みきくらのかい実験公演「お伽の棺」(YPAM Fringe 2023 program)

みきくらのかい実験公演「お伽の棺」(YPAM Fringe 2023 program)が、BankART KAIKOにて2023年12月16日に上演された。2019年に結成された、三木眞一郎(声優)と倉本朋幸(劇作・演出家)によるリーディングユニット「みきくらのかい」。今作ではゲストに羽多野渉を迎え、声優二名の巧みな声色で四人の登場人物を演じ分ける。昔話「鶴の恩返し」を題材にしたストーリーには、現代にも通じる差別や親子関係などの問題が盛り込まれていた。すり鉢状の客席が三方を囲む舞台には、黒い土だけが敷き詰められ、極限まで削ぎ落とされた演出が声の演技を際立たせる。臨場感溢れる白熱した朗読劇に、情景を思い浮かべながら物語の世界に引き込まれた観客たちが、終演と同時に惜しみない拍手を送っていた。

みきくらのかい実験公演「お伽の棺」
原作:横内謙介
脚色・演出:倉本朋幸
出演:三木眞一郎 × 羽多野 渉

NEXT ZONE「TRANSHUMANIST(トランスヒューマニスト)」(YPAM Fringe 2023 program)

12月10日(日)と11(月)の二日間、BankART KAIKOではYPAM(横浜国際舞台芸術ミーティング)による公募プログラムのYPAMフリンジにて、デンマークより来日したNEXT ZONEという団体のダンスパフォーマンスがおこなわれた。 普段は多国籍のダンサーとともに世界各国でパフォーマンスを行っているが、日本での公演は今回が初めてとのこと。これを機にアジアでも活動を展開したいという思いから、今回の日本公演を決定したそうだ。 今回上演された作品「TRANSHUMANIST(トランスヒューマニスト)」は、デンマーク人の男性2名によるデュエット作品。激しい音楽と色鮮やかなライティングに合わせて細かく機械的な動きをするその身体は、本作品のテーマである「人間はどのようにして人間か」を見ている者に感じさせ、また考えさせる内容だった。

Hyper-Editing Platform[AIDA]

会期: 2023年12月9日 [土]
時間: 13:30〜19:00
会場: BankART KAIKO
主催: 編集工業研究所
撮影: 後藤由加里・小山貢弘

学外展「東京造形大学 写真研究所」

11月17日から11月23日の一週間、BankART KAIKOにて東京造形大学の写真研究所展が開催されている。三年生と四年生の二学年が合同で展覧会を行うのは、今回が初だという。今までよりも大きな規模となったこの展覧会に作品を出展したのは、二十二名の学生だ。

東京造形大学では、大学という場所を教育機関であると同時に研究機関でもあるということを重要視し、生徒それぞれが研究テーマを持っている。本展は三年生と四年生の合同授業「写真演習A(表現研究)」にて得た研究成果の評価展だ。授業では美術の中で独特の発展を遂げた「写真」というものを、他の分野の芸術にも踏み込みながら研究し、学んでいくという。

「写真」という大枠の中に、個々人が自身の中にもう一つのテーマを持ち、研究・制作が行われた本展では、全てが同じ「写真」という括りでも、どれもまるで別世界のように違う雰囲気を私たちに見せてくれる。この展示のために写真を撮影した人もいれば、過去に撮影した写真を用いている人もいるが、実験的な試みから、鑑賞者に関わってもらうことで完成する作品が多い。

鈴木那月「ここにあるということ 記憶を辿る」という作品は、天井から吊り下げられた天蓋を模した薄いベールに幼少の頃の作品が飾られている。靴を脱いで実際に中に入って見ることのできる作品。武重百華「vita」という作品もまた、「記憶」をテーマにしているが、対照的にこちらでは思い出せるものではなく、薄れゆく記憶が作品全体で表されている。記録として記されたものではなく、まるで我々の脳内にある、時間とともに劣化してしまう古い記憶のようなそんな作品だ。

本展覧会に際し、いくつかのイベントが行われた。シンポジウムや展示鑑賞ツアー、公開講評会など。現代、中高生の学びの場において美術教育が進んでいないことを問題視し、特にシンポジウム「中高生から見た美術」などは学生をターゲットにしているという。本展覧会を通じ、芸術と触れる機会を得て欲しいという思いが込められているとのことだ。

パブリック・アートテーブル2023

BankART1929は、昨年(2022年)度、みなとみらい21のキング軸周辺の多くの企業や住民、学校や店舗の協力を得て、キング軸・アートテーブルを展開しました。みなとみらい21の中でも現在進行形の開発地区であるキング軸という歩行者空間で、ちょっと変わったアートテーブルを配するというシンプルな行為から、新しい人間関係が確実に生まれ始めました。
今年(2023年)度は、みなとみらい21のキング軸だけでなく、グランモールでの展開や、周辺の関内地区や、山内ふ頭にも出張します。
横浜の都心部には、みんかんの建物の敷地の中にある公開空地といわれる歩行者空間や広場、公共の公園や道路、鉄道の駅構内など、誰でも立ち入れて憩うことができる空間が多数存在します。このような空間の価値を再認識し、都市の中に「パブリック・アートテーブル」という装置を挿入することによって、人と人とをつなげる場として、楽しみ、豊かさを感じ、さらにはこのテーブルを起点に文化や経済などの新しい都市活動が生み出されることを期待しています。

パブリック・アートテーブル2023では、2022年に開催した「キング軸・アートテーブル」をみなとみらい21のキング軸だけでなく、美術の広場や関内、横浜市中央卸売市場周辺など、横浜都心部にまで展開し、多くの街の人との連携を進めた。今年は、更に2024年度に開催されるヨコハマトリエンナーレとの連携を考えてアートテーブルの質を高める為、招待作家8チームと増やし、酵母作家は2チームとし、合計10チームの作品での展開になった。

グランモール軸
①美術の広場「MM Grass Park2023」(みなとみらい21着工40周年記念事業)

関内地区
②旧第一銀行横浜支店「関内外OPEN!15」

キング軸
③横濱ゲートタワー+みなとみらい本町小学校

④資生堂S/PARK+京急グループ本社ビル+横浜グランゲート

ポートサイド地区周辺
⑤横浜港山内ふ頭中央卸売市場横「さかな文化祭」

キング軸
⑥高島中央公園

参加作家
「里山再生床机」
アトリエ・ワン+東京工業大学塚本研究所

「標識の『ようなもの』」
SPACESPACE

「PPP TABLE」
野老朝雄

「遊ぶるテーブル」
西原 尚

「Land boat」
下寺孝典(TAIYA)

「エンダイ」
ワークステーション+武蔵野美術大学建築学科高橋スタジオ

「plateau」
甲斐貴大/studio arche

「臨港テーブルユニット」
矢内原充志+佐藤邦彦

「机は昼にテーブルになった – smile on the table -」
磯崎道佳

「テーブルの下の世界」
多田正治アトリエ

片岡純也+岩竹理恵「やじろぐ枝」@ 横濱ゲートタワー・スタートギャラリー2+4

BankART Stationから新高島駅1番出口を出て徒歩1分。
横濱ゲートタワーのスタートギャラリーにて、BankARTが企画協力している展示、片岡純也+岩竹理恵の「やじろぐ枝」が開催されている。
すずかけ通りに面したウィンドーギャラリー2箇所に作品がインスタレーションされており、道行く人々が時々足をとめて眺めている様子に出くわす。
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やじろぐ枝
「木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ず」
物と環境を切り離すことはできず互いに影響しあって循環する、
力の釣り合いについて考えていた。

片岡純也+岩竹理恵
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片岡の動く作品、岩竹のイメージの断片をコラージュした平面作品、そしてそれらの連環を、この横濱ゲートタワーが「アート」と「SDGs」をテーマにしていることから、五行相生を用いたテキストで繋いでいる。

展示は10月29日まで。
10月20,21日には同ビル敷地で「パブリックアートテーブル」とその関連イベントも開催予定。