた時の環境から自然と選ぶようになったと思います。

Q. 作品に出てくる動物にはそれぞれの意味がありますか?

キム: 何となく昔からクマとウサギっていう決まりがあった訳ではないですけど、一応動物が好きで、見た目がどう見ても対立している(違う、異なる)のが明確に見えるものをずっとイメージしてきました。弱くて小さな存在、あとは、デカくて強い存在っていうのを最初はあまり明確にはしてなかったですけど、それがクマとウサギの形にだんだんなってきました。

Q. 今回作る作品のコンセプトは何ですか?

キム: 今回BankARTとのプロジェクトでは、神奈川公園の70mの壁面に作品を描くことになって、タイトルは英語だと「Dreamers」、夢を描く人たちと言います。公園に通ってくださる地元の方々、子供から大人まで、私が絵を描く過程を眺めてくださることによって、絵を見てそこに想像を加えて自分なりの色々な夢を見てもらいたいという願いを込めて、クマとウサギの旅をその公園で生かせる作品にしたいと思っています。

Q. 今回の作品を通じて観客に伝えたいメッセージはありますか?

キム: パブリックアートとしてみんなに通ってもらう場所に描く作品である分、何となくその絵を見てとにかく何かを感じてもらいたいなーと思っていますね。もう少しアートという言葉を使うよりも身近な存在として自分の日常に関わったほんの少しの喜びとして捉えてもらえたら、私が求めていることが叶うのではないのかなという希望があります。

Q. 白黒で描く理由がありますか?

キム: 最初にペンという材料から絵を描き始めたのがやはり大きなきっかけではありますけど、その白黒の世界の中で色んな表現ができると思っています。やればやるほど無限の可能性が出て来て、そこに色を加えてしまうとあまりにも選択肢が多くなって、私にはむしろ道に迷ってしまいそうな感じですね。私は白黒の世界でほとんど遊んでいますが、それが必ず色を入れちゃいけない訳ではないです。その中で自分の意味を与えたいところ、納得いくところがあれば、色を入れたりする作業をしています。

Q. イタリアと日本で活動するようになったきっかけは何ですか?

キム: ひたすら自分が好きと思われるような場所から色々自分のアートを生かしたい気持ちがありました。イタリアで若い頃にイタリア語を学んだ経験もあって、好きな国で何かをやりたかったのが基本ですね。

Q. 次の展覧会の情報や今後の計画があれば教えてください。

キム: 今回のBankARTの「Dreamers」プロジェクトは、ただ私が絵を描いて終わりではなくて、巨大な壁画を描いていくうちに、地元の方やボランティアの学生や小学校の学生達を招いて、協力してくれる関係者の家族まで、色んな人と関わってワークショップを行ったり、ダンスパフォーマンスもそこでやったりする長期プロジェクトを考えています。後は、もう少し先なんですけど、絵本も日本で出版する予定があって、それも同時進行で準備しています。

キムさんの作品や情報はこちらでみることができます! – https://gaeun-art.com/

Instagram – https://www.instagram.com/gaeunart/

テキスト・写真:JUNG

【アートラーニング・インタビュー #4】BankART Life7 参加アーティスト・吉田山 by BankART実験広報部

こんにちは、BankART実験広報部のJUNGです!

今回はLife7出展作家の吉田山さんにインタビューさせていただきました。

都市にも遺伝子があるとしたらどのように抽出できるのかを問いとして、新しい地図を考える吉田山さんと、その考えによって作られた作品について紹介していきたいと思います!

Q.簡単な自己紹介お願いします。

吉田: こんにちは、東京を拠点にキュレーションやアートプロジェクト、アート作品の発表などしています。吉田山という名前で活動しています。

Q.今回の作品はどのように作っていますか?

吉田:いろんなことをしていますが、会期中には等身大ぐらいのB0サイズぐらいの木版画地図を手刷りでプリントしていたり、そのための什器展示や蒸留ツアーもしています。

Q.今回の作品のコンセプトはなんですか?

吉田:  BankARTさんから話が来た時に、展示のテーマがUrbanNestingということだったり、新しい地図という話を聞いて、その二つを軸に作品のコンセプトを考えて作りました。

日常でも都市に住んでまして、都市に対しては、さまざまなものが流動的であたかも生物のように日々変形していき、景色が変わっていくのが面白いと思っていました。そこで、都市にも哺乳類のようにシンプルなDNA構造体があるのかもしれないという、SF的な空想をコンセプトの中心としました。今回は横浜ですけど、様々な都市に対しての話をしたいなと思いました。遺伝子のようにすごく基本的な構造を何かビジュアルで表現できたら面白いなって思って、今回の作品を考えてきました。

Q.色々な都市を行き来していますか?

吉田: そうですね、去年もニューヨークやイスタンブールに行って、それぞれの独特な風土、風景、立ち上がってきた歴史や建築物があったりして、どこも異なっていて面白いなと思いました。横浜もそれにおとらずな歴史もいっぱいあって、山を削り埋め立てられた今はもうない横長の浜が横浜の名前の由来だったり。今回の地図は地形にフォーカスしたものになっていて、手に持って動き回る地図ではなくてどこにも行けない地図という、ただ単に眺めるための地図ですね。元々地図っていうものが侵略だったり、戦争のために細かく作り込まれて、それを我々はGoogleマップだったりで、日々ありがたく無料で使わせてもらっているということを考えた時に、個人的なアート作品として地図を扱う場合はそういう機能性は一切取り外していこうと思って、都市内の目的地を的確に巡るっていうことではなくて、概念や想像で都市を巡るようなものを考えてみました。

Q.特に印象に残っている都市はありますか?

吉田: このプロジェクト自体は今回初めてですけど、よく仕事で熱海に行くんですけど、海と山がすごく小さい街にコンパクトにまとまってるのが面白いなと思っています。まあ、イスタンブールもそんな感じだったんですけど、やはりそういう起伏のあるところに惹かれますね。海と都市が連続してる場所で、さらにその奥に山が立ち上がってきたらかなり面白いなと思ってます。ま、横浜もそういう場所ですね。

Q.韓国に行ったことはありますか?

吉田: 韓国は釜山に行ったことがあります。道路がそのまま海から見えて、車で飛び込んでいけるような風景があったり、10年前ぐらいなのでちゃんと覚えてないんですけど、日本からすごい近いのにまた違う、東京よりは大阪側の雰囲気に似ているかなと思い出しました。

Q.作品にあるアクリル板はどういう意味ですか?

吉田: この作品地図は横浜のバンカートステーション中心の5km半径の地図で、それに対応する山側の、等高線、みなとみらいなどの地形をアクリル板で表わしています。

Q.今回の作品を通じて観客に伝えたいメッセージはありますか?

吉田: 今回のプロジェクトは色んな人と連携しています。この什器は木雨家具製作所さんに作ってもらって、地図の部分編集で西山萌さんに関わってもらってます。その他にも色々細かいところを色んな方に関わってもらったのですけど、最終的に木版画で刷るっていうのが、単純に見せるだけのパフォーマンスではなくて、作品のタイトルにも入っていますけど、流通させようと思って、今本屋さんとかいろんなところに卸し始めて、置いてもらってます。

色んな人に買ってもらって、家に持ち帰ってもらうようにしています。

プリント数を100部としていて、この今回抽出した都市を100分の1に切り分けて色んな人の家に流通するっていうのが面白いと思っていますね。

後、ISBNという国際基準の図書コードを付けてもいます、国立国会図書館にも納本してきたので、この地図作品自体が国にアーカイブされている状態になっています。都市を抽出して制作した作品を再度都市のインフラやシステムを使いつつ流通していくという、結構ダイナミックな関係を作っていて限界美術のようなものでもあると思っていますし、この作品自体が都市に根付く雑草の根っこみたいで、いずれでかい木に成ればいいなと思いながら自分自身は木版画でこれらを刷っています。

Q.木版での手刷りをずっと取り扱っていくつもりですか?

吉田: そうですね、すごい大変で結構つらいですけど、やはりつらいっていうのが重要だなと思っていますね。自分の体で一日プリントして疲労して次第に何も考えられなくなる、このような労働感覚が結構大事だと思っています。この方法は効率は異常に悪いし、この資本主義のシステム的には正直やらなくてもいい行為ですけど、でもこの労働とアイディアを作り出す資本家が折り合わさっている作品制作のプロセスは、僕の中での喜びとして今回大切にしたいと思ったことであるから、引き受けるべき大変さだなって思っています。手作業や身体的な労働や現場感は大切にしていきたいので、このようなことは続けていくと思います。

Q.次の展覧会の情報や今後の計画があったら教えてください。

吉田: ちょうど来月に神津島っていう東京の離れた島で、アートのツアー企画を作っているので、ぜひ来てもらいたいなと思っています。後は、色々常に活動している状態になっています。

テキスト・写真 ・動画:JUNG

【アートラーニング・インタビュー #3】BankART Life7 参加アーティスト・磯崎道佳 by BankART実験広報部

こんにちは、BankART実験広報部の鄧です、今回は北海道に住んでいるアーティスト、磯崎道佳さんにインタビューさせていただきました。

磯崎さんの作品「机は昼にテーブルになった – smile on the table」という作品は展示されています。作品のコンセプトなどを中心に紹介していきたいと思います!

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Q.自己紹介お願いします

磯崎:磯崎道佳と言います、アーティストです。今北海道のニセコ町というところに住んでいます。BankARTが立ち上がる前から、亡くなった前代表の池田さんが企画する展覧会に呼ばれたり、一緒にプロジェクトもやったりしていました。

Q.今回展示している作品について教えてください。

磯崎:BankARTでおこなわれているパブリックアートテーブルというプロジェクトの作品ですが、学校の机を集めて、この地域に住んでる人の顔をテーブルに彫り込んだ作品です。来た人がそこにある笑顔を擦って持ち帰ることができる、というプロジェクトを展開して、今はBankARTステーションの方に展示しています。

Q.なぜこの作品をつくったのですか?

磯崎:学校で、みんなが個人で使ってる机が、お昼休みとか休み時間になるとその机が集まってテーブルに変わるっていう瞬間がすごい好きで、それは僕にとっては一番オープンな場所に思えたんです。みんな食べながらワイワイして、それまでは規律がある空間が急にリラックスした空間になる感じは、自分にとってすごく理想的です。その空間を再現したくて、この作品をつくりました。

よく学校って女の子たちが机並べてお菓子を食べるじゃないですか、僕らひねくれ者だから、外れたところで二人とか、男の子連中だけで「なんか楽しそうだな」と思ってる人だから。あれを見ていいなと思って。そして僕の母親がケーキ作りが好きだったから、何となく作り方がわかったので、ケーキを持っていて「食べる?」って聞いたら、「あっ、食べる!」って、僕もその場に入れたんだよ。もし僕は「お肉を焼いてきたけど、食べる?」とか「鍋物を作ってきたよ」ってぽっと置いたら、多分食べないよね。鍋物とかそれこそ肉焼いてきたっていうのは、もうちょっと、なんだろうなぁ…生きるための食事だから、それより、リラックスして楽しむということなら、ケーキとかクッキーじゃないとできないなって思って。だからお菓子はみんなの共有物だと思っていて誰でも食べていいと思う。僕はミスタードーナッツが好きで、あそこでいろんな人が何時間も会話してる、でも目の前にはドーナッツとコーヒーだけなわけ。あれが面白いな。アートってそういう生活のところに会話が生まれる空間をつくる、生活を豊かにする力を持ってるものだと思う。

Q.なぜ人の顔をテーブルに彫ったのですか?

磯崎:やっぱり特にコロナだったからですね。マスクして口元が見えなかった時期があって、この作品はちょうどコロナの規制が開けた時だった、その時一番必要なのは目だけじゃなく、顔全体を使った笑顔、それをもう一回集めたいと思った。2023年っていう年だから特に顔がオープンで、口も開いてる状態を記憶として机に彫りたいと思ったんです。

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テキスト:鄧 写真:Jung

磯崎道佳さんの作品や情報はこちらから見ることができます👉@isozaki_michiyoshi

【アートラーニング・インタビュー #2】BankART Life7 参加アーティスト・さとうくみ子 by BankART実験広報部

こんにちは福谷です!

今回もLife7出展作家さんにインタビューさせてもらいました🎤

今回は「味のブレンドさん」という、ちょっと不思議でかわいい作品を作られたさとうくみ子さんです。作品やさとうさんの魅力をお伝えしていきたいと思います😏

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Q.この作品はどんな作品ですか?

さとう:この作品は「味 / 処」という、この前神奈川県民ホールでした展示の後にここの展示とちょっとコンセプトが似ているということで持ってきました。天井に2つの筒が繋がっていて、中華街と山下公園に繋がっている感じで、ここの「nioiawase(においあわせ)」って書いてあるところで、こう、においあわせされるとその二つが合体してこの中に立体作品ができるという、そんな作品になってます。

Q.においあわせってなんですか?

さとう:単純に匂いを合わせるっていう(笑)、公式的な用語じゃなくて造語です。

Q.このラジカセの中の立体はなんですか?

さとう:あっちのドローイングにもちょっと書いてあるんですけど、中華街がこの金のラーメンみたいな感じで、あとは山下公園の海にいるであろうタコの足、みたいな…(笑)。それが単純に合わさったものがこれ。本当にもう中華街と山下公園を合わせたものまんまがこれです。

Q.ご飯できたよ〜って言ってますけど、それがご飯で食べられる…的な感じですか?

さとう:あ、一応食べられはしないんですけど。おままごとじゃないけどそういう感覚で、小さい頃とかよく「お母さんご飯できたよー」とか、なんかそういう1人遊びができるものみたいな感じです。

Q.この赤福はなんですか?

さとう:これは赤福餅を食べる時に使うヘラなんですけど、この赤福も自分が食べて使ったもので。自分が使ってなんかいいなと思うものを素材としてストックしておいて、こういう立体を作るときにこれ使えそうだなみたいな感じで素材にしてます。この綿棒だったりとかも。同じ素材でもちょっと手を自分でいれて素材を超える的な、そんな感じで選んでます。

Q.普段はどんな作品を作っているんですか?

さとう:基本見てクスッとするような作品だったり、自分が遊べるような作品だったり、収納とか。今回の作品はあんまりないんですけど収納する作品っていうのはよく作っていて。動かして移動できるものとか、収納箱が展示台になるとか、作品を大切にしまったり移動させたり自分の生活の一部じゃないですけど、そういうことを最近意識して作ったりはしてますね。

Q.今回のテーマが都市だと思うんですけど、佐藤さんにとって都市ってどんな感じですか?

さとう:そうですね、これ(作品)はもう本当に都市というか、中華街と山下公園を繋ぐみたいな。自分は散歩とかして色んな所を回るときに都市それぞれの違いがあったりとか、都市ごとに違うなとか。地元が田舎なのでやっぱりこっち(東京)での生活はすごい一瞬というか、動かされてる。そういうのを感じたというか。自分は都市ではないのかもしれないなって。作品作るときも着飾るというか、そういうイメージがあります。都市でいる自分もやっぱり何かちょっと着飾ってるなみたいな感じは最近するなって。ちょっと意味がわからないかもしれないけど。

Q.今後の展示の情報などあれば!

さとう:7月26日(金)~8月31日(土)の期間に、岐阜県の柳ヶ瀬商店街にある「Atelier+Artgallery Lucca 445」というギャラリーで個展があります!

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インタビューは前回の反省を踏まえ短めでしたが、それ以外でもたくさんお話させてもらって、とっても楽しい時間でした😊

さとうさんの作品や情報はこちらから見ることができます👉@kuriko519

さとうさんありがとうございました!

福谷

テキスト・写真・映像::福谷