会期:2022年6月25日[土]
会場:BankART Station
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会期:2022年6月25日[土]
会場:BankART Station
2022年4月28日 @BankART KAIKO
今年度最初の主催事業U35は、35歳以下の若手作家の個展シリーズ。今年は公募で選出された8名を2名ずつ4期に渡り紹介していく。第一期はユ・ソラ、小野田 藍の2名だ。
韓国出身のユ・ソラは2011年3月にBankART Studio NYKにて開催された日韓合同卒展「TETSUSON」に参加し、会期半ばで東日本大震災に遭遇した。その時の経験から「日常」や身の回りのものを刺繍で描く現在の作品スタイルを確立したという。本展では初期の刺繍作品から東京芸大大学院進学後に展開した立体やインスタレーション作品、白い糸を用いた新作など、彼女の作品のこれまでの変遷を一望することができる。
一方、フェイスブックやインスタグラム等SNSのタイムラインに流れる広告やニュース画像をサインペンでフリーハンドに描いていく《まるとしかく》シリーズを展開する小野田藍は、今回そのうちの約1,000枚を壁ではなく床に撒いた。まさに情報の海を徘徊するように促される観客たちは、そこに描かれたニュースをどう捉えるのか、興味深い試みである。
一見、対照的な表現にみえる二人だが、どちらも日常生活の身近にあるものを基点とし、日々淡々と制作を行う芯の強い作家たちだ。
会期は5/15まで、BankART KAIKOにて。
2022年3月27日~29日 @BankART Station
主催者側花柳執筆
以下、主催者からのレポートを掲載します。
シリーズ『夢の浮橋』は、日本が世界に誇る古典文学の一大傑作「源氏物語」を現代のアートのフィルターを通して今に蘇らせる試み。
SPACE FACTORYはこれまで都内や県内の様々なスペースで、音楽、美術、演劇、舞踊の異なるジャンルのアーティスト達のコラボレーションにより、その場にしか存在しえないオリジナルのアート空間を創り出し、観客が演者と同じ空間に身を置き“ナマのアートを身近で体験”できるパフォーマンス公演を展開している。
今回上演した「第1章 苦悩の春」では、若き光源氏の華々しくも悩ましい“春”の時代を彩った4人の女性、藤壺の宮・六条御息所・葵の上・空蝉の君が登場。光源氏と結ばれながらも、結局は彼のもとを去り、彼の心に後々まで深い傷を残した、性格や境遇、愛の形の全く異なる4人の女性たちの、若き光源氏を廻るそれぞれの愛憎を描き、いつの世も不変で現代にも通じる、様々な状況に置かれた女性達の生き様を「源氏物語」を通して表出した。
本公演は、昨年度コロナ禍で予定の県内会場が使用できず都内でごく少人数に限った1公演のみという不本意な形での提示となった本作品を、開催を県内横浜に戻し、会場のBankART Stationに合わせた企画・演出でのリベンジ開催であった。
ご来場の方々からは、コロナ禍で控えていた『ナマのアート』に接する機会を得られたことへの謝辞・賛同のご意見を多く頂戴した。感染状況が不透明な中での開催ではあったが、当企画を遂行したことには大きな意義があった。
90年代より日本のコンテンポラリーダンスの黎明期を開拓した振付家・ダンサー、伊藤キムがBankART Stationに初登場!
2016年に旗揚げしたフィジカルシアターカンパニーGEROの、3年ぶりの新作公演「カラダノオト」を上演した。
会場内に入ると、観客を導くように無数の靴が吊り下げられており、その先のパフォーマンスエリアには、8名の普段着に包まれた裸足のダンサーが「展示」されている。
観客は自由に展示空間を歩きながら、オブジェとしての身体を鑑賞する。
水滴のようなかすかな音に反応するように、緩やかに動き始めるダンサーたち。
黒い衣装に身を包んだ伊藤キムが、戯れるように椅子を空間に一脚ずつ配置してゆき、展示空間は徐々にパフォーマンスの空間へと変容してゆく。
この冒頭は、鑑賞者の受動的な姿勢を、能動的でセンシティブな探究心に変えてゆく装置として機能した。
ダンサーは普段着を脱ぎ去ってカラフルでスポーティフな衣装へと替わり、空間は一気に躍動感を得てゆくが、この作品では「言語」がいくつも用いられている。
それは運動から発する息づかいであり、カウントアップする数字であり、感情を伴わないうめきであったりする。
つまり言語を持ち込みながらも「意味」を持たせることを回避し、身体が生み出す「現象」として私たちに提示している。
それは、コミュニケーションが複雑化した現代社会における言葉の役割と人間のあり方にフォーカシングしてゆく行為にも映る。
そしてこの作品は、伊藤キムの「叫び」で終わりを迎える。
日本が生んだ世界初のコンテンポラリーダンスである舞踏のメソッドを踏襲しながらも、現代社会のテーマにしなやかに踏み込み、身体でしか解けない問いを「問い」のまま私たちにぶつける作品であった。
「カラダノオト」は、思ってもみないほど私たちの内部で響いていることに、気づかされた。
なお3/19(土)の公演後には「アフター突っ込んだトーク」が開催された。
観客の中から希望者を募り、伊藤キムとGEROのメンバーと一緒に車座になり作品について意見交換をする様子を、他の観客が見守るという独自の形式。
リラックスした空間の中、3名の参加者からは作品を深く洞察するのみならず、現代社会を透視してダンスを捉える意見も聞くことができ、実りの多い交流の時間となった。
2022年3月5日~29日 @BankART KAIKO
横浜市デザイン室の展覧会「都市デザイン 横浜展」が始まった。50年間の横浜のまちづくりのアーカイブをこの600平米のカイコのスペースで見せるのは、正直にいうとちょっと無理があるが、展覧会としては、素直な理解しやすいシンプルな構成になっている。会場構成は本でいうところの扉(あるいはインデッス)でレイアウトされ、複雑で専門的になりすぎるところをうまく避け、一般の人にもすんなりと横浜が歩んできた道を、大らかに感じさてくれる展示になっている。また、空間的に足りない要素やエレメントのフォローとして、大判の非常に美しい映像がゆったりと投じられているのもすばらしい配慮だ。全体の印象として、強いていえば、もう少し手作業の部分が欲しかったのと、ディテ−ルにフォーカスした展示もあってもよかったと思う。
同時に発行した350頁に及ぶ本は、写真図版を多用した詳細な構成になっていて、50年間のぶれない横浜の「まちづくり」の多様性、デザイン性が、十分に伝わってくる緻密な構成になっている。入場チケット付きで3,000円というリーズナブルな価格設定は破格である。(一家に一冊は所有してほしい)
いずれにせよ、馬車道駅のオプション展示も含めて、これまで多く人々が関わりながら紆余曲折しながら歩んできた横浜のまちを、展覧会や出版物で紹介するのは随分遅くなってしまったが、世に問うことができてとてもよかったと思う。
おめでとうございます。