BankART AIR 2021 SUMMER終了
2021年8 月18日 @BankART Station
6月14日~ 8月17日までBankART Stationで開催した21組の制作スタジオが終了した。コロナ禍の中、いくつかの展覧会がキャンセルする流れのなかでの制作スタジオへの変換であったが、オープンスタジオも含めて、アトリエとしての活用もうまく機能したようだ。少しは、昨年度失ったR16スタジオのフォローができたと思う。
贅沢かもしれないが、発表する場所、制作する場所は近くにあった方がいい。
発表する場所は都心部で制作する場所は田舎でよいという論理も間違いではないが、市場がそうであるように、水揚げと、仕込みと、販売が一緒の方が、はるかに懐が深く、売る人も、買う人も、元気のいい豊かな時空を共有できるからだ。
制作場所を発表する「オープンスタジオ」という機能は、そういった意味で、造る作家同士の温度をあげ、見学にこられる人に、予想だにしなかった作家のエッセンスを伝える事になる。
BankART 1929としては、この仕組みを、もっと日常的に都心部で整備していく方向での構築にトライしていきたいと考えている。
中屋敷 南パフォーマンス 撮影:田中哲男
BankART出版紹介 vol.2 川俣 正 『Expand BankART』
今回取り上げたい書籍は、2012年から2013年にかけてBankART Studio NYKで開催した川俣正展「Expand BankART」のカタログだ。BankART Studio NYKの象徴的な作品となった本展覧会の足跡を辿ることができる。
本カタログは、これまでの川俣氏の軌跡を振り返ることが出来る全作品目録、本プロジェクトに向けたスケッチや模型などが載っている「Plan for Expand BankART」、本展や関連イベントBankART schoolの様子などが記録された「Documentation of Expand BankART」の三巻構成だ。
一冊一冊見応えのあるものとなっているが、特にプロジェクトの痕跡を見ることが出来るカタログも含まれているのは、「制作プロセスそのもの」も作品であるという川俣氏の作風に合った見せ方である。
本プロジェクトの特徴的な点は、プランと作業をほぼ同時進行で行ったことである。横浜という「場」と、そこで出会った「人」と関係しながら、絶えずプランを変え生み出されていった。残念ながら現在は施設自体が解体され作品を見ることは出来なくなったが、この場で起きた変化やコミュニケーションはしっかりと本カタログに残されている。
また、現在は三冊まとめて販売されている本カタログだが、当時は三回配本される仕組みとなっており、最後の記録集は展覧会が終了した後に配送されるという前払いシステムになっていた。現在では、いくつかの美術館などでも同様なことが採り入れられているが、本カタログがその先駆けとなったのは間違いないだろう。
執筆:㋖
川俣 正『Expand BankART』
A4変形判 3冊セット 計352ページ
¥3,000+税
購入はこちらから
http://www.bankart1929.com/bank2020/book/index.html
BankART出版紹介 vol.1 BankART入門編「City Living BankART1929’s Activities」
「この書籍はこれまでの活動のエッセンスです。横浜に誕生したBankART1929がどのように都市に棲み続けてきたかを感じ取っていただければ幸いです。」
本書の冒頭に書かれている説明文の最後の一節である。
「棲む」という表現がBankARTらしいなと感じるが、この本はまさにBankARTの「生態」を垣間見ることが出来る。同施設を知らない人にとっては入り口となるような、知っている人は過去を振り返り懐かしく思うだろう。
本書の構成は2004年〜2015年までのBankARTの活動を13つの項目に分けて紹介している。ページをめくりながら、しみじみと「色々なことをしているな〜」とその活動の幅の広さに改めて驚く。
というのも、川俣正氏や原口典之氏など大規模展覧会をやっているのかと思えば、U35シリーズなど若手作家を支援する活動も行なっている。また、美術だけでなく大野一雄フェスティバルなどパフォーミングアーツも企画しているし、横浜トリエンーレとの連動企画「BankART Life」もある。さらに、活動は国境を飛び越え、続・朝鮮通信使シリーズとして韓国や、横浜市と台北市の交流プログラムなども活発に行なっている。
例をあげれば枚挙にいとまがなく、一つずつ紹介していくと日が暮れそうなので、ここまでにしておきたい。
もし気になる展覧会やプロジェクトがあれば、それぞれの活動をより詳しく紹介した単独の本があるので、ぜひ読んで頂きたい。
ここまでつらつらと書いてきたが、最後に私が言いたいのは「BankARTを知りたければこれを読め!」の一言に尽きる。
執筆:㋖
『City Living -BankART1929’s Activities』
B5変形判 184ページ
¥1,200+税
購入はこちらから
http://www.bankart1929.com/bank2020/book/index.html
横浜の街並みを一望 46階展望スペース
現在、徐勇展を開催しているBankART KAIKOだが、その施設の反対側にある高層ビルの最上階に行かれたことはあるだろうか。
実は、横浜の絶景を無料で一望できる超穴場スポットがそこにある。
KAIKO入り口の反対側にあるエレベーターから一気に46階に上がると、ホテル「オークウッドスイーツ横浜」のロビー階に行くことができる。宿泊者でなくても開放的な雰囲気があるため気兼ねなく行けるのも良いところ。到着すると、一瞬で目を奪われる横浜の絶景が広がっている。しかも、フロア全体が360度のパノラマが楽しめるようになっており、上から見渡しながら、「あれは赤レンガ倉庫だ」とか「あそこは山下公園」等々見つけながら眺めていると横浜を観光した気分にもなれる。
また、同フロアにはレストランやバーなどもあり、素晴らしい景色を眺めながらの食事はまた格別だろう。そして、実は喫煙所もある。タバコを片手に横浜の絶景を眺めながら一呼吸置いてはどうだろうか。
どんな人も満足できるだろうこの場所にぜひ足を運んでみて欲しい。
【展覧会開催中】
徐勇展「THIS FACE」
2021年7月16日[金]~8月16日[月] 11:00~19:00
会場:BankART KAIKO(横浜市中区北仲通57-2 北仲BRICK&WHITE 1F)
入場料:700円(64頁小冊子付) 無料(障害者手帳お持ちの方)
主催:BankART1929 協力:劉檸 海牛子。
www.bankart1929.com/bank2020/news/21_023.html
BankART AIR 2021 SUMMER アーティストトーク第5回
青い色彩の平面作品(どちらかというと工芸的な表情)を手掛けるビコ(近藤)氏。ここ最近は、このシリーズにこだわって、制作を続けている。鑑賞者が自身と対話できるような青い内部空間をもつ球体作品にもトライしている。
関 和明氏は、2019年度まで関東学院大学教授で、歴史建造物や古代エジプトを専門とする学者。近年は北海道の東川町でのプロジェクト、「きたのもりのまなびや」に取り組んでいる。土地の取得は完了しているが、建物の計画案も本人が携わっており、ソフトプログラムの構築も含めて、トライアンドエラーが続いているようである。
細淵太麻紀氏は、今秋、愛媛県の宇和島、元JR 扇形機関庫で個展を開くため、その準備や現地のリサーチを行っている。戦中に建てられた建物活用で、現場の条件は不安定だが、主宰者の将来の構想に期待しているようで、楽しみながら作品制作に取り組んでいる。
長い袖が繋がった衣服等、既製の衣服をリコンストラクションした作品や、ゴミ袋で作った衣服など、衣服の意味や機能を剥奪しながらも衣服の形式を保持する作品をここ数十年、継続的に取り組んでいる窪田久美子氏。会場から「誰に作品を見せたいのか、誰に喜んでもらいたいのかを感じない」と厳しいコメント。たしかに、そろそろ発表という方法で、世に問うてみてもいいかもしれない。
コンドウビコ
関 和明
細淵太麻紀
窪田久美子
徐勇展「THIS FACE」個展スタート
7月16日~ 8月16日 @BankART KAIKO
1954年中国上海生まれの写真家 徐勇氏。同氏の代表作に北京の「胡同」を撮影した『胡同101像』や天安門事件(六四天安門事件)を撮った写真集『Negatives』がある。さらに、写真家としての功績だけでなく、中国現代美術の礎となる798芸術区の創始者の一人でもある。
そんな中国の重鎮作家の展覧会がここKAIKOで開催されている。本展は写真集「THIS FACE」をベースにしており、これは2011年1月19日の1日に、実在の娼婦(性工作者)・紫Uの顔だけを連写した約500点の写真で構成されているものだが、本展はその内の450点を展示している。化粧が施されていない素の顔から濃いメイクをした姿まで、あどけない表情から挑発的な視線まで、あらゆる姿の彼女と出会うことになる。
来場者は刻一刻と変わっていく彼女を食い入るように見つめている。
会場:BankART KAIKO(横浜市中区北仲通57-2 北仲BRICK&WHITE 1F)
主催:BankART1929 協力:劉檸 海牛子。
BankART AIR 2021 SUMMER アーティストトーク第4回
■川口眞人
プロジェクションマネージャーとして舞台制作に関わっている。初めに国内外でのこれまでの活動を紹介後、現在取り組まれているKAATでのキッズプログラム「ククノチ テクテク マナツノ ボウケン」の制作秘話を語られた。
■_hpy
ARやAIを用いて作品を制作。現在は、脳波センサーを読み取るテクノロジーを用いて制作をしている。また、横浜東急REIホテル(Stationの近く)に_hpy氏の作品が常設展として展示されているようなのでぜひ見に行きたい。
■中屋敷 南
ダンサー・振付家であり、コロナ禍で「ノン・コンタクトワーク」を編み出したという。物理的接触を避けるために演者それぞれが空間と時間をずらして映像を撮影し一つの作品にしていく。今回のレジデンスでは、このシリーズをインスタレーション作品にするため日々励んでいる。
川口眞人
_hpy
中屋敷 南
BankARTAIR 2021 SUMMER アーティストトーク第3回
事前に録画した映像でプレゼン。「影をなくした女の子の話」と題して、横浜郊外の都市空間の中、見えないものを楽しい形で可視化していく絵本制作を試みている。■青木 崇
スケートボードに乗っている動きをイメージした絵を描いたり、スケートボードと都市の関係性を映像や写真で表現。日々のインスピレーションをスタジオで実験している。■山岡瑞子
今回絵画や写真、映像などを駆使し、自身の経験と体験を追走しながら作品を制作している。
回転のぞき絵など、古典アニメーションの表現手法に着目し制作している。今までは、机の上に載るサイズだったが、今回は等身大サイズの作品を制作中とのこと。■アイヴァン・ティンブレル
2014年に来日し、2020年まで鳥取県でイベントの企画や、海のゴミをベースに、音、映像、立体作品など制作をしてきた。2020年に黄金町バザールで展示したピンホールカメラの作品をきっかけに写真表現を中心に活動。好奇心旺盛で、他の入居者たちとも積極的にコミュニケーションをとっている。プレゼでも流暢な日本語で、芸術との出会い、日本での制作状況などを紹介してくれた。